第27話 訓練生 悪戦苦闘中
シミュレーターの前で、訓練生 悪戦苦闘中。
難関コースがクリアできない。
先輩
「モニタ見てから操作したら遅いだろ。」
「モニタは画像を送るのに、5msの遅れが生じる。」
「だから、今の艦の情報は、過去の映像だ。」
「未来の映像を捉えろ。」
「両手、両足で、艦を自由に動かせ。」
(こればかりは、艦と同期する感じで、感覚の話だから、自分で掴むしかない。)
時速100 標的5m で、カイパーベルトをくぐれない。
1クリア 2クリア 3 大破 となる。
10のクリアして ターゲットがあるから、先は長いね。
まあ、3ヶ月あるから、気長にね。
シミュレータが終わると、練習艦で操縦訓練。
まだ、フラフラと飛ぶ、
スラスターかけすぎて、あちら向き、少なすぎて、こちら向き。
モニタ見てる画面が揺れて、宇宙酔いしそうだわ。
訓練生は、艦にGがかかっている事がまだわからない。
Gを、ベクトルを、感覚で掴まないと真っ直ぐ飛ばない。
機械学習をしても、体で覚えるしか理解できない。
先輩
「いい顔してるな。」
No1
「褒め言葉に聞こえませんが。」
先輩
「最高の褒め言葉だ。
頭が混乱して、体が追いついてない顔だ。」
シミュレーター内。
警告音。
角速度超過。
姿勢制御エラー。
No1
(……違う。)
モニタを見るのをやめる。
数秒、目を閉じる。
No1
(艦は、今ここ。
Gは、ここからこう流れる。)
軽く、左足。
ほんの一拍遅らせて、右手。
両手で「抑える」感覚。
警告音が止まる。
標的、5m。
すれ違い。
コン。
クリア。
No1
「……あ。」
先輩
「来たな。」
チャッピ
「今の操作、
視覚入力ではありませんね。」
No1
「うん。
酔いが消えた。」
チャッピ
「同期率、上昇しています。」
先輩
「やっと、
艦を物として扱うのをやめたな。」
No1
「……今までは?」
先輩
「道具。」
No1
「今は?」
先輩
「身体。」
練習艦。
実機は、正直だ。
遅延はない。
誤魔化しもない。
そして、容赦もない。
No1
(Gが、重い。)
ほんの少し姿勢を変えただけで、体の内側が引きずられる。
No1
(……これか。)
ゲームの時は、画面の向こうだった。
今は、自分が画面の中だ。
先輩
「焦るな。
Gは敵じゃない。
流れだ。」
No1
「流れ……」
先輩
「逆らうな。
向きを変えるだけだ。」
No1、深呼吸。
スラスターを踏むのをやめる。
預ける。
艦が、素直に回る。
No1
「……あ、これ。」
チャッピ
「操縦入力が減っています。」
先輩
「いい。
無駄が消えてきた。」
数分後。
直進。
揺れ、なし。
No1
「……まっすぐ飛んでる。」
先輩
「違う。」
No1
「え?」
先輩
「まっすぐ落ちてる。
それが宇宙だ。」
No1
「……なるほど。」
訓練生たちが、外から見ている。
No3
「……操作、ほとんどしてなくない?」
イルマ
「してるよ。
してないように見えるだけ。」
ムル・カース
(小声)
「……ベクトルが、綺麗。」
着艦。
No1、ヘルメットを外す。
汗だく。
先輩
「今日は、ここまでだ。」
No1
「……はい。」
先輩
「無理に進むな。
感覚は、寝てる間に育つ。」
No1
「それ、ほんとですか。」
先輩
「俺が保証する。」
No1
(3ヶ月、か。)
まだ、
100km/h、5m。
先は、
1000km/h、1m。
でも
No1
(今なら、行ける気がする。)
艦は、少しだけ、身体になり始めていた。




