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太陽系外からの訪問者  作者: HAL
銀河帝国滅亡
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第11章 塵のままの星

 なぜ地球は、見逃されていたのか


 銀河帝国の解析は、

 冷酷で、正確で、そして

 少しだけ、困惑していた。


「論理的に説明できません」


 統合分析AIマーズは、

 はじめてその言葉を使った。


「この恒星系は、

 スイーパーの殲滅基準を

 すべて満たしています」


 皇女は、

 黙って続きを待つ。


「生命密度、基準超過」

「知性活動、基準超過」

「電磁波放射量、基準超過」

「恒星利用効率、増加傾向」


 それでも。


「清掃対象リストに、

 登録されていない」


 ありえない。


 帝国が滅ぼされたのは、

 まさに

 気づかれた瞬間だった。


 では、なぜ地球は

 気づかれていない?


「仮説を三つ提示します」


 マーズが、

 思考投影を行う。


 仮説一:地球は文明に見えない


 地球文明は、

 外から見ると奇妙だった。


 恒星エネルギーを

 無秩序に浪費し、

 惑星環境を破壊し、

 自滅寸前で停滞している。


 だが

 決定的な特徴がある。


「地球文明は、

 恒星系全体を

 一つの構造体として

 使っていない」


 軌道リングもない。

 恒星制御もない。

 大規模構造物も、

 ほぼ存在しない。


 文明としては存在するが、

 宇宙工学的存在感がない。


 スイーパーは、

 文明を見ていない。


「彼らは、

 構造体密度を見ている」


 構造体とは、

 恒星を道具に変える意思だ。


 地球は、

 まだ

 恒星の上で遊ぶ猿に過ぎない。


 仮説二:地球はノイズに埋もれている


 銀河は、

 騒がしい。


 パルサー、

 ブラックホール、

 超新星、

 ガンマ線バースト。


 自然の宇宙は、

 文明より

 ずっと派手だ。


「地球の電磁放射は、

 銀河ノイズに

 完全に溶け込んでいます」


 レーダー。

 通信。

 テレビ。

 レーダー反射。


 すべてが、

 無秩序で、低効率で、

 短命。


 スイーパーから見れば、

 それは文明信号ではなく、

 自然雑音に近い。


「彼らは、

 意図のある放射しか

 追跡していない」


 地球の信号には、

 統一意思がない。


 仮説三:地球は意図的に隠されている


 ここで、

 皇女が初めて口を開く。


「……母は、

 この座標を

 安全圏と呼んでいた」


 マーズが、

 即座に反応する。


「記録照合。

 この恒星系周辺には、

 古い干渉痕跡があります」


 数億年単位で、

 極めて微弱。


 だが確実に

 人工的。


「恒星の活動が、

 わずかに

 歪められている」


 地球の太陽は、

 少しだけ

 不完全だった。


 完全な恒星制御には、

 向かない。


 発見者にとって、

 効率が悪すぎる。


「……隠蔽幕だ」


 皇女は、

 静かに理解する。


 誰かが、

 意図的にこの星を

 価値のない恒星系に

 見せかけている。


 誰が?


「可能性は一つ」


 マーズが告げる。


「皇女殿下の

 母君の種族です」


 結論:地球は塵であることを選ばされた星


 地球は、

 偶然、助かっていたのではない。


「助かるように

 設計されていた」


 文明が芽吹くこと。

 だが、

 芽吹きすぎないこと。


 知性が育つこと。

 だが、

 叫ばないこと。


「……地球人は、

 保護されている」


 皇女の胸が、

 締め付けられる。


 それは、

 祝福ではない。


 見つかったら終わり

 という前提の保護だ。


「だから、

 直接接触できなかった」


 皇女は、

 理解した。


「地球が

 文明として

 立ち上がった瞬間」


 マーズが、

 言葉を継ぐ。


「スイーパーに

 気づかれる」


 静寂。


 百億の民が、

 同じ未来を思い描く。


 そして、

 もう一つの異常が浮かび上がる。


「……では、

 なぜ、

 あの夫婦だけが

 例外なのか」


 地球は、

 塵のままでいられた。


 だが

 塵の中に、

 光る粒子があった。


 それが、あの夫婦。

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