第18章 月面:コペルニクス基地
この物語は、我々の世界とよく似た、別の世界の話である。
夜のような静けさが広がる月面に、
全長 1000メートルの異星宇宙船 が影を落とした。
金属とも岩石ともつかない艶を持つ船体が、
音もなくコペルニクスに着陸する。
月面基地の監視カメラは一斉にノイズを吐き、
接触する前から既に月の支配権は書き換えられたかのようだった。
太陽系再開発実行委員会 が正式に発足。
構成は滑稽なほどアンバランス。
異星側代表:マーズ(AI)……1名
地球側代表:大統領 + 側近G10……計11名
地球側の人間の密度に比べ、異星側はたった1名それも人ではなくAI。
しかし存在感は、マーズ一人が圧倒していた。
皇女は月面に降りたわけではない。
巨大船の中、バルコニーのような場所から淡々とモニターを見ていた。
皇女
「……こりゃ、まとまらんよね。」
短い溜息。
その声音は、呆れと慈悲の中間にあった。
「マーズ。
あなたが主導で動きなさい。
地球側の会議という儀式を待っていたら、
一年なんてあっという間よ。」
マーズ
「了解しました。
実行委員会の議事進行権をこちらで取得します。」
AIらしからぬ、どこか優しい声だった。
しかし、その決定は人類の政治の終わりを告げる鐘にも似ていた。
地球:国連本部
翌朝、国連ビルは騒然としていた。
理由はただひとつ。
国連の中央エントランスホールに、
見覚えのない巨大装置がいつの間にか出現していたからだ。
それは装飾のない黒い門状の構造物。
中心部には薄い光の膜が張られ、見ていると吸い込まれそうになる。
国連職員A
「だ、誰が……いつ……?」
国連職員B
「え、これ……もしかして……例の転送装置じゃ……?」
情報は即座に拡散した。
しかし本当の名称は、彼らの知らぬところで決まっている。
これは 転移ゲート と呼ばれていた。
地球側の許可など、最初から求められていない。




