第36話 仕事は神様(ボケ老人)
ムル
「ボケ爺さん、宇宙にもいるのね。」
「宇宙で徘徊する宇宙ボケ爺さん。」
「笑える うふ ふ わはは く くるしい。」
「でもいいんか? 神罰だろメテオ。 」
「さっき 啓示でお布施を稼いでいるといったよな。」
「1000年毎なら問題ないの?」
「詐欺師だよな、それも問題じゃない?」
「じゃ、なんで神罰受けたのよ?」
「呼んだか」 唐突に光と共に現れた。
爺さんは、くつくつと笑った。
「宇宙ボケはなぁ……重力より強いんじゃよ。」
ムル
「高度なボケは要りません。」
爺さんは肩をすくめる。
「神罰、神罰と簡単に言うがの。
メテオが落ちたのは、神様かどうかもわからん。
強大な力だとわかっているだけ。」
ムル
「じゃあ何よ。」
老人
「さあ、ここからは推理ゲームだ」
ムルの眉が、ぴくりと動く。
老人
「啓示で金を稼いでおったのは本当じゃ。
千年ごとき? 可愛いもんじゃろ。
やりすぎても、有り難みがなくなるからの、結構気を使うのよ。
銀河毎の性格あるし、大変だよ、
何処も、仕事になると、適当にはできないし。
お客様、あっての神様家業だし。
」
(最後、愚痴だよな。)
ムル
「詐欺じゃん。」
「詐欺じゃな。
だが」
爺さんは、指を一本立てた。
「90%じゃ、当たるのよ。」
ムル
「……は?」
「作物の不作。
疫病の年。
争いが起きる場所。
隕石が通る軌道。
こんなの、観測データがあれば、予測確率で見えるのよ。
そんなに大事ではないぞ。
できないのは、
蓄積した観測データ以外の事象、ランダムの揺らぎ。
これも、確率で0.1%で起こる。
だから、外れる事もある。
昔の仲間の記録も残っているからな、
賭けなら100%勝てる。胴元破産だな。
どうだ、勝負するか?
トランプ、双六、バカラ、なんでもいいぞ。
掛け金は、この装置でどうだ。
」
「賭けません。博士に怒られます。」
爺さんの目が、ほんの一瞬だけ、人のものではない深さになる。
さっきまでは、知性がみえたが、今は欲が丸出し。
コロコロ変わる。
唐突に切り替わる。
人格が色々いる感じだ。
「さっきも、ゆうたろ。次元の実験で、並行宇宙を観測した。」
「1万年な。」
「文明はまちまち。」
「それを観測した結果から、この場合はこうなる確率が高い。とな。」
「観測データ無限にあるからの。」
「よく似た銀河の文明とか、物理の相似星 を 当てはめたら、
近い未来、1秒、10秒、1分 と だんだん伸ばして、
要するに、最適化と近似したわけだ。」
ムル
「それで神罰?」
「ワシも、そう思ったが、そうなると、変だ。」
「メテオは、100億年前、
ワシは、今も、詐欺をしておるが、メテオはない。
だから、ワシは犯人ではない。
真犯人は、昔の仲間がしでかした、次元観測で
並行宇宙が確定したこと、遺伝子をばら撒いたこと。
な、(ドヤ顔)」
沈黙。
「まあ……詐欺師は詐欺師じゃな。」
ムル
「笑って言うな。」
爺さんは、天井を見る。
「宇宙を、観測した罰じゃな。」
ムル
「……じゃあ今は?」
「今は?」
爺さんは、にやりと笑った。
「変わらんよ、神様を商売にな。」
ムル
「……ほんとにボケてないよね。」
「ボケとるよ。」
爺さん
「わざと。」
その瞬間、
装置の非観測域に、微かな反応が走った。
相互観測フラグ:未確定
介入リスク:回避中
爺さんは、立ち上がる。
「ほれ。
これ以上は、若いもんの仕事じゃ。」
ムル
「どこ行くのよ。」
「忘れ物を、忘れに行く。」
そして、振り返らずに言った。
「ムル。
観測は、優しさじゃない。
気をつけなさい。」
光が、ふっと消えた。
ムルは、しばらくその場から動けなかった。
「……宇宙、笑えない冗談ばっかり。」
爺さんの話は、考えるほど、恐ろしさが募る。
この観測で未来を決めるのかも。
並行宇宙の観測は、危険なのかも。
だから、来た。
同じような生命体がいるだけだぞ。
1万年かけても終わらんぞ。
これ暗に、やめろというアドバイスかも。
俺、これからどうなるの?。




