第70話 情報戦 初日
銀河辺境惑星コドモ。
上空から見ると、ただの岩と砂の塊だ。
だが、降りてみると分かる。
ここは金の匂いがする。
港は三つ。
正式なのは一つ。
残り二つは、誰も管理していない。
いや、正確には、管理している者が、名乗らないだけだ。
カブト
「重力・大気・通信……全部、最低限ですね。
監視網はありません。
逆に言えば、何をやっても事故になります。」
俺
「だから選んだ。」
港に降りると、視線が一斉にこちらに向いた。
掘削服、傭兵装備、見たこともない異種族。
全員が、こちらの船の値段を計算している。
クラン
「……見られてるわね。」
チャッピ
「武装を数えてます。
あ、もう積荷まで推測されてます。」
ルミナス
「ふふ。
歓迎されてるって事?」
俺
「試されてるだけだ。」
最初に近づいてきたのは、
人間でも異星人でもない、
分類不能の男だった。
顔はマスク。
声は合成。
腰には、何世代も前のブラスター。
マスク
「商人さんか?」
俺
「そう見えるか?」
マスク
「見えるとも。
護衛が二隻。
貨物船が一隻。
そして、匂いがする。」
ケン・ツマン
「鼻がいいな。」
マスク
「ここでは、それが生き残る条件だ。」
俺
「何の用だ。」
マスク
「紹介だ。
この星で話が早い連中をな。」
俺
「タダか?」
マスク
「まさか。
だが高くもない。」
ミン・フェスク
「金?」
マスク
「いや。
噂だ。」
場の空気が、一段重くなる。
俺
「どんな噂だ。」
マスク
「最近、この星を経由してる船がある。
登録なし。
ギルドなし。
保険も通さない。」
チャッピ
「……完全にアウトですね。」
マスク
「だが、金は落とす。
しかも、血を混ぜてな。」
俺
「船団襲撃か。」
マスク
「そうだ。
しかも、やり口が雑だ。」
クラン
「雑?」
マスク
「殺しを楽しんでる。」
その一言で、周囲の雑音が遠のいた。
俺
「……どこの連中だ。」
マスク
「知らん。
だから、皆が困ってる。」
ルミナス
「困ってる、のに?」
マスク
「誰も手を出さない。
面倒だからだ。」
俺
「座標は?」
マスク
「三つ。
全部、ゲートの外側だ。」
ケン・ツマン
「先生。」
(バカ。ここでの先生は用心棒と認識するから)
俺
「分かってる。
商会頭の命は契約通り守りますよ。
その代わり、情報の10%は保証してくださいよ。」
俺は、男に小さなデータチップを渡した。
俺
「噂の続きを流せ。」
マスク
「内容は?」
俺
「この航路では、殺しが一番高くつく。」
男は、一瞬だけ黙り、それから、笑った。
マスク
「……いい噂だ。」
男が去ると、ルミナスが肩をすくめた。
ルミナス
「始まったわね。」
チャッピ
「第一段階、完了です。」
クラン
「まだ、誰も殴ってないのに。」
俺
「情報戦だからな。」
カブト
「……武器、使いませんか?」
俺
「まだだ。」
カブト
「……しょんぼり。」
俺
「最後に、派手なのを任せる。」
カブト
「本当ですか?」
俺
「ああ。
逃げ場を消す役だ。」
カブト
「了解しました。
楽しみに待機します。」
その夜。
コドモ星の闇市場に、一つの噂が流れ始めた。
殺さずに、全てを奪う連中が来た。
しかも、海賊だ。
そして、噂を聞いた雑な海賊たちが、動き出す。
俺
(あれ? バレてます? 商船のはずだけど)
クラン
(あの船が特別製だとすぐわかるわ。
商船の護衛レベルでもなし。
なら、シマを荒らされて、黙っている海賊はいないから、
そちら系がきたなとね。
わかった?。ダーリン)




