第09章 敵の分析
この物語は、我々の世界とよく似た、別の世界の話である。
意図を知らねば、対処はできない
彼らは、
こちらを生命として見ていない。
敵ですらない。
虫けらだ。
邪魔だった。
だから消した。
踏み潰すのに、
理由はいらない。
銀河帝国は、
彼らにとって何だったのか。
道端のアリか。
それとも、
目障りなアリの巣か。
もし後者なら、
彼らは除去しただけだ。
だが
なぜ、そこに手を伸ばした?
意図を明確にしなければ、
我々は次の一手を選べない。
まず事実を整理する。
銀河帝国は、
自らを宇宙の指導者と定義してきた。
帝王の下、
圧倒的な力と技術をもって
星々を従えた。
未開の文明。
野蛮と呼ばれた種族。
それでも
文明レベルを引き上げ、
帝国の法と秩序の下に置き、
銀河を統一してきた。
支配だ。
だが、
統治でもあった。
不満はあった。
反乱もあった。
搾取もあった。
だが
それは大文明の歴史として普通だ。
恒星を消滅させ、
文明ごと抹消されるほどの
怨恨ではない。
計算が合わない。
次に、
兵器思想を見る。
彼らの兵器は、
確かに異常だ。
だが
物質的だ。
反物質。
エネルギー封入。
次元断層。
これは、
多層次元文明の発想ではない。
多層次元文明は、
「壊す」前に
「書き換える」。
彼らは、
力任せに消している。
荒々しく、
乱暴で、
だが確実。
つまり
この銀河に存在する
既知文明の系譜ではない。
では、
可能性は二つ。
一つ。
この銀河に、
我々の知らない
観測外文明が存在していた。
もう一つ。
他銀河からの侵入。
いや
侵入ではない。
彼らにとっては、
進入ですらない。
ただ、
踏み入っただけだ。
だとすれば、
これは戦争ではない。
これは
侵略の始まりですらない。
彼らは、
まだ何も始めていない。
たまたま、
邪魔だったから
消しただけ。
その事実が、
皇女の背筋を
凍らせた。
「……私たちは、
気づかれたのではない」
そう、呟く。
「気づかれてすらいない」
銀河帝国は、
滅びた。
だが、
それは目的ではなかった。
副作用だ。
ならば
次に消されるのは、
誰だ?
地球か。
この銀河か。
それとも
気づかれた瞬間に、
まとめて消されるのか。
皇女は、
結論を一つだけ
心に刻む。
迎撃ではない。
対話でもない。
存在を悟らせてはならない。
我々は、
まだ
虫けらでいなければならない。




