第75話 最後の一手
王都中枢・艦隊司令室
開戦まで 12分
巨大なホログラムに、両軍の配置が映る。
王の艦隊は数で勝る。
だが、陣形は歪だ。
王
「余の先鋒艦隊を前へ。
威圧だけで敵は下がる」
将軍
「陛下、それでは補給線が」
王
「黙れ。
余は勝てる未来が見えている」
空気が凍る。
クラン
「陛下。
一つだけ、最終確認を」
王
「申せ」
クランは、静かに指を振る。
ホログラムが切り替わる。
投影:過去3回の謎の敗北再生ログ
補給艦が先に沈む
敵は追撃しない
生存者は必ず生かされて帰る
クラン
「不思議ですわね。
敵は、勝ちを拾っていない」
王
「……だから何だ」
クラン
「つまり
彼らは戦果ではなく、観察をしている」
将軍(小声)
「まさか……」
クラン
「陛下。
この戦い、勝っても負けても終わりません」
王
「戯言だ」
クラン
「いいえ。
陛下が、どんな命令を出すか
それ自体が、戦果なのです」
王の手が、震えた。
王
「……余が、試されていると?」
クラン
「はい。
裸であるかどうかを」
司令室が、ざわめく。
クランの最後の一手
クラン
「ですから
この命令を、全艦に公開しましょう」
王
「なに?」
クラン
「暗号化しない、全艦共通命令。
陛下の声で」
将軍
「それは……
兵の士気が直に」
クラン
「逃げ場をなくすのです」
王
「……よかろう。
余が直接、命じる」
通信回線、全開放。
王の命令(全艦同時)
「余の名において命ずる。
先鋒は突撃。
補給は顧みるな。
恐怖する者は、置いていけ」
沈黙。
数秒。
だが、確実に亀裂が走る。
艦長A:通信を切る
艦長B:命令確認を要求
艦長C:動かない
誰も、即応しない。
クラン(内心)
(はい。これで完成)
クラン
「陛下。
今、艦隊は二つに割れました」
王
「な……に……?」
クラン
「王を信じる艦と、生きて帰りたい艦」
同時刻・別宙域
俺(通信を聞きながら)
「……やったな、クラン」
チャッピ
「敵艦隊、指揮系統崩壊確認」
ルミナス
「まだ斬ってないのに、折れましたわね」
決定的な一言
クラン(王に向かって、静かに)
「陛下。
この戦いで、最も弱い存在が誰か
もう、全員が理解しました」
王は、言葉を失う。
開戦まで 2分。
だがもう、
この艦隊に戦争を始める力は残っていなかった。
魔王 クラン 敵にしたらキムでも負ける。




