第35話 覗かれる
(君はだれだ? .... 何をしている?)
頭に直接聞こえる声、明確な意思。
ムルは、突然の声に驚いたが、状況はすぐに理解した。
「僕は、並行宇宙の探索、生命体探しています。
ただ、干渉はしない事と命令をうけていますので、
覗いていました。」
(なるほど)
空間が歪む、転移だ。
白髪の爺さんが、現れる。
服は、貫頭衣。なんか淡く光っている。
装置まで歩いていく。
「これが観測装置か、よくできておるな。」
見通すような眼光。
「 もう少し、ここを直せば、効率が120%になるぞ。」
手から何かが出て、観測装置が変形してゆく。
(ああ、博士、ごめんなさい。)
ムル
「あなたは、どこからきたのですか?」
「人間はこんなことはできません。」
「私の、覗きを止めに来たのでしょうか?」
老人
「えらく、落ち着いているな。
普通は、みんな驚いて、這いつくばるのにな?
ほれ、わしから光が出ているだろうが。
みんな、驚いて、神様というがな。
お前、神さまを知らんのか?
変わった種族だな?
(ふふ)面白そうだ。」
ムル
「神とは、宗教上の偶像、事実がありません。
それに、自分で神というのは、
大体詐欺師と相場は決まっています。」
老人
「ワシを、詐欺師とな。
なかなか見る目があるな。
おもしろいな。(ムルを優しげな目で)
ワシらも、神と崇められていい気になっておった時期もあった。
若気の至りよ。
本当の神にメテオの嵐を受けてな、ほとんどが、亡くなったわ。
そして、最近な、神殿の言葉が変わったのじゃ。
『見守るらしい』から、何してもいいとは、考えんがのう。
自分たちの銀河は、ブラックホールが拡大しておってな、
移住先を探しておったら、なんやら、変な時空の特異点が見えてな、
ここへ見にきたというわけじゃ。
それに、ここ、面白い研究をしてるな。
次元の移動は、昔やった奴が、永遠の時をかけても、到達しなかった。
やめた方がいいぞ。
ワシなんか、1万年実験したが、結局、面白いやつはいなかった。
どこも、おなじような生命がいるが、文明度は、まちまちでな。
不思議なのは、よく似た遺伝子があるのじゃ。
変だろ、並行宇宙で同じような遺伝子があるのが?
おかしいだろ。
だから、仮説を立ててみた。
昔の仲間が、次元の移動をしたために、遺伝子がばら撒かれた。
次元を観測したから、確定したわけだ。
観測しなかったら、並行宇宙はなかったのかもな。
無いという表現は、適切では無いな。
無はだな、エントロピー最大だわ。
観測により、揺らぎがはじまり、時空ができた。
わかるか、むずかしいかな。まあ、いいわ。
だから並行宇宙には、よく似た遺伝子がある。
お前の遺伝子も、わしも、同じじゃ。
遠い先祖がワシじゃ。
お前は、遠い孫かの。 (ふふふ)
こんな、ことを考える奴も出てくるわな。
ムル(話が止まらない。ようじゃべるおじいちゃんだな)
何がおじいちゃんだ、これでも 20歳だわ。
うちの惑星公転が1万年だがな。
ムル(へ? あの、寿命はあるのでしょうか)
ああ、あるぞ、大体 1000歳位までじゃな。
ワシは、若造だからな、至高は1012歳だわ。
ムル(あなたが、若造では、私はどう見えますか?)
ワシと同じ歳じゃろ、20歳。
ムル (ムッとする)
(見た目は全然違うでしょ。
肌のハリ ツヤ。
あなた しわしわですよ。)
これか、外見はこの方が、神様らしいじゃろ。
だから、見せてる。
営業用だよ。
話ぶりも、営業トークな。
これで、あちこちの銀河で、お布施をたんまり稼ぐのよ。
楽してもうける。
いいでしょ。
時々、神の言葉、なんていったけ。
ムル(啓示とか 天啓とか ? )
おお、それそれ、千年に1回位してやれば、喜んで、
また千年お布施を稼げるじゃろ。
ムル(詐欺師の話になった。 終わんねーーーーー。)
なんだ、終わりたいのか。
まだまだ、これから面白い話が、たくさんあるのにな。
気が短いのか、お前らは。
ムル (で、ここへきたのは、なんでしたっけ?)
ん?
そうそう、なんだったか?
あれ?
なんでここへきたのか?
.....わすれた。
帰るわ。じゃな。
」
光と共に消えた。
沈黙。
ムル
呆然としていたが、さっきまでのやり取りが、
なんか、ほのぼのとしてきた。
自然と笑みが溢れる。




