第12章:光る塵
なぜ、二人だけが例外だったのか
皇女ニアは、
この解析だけは
自分一人で行うと決めていた。
マーズですら、
完全には見せない。
理由は単純だ。
この結果は
民の希望にも、絶望にもなり得る。
1. DNAは一致していた
だが、それは始まりにすぎない
解析結果は、
異常だった。
地球人類のDNAは、
銀河帝国種族と
99.98%一致しない。
当然だ。
だが
主人公と妻のDNAには、
一致ではなく
共鳴が存在した。
「これは……
血縁ではない」
皇女は、
静かに否定する。
「位相が同じ」
DNA配列の並びではない。
その背後
情報の折り畳まれ方が同じ。
それは、
母の種族だけが
扱っていた領域。
「DNAは、
物質ではない。
次元を跨ぐ
情報アンテナだ」
母の言葉が、
蘇る。
2. 妻は受信体だった
妻の脳は、
明確に異常だった。
前頭葉、側頭葉、
そして
人類では休眠しているはずの
多層思考区画。
活動率:
0.7%
ありえない。
地球人類平均は、
0.02%以下。
しかも、
彼女はそれを
無意識で維持している。
「……灯台だ」
皇女は、
息を飲む。
強制覚醒すれば、
一気に10%を超える。
それは
銀河全域に届く
精神信号になる。
スイーパーが
見逃すはずがない。
だから、
会えなかった。
3. 主人公は安定器だった
主人公の異常は、
別の方向にあった。
彼の脳は、
拡張していない。
むしろ
抑制されている。
常に、
一歩引く。
目立たない。
やりすぎない。
災害前の彼は、
まさにそうだった。
「……自分で
蓋をしている」
意識的ではない。
本能的に。
だが、
抑制構造そのものが、
異常なほど強固だった。
「これは……
封印だ」
彼は、
暴走しない。
妻が
受信するなら、
彼は
制御する側。
4. 二人で一つの回路だった
単独では、
どちらも不完全。
妻だけなら、
早晩、発見され、消される。
主人公だけなら、
永遠に目覚めない。
だが
二人が揃うとき。
「回路が閉じる」
受信と制御。
感情と理性。
拡張と安定。
皇女は、
震える声で
結論を出す。
「……二人は、
母の種族が
残した対抗装置だ」
兵器ではない。
王でもない。
理解できる存在を
この銀河に残すための。
5. なぜ、地球だったのか
母の種族は、
知っていた。
銀河帝国は、
大きすぎた。
目立ちすぎた。
「だから、
文明になりきれない星を
選んだ」
争い、
迷い、
後悔し、
それでも生きる。
地球人は、
弱い。
だが
感情を捨てない。
それが、
スイーパーには
理解できない要素。
6. 皇女の恐れ
皇女ニアは、
自問する。
もし
この二人が
完全に目覚めたら?
地球は、
文明として
立ち上がる。
同時に、
灯台になる。
「……だから、
ゆっくりでなければならない」
彼女が
夫にだけ接触した理由。
妻を避けた理由。
それは、
冷酷でも、
傲慢でもない。
守るためだ。
最終結論
地球は、
塵だった。
だが、
その塵の中に
二つの光子があった。
一つは、
宇宙を感じ取る目
一つは、
宇宙を壊さずに
扱える手
彼らは、
救世主ではない。
だが
最後の理解者になりうる。




