第72話 情報戦 3日目
定時航路。
短距離ワープ三回。
誰もが使う、教科書どおりのルート。
だからこそ
異常があると、すぐ分かる。
カブト
「第一ワープ、問題なし。
第二ワープ……航路クリア。
第三ワープ前、待機に入ります。」
俺
「予定通りだな。」
クラン
「……静かすぎない?」
チャッピ
「ええ。
この航路、いつもなら覗き見くらいはあります。」
ルミナス
「裏ネットも、急に静まり返ってる。
さっきまで騒がしかったのに。」
俺
「餌を前にして、息を潜めるタイプか。」
ケン・ツマン
「若手じゃないな。」
ミン・フェスク
「……スポンサー付き、か。」
第三ワープポイント。
星もない、何もない空間。
カブト
「……妙ですね。」
俺
「何だ。」
カブト
「重力の揺らぎがあります。
自然現象としては、説明がつきません。」
チャッピ
「次元層、薄い……?
いえ、削られてる?」
ルミナス
「削る?
そんなの、工事よ。」
その瞬間だった。
通信が、途切れた。
完全な沈黙。
ノイズすらない。
クラン
「……やられた?」
俺
「いや。」
俺は、深く息を吸った。
俺
「これは遮断だ。」
チャッピ
「銀河標準通信、全滅。
量子系も沈黙。
……こんなの、軍でも簡単じゃありません。」
ルミナス
「護衛ギルドでも無理ね。」
カブト
「ですが、我々は無事です。
攻撃は、まだ。」
俺
「まだか。」
次の瞬間、空間がずれた。
視界が一瞬、裏返る。
星の位置が、半拍遅れて追いつく。
クラン
「っ……ワープじゃない!」
チャッピ
「座標、固定されてます!
引きずり込まれてる!」
俺
「……なるほど。」
俺は、苦笑した。
俺
「これは、若手じゃない。」
ルミナス
「罠ね。」
俺
「しかも、金目当てでもない。」
カブト
「敵性反応、複数。
ですが姿が見えません。」
ケン・ツマン
「先生。
これ、どこだ?」
俺
「……航路の外。」
俺
「正確には
誰の管轄でもない場所だ。」
チャッピ
「次元潜航艇、起動準備しますか?」
俺
「まだだ。」
俺
「相手は、俺たちを見ている。
だから、次に来るのは」
その時、
貨物船の外装モニタに、
一つだけ、光点が現れた。
小さい。
遅い。
だが迷いがない。
クラン
「……あれ、一隻?」
ルミナス
「違う。」
ルミナス
「見せてるのよ。」
俺
「ようやく、名乗る気になったか。」
俺は、椅子に深く座り直した。
俺
「カブト。
防御だけ、最大。」
カブト
「了解。
久しぶりですね、この感じ。」
俺
「喜ぶな。」
カブト
「……少しだけ。」
俺
「来たな。」
光点が、
通信も警告もなく、
こちらの進路を塞ぐ位置に滑り込んだ。
チャッピ
「識別不能。
船体構造……見たことがありません。」
俺
「……やっぱりな。」
俺
「こいつは
この銀河の海賊じゃない。」
沈黙の中、
最初の一手が、
ゆっくりと振り下ろされようとしていた。
チャッピ
「 量子兵器来ます。」
護衛船二隻が量子破壊兵器にて原子分解で、大穴が空いた。
やはり、問答無用か。
こちらも、想定していたから、全員貨物船に転移させておいた。
で、カブトの全兵器を再装備している。
量子破壊兵器は、量子の不安定を利用しているから、
安定させればいい。防御バリヤーは機能していた。
カブトは、俺の命令の前に、全システムをONしている。
では、こちらのターンだな。
「次元爆弾を エンジンらしき場所に1個だけ、発射。」
.......
カブト
「 命中。 あちらも 大穴が開きました。 」
俺
(敵船に告ぐ。
こちらは 第2弾の装填完了、即発射して、跡形もなく、消し去れるが
どうする?)
敵船
(海賊風情と侮ったのが、まちがいだったな。
この船は、もう使えない。
逃げも隠れもせんよ。
だが、勝負はこれからだよ。)
チャッピ
「転移反応。 乗り込んできました。 第3貨物室です。
10名 全員ですね。
武器反応 ブラスター、大剣 」
俺
「転移するとは、予測していなかった。
甘い所を突かれた、敵も海賊レベルではない。
軍属だろう。
全員防御バリア 最大確認。
ブラスター麻痺セット
大剣はどうしょうか。
チャッピ 素材はなんだ?
「タングステンと鋼です」
あかん、やばい。
あれが、奴らの主力兵器だな。
壁もぶった切るつもりだな。
館内の防御シールド100%にする。
10分しか持たん。
全員、第3倉庫へ転移。
ドラゴンは2人で1人を相手しろ。
10分あれば、片付けられる。
大剣はウケるな、当たれば、服の防御でも耐えられん。
当たらなければ、持ち手を、腕を、肩を、ブラスタで狙うか、
日頃の先輩の指導組手の成果を見せろ。
さもないと、再訓練だからな。
」
「そんな殺生な、あの地獄はもう嫌です。
奴らに負けるわけないでしょ。」




