第14章 世紀末
この物語は、我々の世界とよく似た、別の世界の話である。
14時50分。
世界各国のTVレポーターが国連前広場から中継を行っていた。
半径1kmは完全封鎖。人影はゼロ。緊張だけが風のように漂う。
「14時55分上空に反応あり!」
突如、空がめくれた。
雲が裂け、
巨大な浮遊艦が国連ビルの真上に忽然と現れた瞬間、
嵐のような突風が巻き起こり、
レポーターたちの髪と服を激しく煽る。
14時56分。
光線。
国連ビルの一部が、外壁ごと吹き飛んだ。
14時57分。
再び光。
某国の弾道ミサイルが発射直後に空中で爆散。
14時58分。
三度光。
世界の核ミサイルが同時に沈黙し、
全て無力化されたという速報が走る。
14時59分。
浮遊艦は、
まるで羽でも生えたかのように柔らかく地上へ着地した。
TVに映ったその艦影を、世界中が息を飲んで見つめた。
キルヒアイスの艦「バルバロッサ」、
某国のアニメオタク(生放送視聴中)が叫ぶ。
「う、嘘……生きててよかった!
あのアニメ、全部史実だったってことか!?」
ネットは即座に炎上。
「全長一致!」
「艦体比率検証!」
など、オタクたちが怒涛の勢いで解析を始める。
15時00分。
艦の側面にゲートが開いた。
そこから降りてきたのは、赤いベルベットのドレスを纏った女。
カメラへ向かって、まるで舞台女優のように軽くウインクした。
SNS:
(ウインクしたぞ!!)
(嘘つき! 地球企業連合体のバックは奴らじゃねーか!)
ざわめきが広がる。
15:01 狙撃、そして……
女の背後に控えた10体のロボット護衛の一体が、
不意に首だけをスッと横へ向けた。
次の瞬間。
パン。
1km先、ビルの屋上のスナイパーが即死した。
15:02
会場に設置されたマイクが、女の声を拾う。
「火器の使用は禁止したはずですわ。
まさか1km先から狙われるとは思いませんでしたけれど。」
護衛の一体が、叱るような機械声で言う。
「皇女殿下、遊びはほどほどに。
ウインクなど下賤の振る舞いは、皇帝陛下に報告します。
それに、あのようなおもちゃは無視なさればよろしい。」
皇女は肩をすくめた。
「プロに対する礼儀よ。
殺すなら、殺される覚悟もあるはずでしょう?
返り討ちにしたまでですわ。」
護衛ロボットの声が低く響く。
「地球人が野蛮であると、これで証明できました。
もはや助ける意味はありますか?
銀河の安寧のためには、
この星を一度初期化し、
穏やかな種族が育つまで待つべきです。
今の地球人は消えて「だめです。彼がいます。」」
皇女の小さな呟きに、護衛も言葉を失った。
そのまま、皇女と護衛十体は国連ビルの奥へと進んでいった。
(世紀末が……皇女の一言で覆されるのか?)
(“彼”って誰だよ。救世主ってことか!)
(そんな奴、地球にいるのか?)
(少なくとも、ここに集まった連中じゃないだろ)
(ていうか、なんで全員日本語を理解してるんだ?)
(自動翻訳チップだろ。俺ら全員、音声だけ日本語になってんだよ)
そして、誰も気づいていなかった。
皇女が言った「彼」は、
すでに地球企業連合体の監視網が
選び出していた人物だということに。




