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太陽系外からの訪問者  作者: HAL
太陽族多種生命文明
63/208

第08章 太陽系移住局・第二窓口

  極限環境生存種族


 次に現れた移民は、

 姿がなかった。


 受付ホールに置かれたのは、

 黒い多層殻で覆われた円筒容器。

 厚さは装甲並み。

 表面温度表示が、赤く点滅している。


 内部温度:812℃

 内部圧力:地球比 214気圧

 内部環境:無酸素


 行政府移住担当者は、

 表示を三度見直した。


「……これ、

 人、入ってます?」


 容器の表面が、低く振動した。


「はい。

 一家族です」


 スピーカー越しの声は、

 金属が擦れるような音質だった。


「我々の母星は、

 恒星膨張により、

 居住不能になりました」


 淡々としている。

 感情の起伏が読めない。


「宣言を観測しました。

 移住可能圏を設けたと」


 担当者は、ゆっくりと深呼吸した。


「……えーと。

 条件を確認させてください」


 端末を操作する。


「高温……

 高圧……

 無空気……」


 画面を見つめたまま、

 率直に言った。


「太陽以外、無理です」


 即答だった。


 容器が、少し沈黙する。


「太陽内部は、

 我々の耐性を超えます」


「ですよね」


 担当者は頭を抱えた。


「惑星では……

 どこも冷えすぎるか、

 圧が足りない」


 後ろで待機していた異星人担当者が、

 一歩前に出た。


「一点、可能性があります」


 担当者が振り返る。


「……どこ?」


 異星人担当者は、

 表示を切り替えた。


「人工環境です」


  会議モード移行


「待ってください」


 行政府担当者が即座に止める。


「それ、

 居住地を作るって話ですよね?」


「はい」


 異星人担当者は、平然としている。


「高温高圧無酸素。

 自然惑星には存在しません」


 容器から、声が響く。


「人工で構いません」


 一拍。


「我々は、

 自然にこだわりません」


 担当者は、眉をひそめた。


「……サイズは?」


「直径二百メートル。

 高さ三百。

 内部を層構造に」


 ……都市だ。


「人数は?」


「七体」


 少ない。

 だが、圧が重い。


「食料は?」


「不要です」


 またか。


「エネルギーは?」


「周囲の熱勾配を利用します」


 完全に発電機側だ。


 異星人担当者が、

 淡々と付け加える。


「工業惑星向きですね」


 その言葉で、

 担当者の脳内に答えが浮かんだ。


「……アステロイドベルト」


 異星人担当者が、頷く。


「巨大工場群の外縁。

 排熱と高圧試験区画が余っています」


 容器の声が、

 初めてわずかに高くなった。


「そこなら、

 我々は生きられます」


 担当者は、慎重に尋ねる。


「……地球文明と、

 接触は?」


「不要です」


 一瞬、間を置いて。


「ただし」


 嫌な予感。


「我々の存在は、

 金属構造の寿命を短くします」


 ……来た。


 担当者は、

 天井を見上げた。


「……経済担当、

 胃薬持ってきて」


 数時間後。

 端末に表示された通知。


 太陽系移住申請:条件付き受理

 種族:極限熱圧知性体

 居住地:アステロイドベルト人工環境

 注意事項:構造材劣化率 312%


 異星人担当者が、

 静かに言った。


「理念は、

 万能ではありませんね」


 担当者は、苦笑する。


「でも」


 容器を見て、続けた。


「断らなかった」


 容器の中から、

 低い振動音が返ってきた。


「感謝します。

 この場所を、

 守る側として働きましょう」


 その言葉に、

 二人は顔を見合わせた。


 ……また、防衛戦力が増えた。


 誰もが気づき始めていた。


 太陽系は、

「守られる場所」ではない。


 守る理由が、

 どんどん増えていく場所なのだと。

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