第04章 最初のメール
この物語は、我々の世界とよく似た、別の世界の話である。
彗星いや、
あの物体を発見したアマチュア天文家ジェームス・カーターは、
一時は世界中の話題の中心だった。
テレビ取材、ラジオ出演、大学からの講演依頼。
研究者たちからの質問も、一般人からの迷惑メールも山ほど届いた。
だが、時間とは残酷なものだ。
一年も経てば、世界は彼を忘れた。
ジェームスのメール受信箱も、すっかり平穏を取り戻していた。
相変わらずゴミメールは多いが、ニュース上の時の人はもう過去の話だ。
そんなある日のことだった。
受信箱に、ひとつだけ異質なメールが混じっていた。
件名:????
差出人:+**/#$%&$$。
本文:
数字の羅列が規則正しく並んでいた。
そして、ある所に目印のマークが、カンマで区切られた3つの数字。
試されている。
天文学者でなくてもわかる、星を見る者には、これは極座標だ。
親切にもマークまでしてある、地球に合わせているから、
親切な異星人さん?かな。
調べたらこの銀河の中央から来た、速度が異常値になる。
所謂、ワープしか考えられん。
マーク地点は、火星。
イタズラにしでは、高尚すぎる、思い浮かべる大学の友人達、
あいつはこんな面倒くさい仕掛けはしない。
あいつも、あいつも、誰だ。?
ネットの知識がある、高度な天体物理学者、イタズラ好き、
まとめたら、解答が出た。
あいつらか?!。
まさかな、あの真面目が?あいつなら、これだけの計算はできる。
ワープを仕込むのはやり過ぎたよ。笑
あいつらにしては、いいジョークだよ。
最近、張り詰めていたから、いい息抜きになった
送り返してやろう、あいつに。
天体物理学者にして、大学教授、政府関連役職多数、著書も多数。
ジョン・カーソン 同期だ。
「イタズラも、過ぎると、あきれる。笑
いい息抜きになったよ、ありがとう。
オリビアとマーサーにもよろしく伝えてくれ。」
ジョン・カーソン
当代のトップ物理学者
宇宙の話をよくしていた。
夢見る俺とは対照に現実を見て戦略を立てる、理論派
オリビア・ハアスト タイムリー新聞編集長
時々に敏感、俺の記事を出した。
売り上げはそこそこ、ちょうちん記事を出さないから。
ITは業務上知り得るレベル。
マーサー・ヤワオロ AIの何とか会社経営
イタズラ好き、専門は心理学だったはず、
なんでAIにといいう変わり者。
大学時代は、この三人とよく、望遠鏡のそばで、
飲んだし、宇宙論を語った。
みんな大人になって、おれは相変わらず、星を追いかけている。
その夜も、いつものように自分が発見した彗星を観測した。
だが望遠鏡を向けた瞬間、ジェームスは息を呑んだ。
そこにあるはずの物体が、いなかった。
慌ててPCを確認する。
軌道計算も、星図も、間違っていない。
胸がざわつく。メールの座標。
その瞬間、脳裏に閃いた。
急いで望遠鏡を再調整し、メールに記された方向へ向ける。
望遠鏡が静かに動き、視界が切り替わる。
そこに、いた、丸い影。
特徴的な光の反射。
間違えようがない。
彗星(宇宙物体)は、メールの座標に移動していた。
ジェームスは視野を広げ、星の並びから現在位置を解析した。
……火星。
物体は火星軌道上に移動していた。
「....嘘、だろ?」声が震えた。
座標メールと同じ場所。
悪戯ではなかった。
あれは知っていた。
自分たちがどこへ行くか。
そして伝えてきた。
まるで「お前にだけ教える」というように。
何の意図があるのか、なぜ俺に?揶揄われているのか?。
あ、送り返したよ、データつけて、あいつに。どうしよう?!。
もちろん公表などできるわけがない。
もし言えば「なぜお前だけが知っている?」となる。
最悪、宇宙人の協力者などと言いがかりをつけられかねない。
身の安全を守るには、黙るしかなかった。
あいつからの電話。
「おい、これは何だ。おれはこんなの送っていないぞ。
冗談にしては、やりすぎだぞ。もちろん、彼女たちも無関係だよ。
このデータ、航跡LOGじゃないか? どこで手に入れた?
解析したら、とんでもないレベルだ。おまえもしたろ。
物理法則が成り立たん、完全な未来技術でしか説明できない。
いまから飛行機で行くから待ってろ。」がちゃ。
あいかわらず、一方的に話してきれた。
あいつが来た。
車から駈けてきて、慌てている。
俺は、部屋に案内して、コーヒーを入れ、テーブルに置く。
「落ち着け、話を聞け、な。」
「...... しかし、これは、とんでもないデータだぞ。
物理学が成り立たん。
完全に、高度な文明の知識だろうな、ふう。」
コーヒーを少し飲み息を吐いた。
「おれも、冗談と思い、できるやつはお前だと判断したが、
違うということで、相手が、なぜおれに?
という疑問だけしかないよ。」
「そうか。 彼らは、何を求めているのかはわからない。
が、この数字の羅列から判断できる知識か、
どうかを判定したのではないかとおもう。」
「じゃ、わかるやつには、次の対応があるわけになるぞ。」
「しかし、星を観察するなら、わかるレベルだろ。高度でもないし。」
「お前はわかっていない、
この数字の羅列は、空間座標と極座標と変換座標がある。
区別できなければわからんよ。
簡単そうで簡単でない暗号さ。
俺たちは、取り出せるがな。」
「じゃ、本当に、相手は、異星人なのか?」
「かもな? 80%は確実だよ。」
色々話して、互いに、沈黙することにした。
影響が大き過ぎる。
彼女たちには彼から話してもらい、協力を依頼する。
このデータが漏れたらパニックになるから。
そして数日後、またメールが来た、
今度は送り主のアドレスつきだ。
セキュリティを最大にしてあるPCとはいえ、
慎重に開き、リンクをクリックした瞬間モニタに映像が走った。
画面の向こうに、人間の女性にしか見えない存在が現れた。
「やっちまった!」体が反射的に動き、手は電源へ伸びる。
だが、その一瞬先に声が落ちてきた。
「あなたのPCは既にハック済みです。
この回線は安全です。
どうか話を聞いてください」
女の声は落ち着き、抑揚が奇妙に均質だった。
しかし、彼は迷いなく電源を切った。
その日のうちにPCを完全初期化し、
SSDは取り外して物理的に焼却した。
パーツはバラバラにし、別々の店で購入し直す。
新しいPCを組み上げ、
1年前に作ったNASのバックアップを移し、
ネット接続は一週間後にした。
安全係数を極限まで引き上げた上で再び、彼はPCを起動した。




