第02章 宇宙史記録
第0245564514記録:天の川銀河太陽系宣言事件
この宣言は、宇宙史上初の事件であった。
それは、戦争でも、条約でも、征服でもない。
違う文明が、
違う歴史を持ち、
違う価値観のまま
一つになろうとした、最初の試みである。
それは、国家同士の同盟ではない。
種族同士の支配関係でもない。
いわば、
他人同士が、家族になろうとした瞬間であった。
地球人と異星人は、
互いを理解しきってはいなかった。
恐れも、不信も、計算も残っていた。
それでも彼らは、
「同じ方向を見る」ことを選んだ。
宇宙において、
これは異常な判断である。
文明は通常、
似た者同士で固まり、
理解できない存在から距離を取る。
井の中の蛙であることは、安全だ。
世界は狭いが、危険は少ない。
だが、
広い世界は魅力的であると同時に、
常に致命的な危険を孕む。
それを承知の上で、
太陽系は門を開いた。
この宣言に、
精神生命体は強い関心を示した。
彼らは個を持たず、
種族という概念すら曖昧な存在である。
その彼らにとって、
「異なる文明が、違いを保ったまま結び合う」
という発想は、
観測対象として極めて稀有であった。
一方、
他の物質文明は動かなかった。
敵対もせず、
祝福もせず、
ただ、様子を見ていた。
なぜなら、
この試みが成功すれば、
それは希望となる。
失敗すれば、
二文明同時崩壊の前例となるからだ。
種族を超えた繋がりは、
世界を大きくする。
だが同時に、
世界を壊す速度も、等しく速める。
それでも、
太陽系は選んだ。
閉じた安全ではなく、
危険を含んだ広がりを。
この日を境に、
宇宙は太陽系を
「辺境の若い文明」とは呼ばなくなった。
代わりに、
こう記録した。
観測対象:
文明融合臨界点に到達。
この宣言は、
単なる演説ではない。
それは、
宇宙そのものが、
新しい可能性に触れた瞬間だった。
そしてこの事件は、
まだ終わっていない。
成功するか、
失敗するか。
その結末が、
これからの宇宙のかたちを決める。




