表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽系外からの訪問者  作者: HAL
偽装商船団
148/208

第25話 香り兵器

 クラン

「ねえ、聞いて。

 消臭技術が銀河で成功するなら、その逆も理論上は可能よ。」


 殿下

「……逆?」


 クラン

「匂いの集中兵器化。」


 ホログラムに映し出されるのは、虹色に揺らぐガス雲。


 クラン

「特定種族の嗅覚受容体を解析して、

 快でも不快でもない、でも脳が処理できない匂いを投射するの。」


 俺

「……やめよう。」


 クラン

「まだよ。

 副作用として」


 資料がめくられる。


 クラン

「方向感覚喪失、判断遅延、

 『帰りたい』という強烈な感情誘発。」


 ルイ

「それ、精神攻撃です。」


 クラン

「武器じゃないわ。

 匂いよ?」


 殿下

(静かに目を閉じる)

「クラン……」


 クラン

「なによ。

 死なないし、壊れないし、環境にも優しいわ。」


 俺

「銀河がオナラ戦争になる。」


 クラン

「言い方!」


 殿下

「却下。」


 即答だった。


 殿下

「私たちは今、

 『不快を取り除く文明』として信用を得ている。


 それを

 『不快を振りまく文明』に戻す気?」


 クラン

「……」


 ルイ

「銀河倫理憲章第六章。

 感覚器官への意図的干渉は禁止です。」


 クラン

「書いてなかったわよ、匂いとは。」


 俺

「書く必要がなかったんだろ。」


 クランはしばらく黙り、やがて肩をすくめた。


 クラン

「わかったわよ。

 じゃあこれは?」


 別ファイルが開く。


 クラン

「敵が来る前に、自分たちが逃げる用。」


.......


 俺

「それな、鼬の最後っ屁と言うんだぞ。

 生物は皆んな逃げるレベル。

 お前、そこにいることになるぞ。

 いいのか?」


 クラン

「……」


 一拍。


 クラン

「……それ、

 自分も巻き込まれるやつじゃない。」


 俺

「そうだ。

 使った本人も逃げる。

 それが鼬の最後っ屁だ。」


 クラン

「最悪じゃない。」


 俺

「最悪だから、名前が残ってる。」


 ルイ

(冷静に)

「生物学的にも正しいですね。

 放出者は嗅覚疲労が遅れて来るので、

 逃げ遅れます。」


 クラン

「……」


 殿下

(腕を組んで)

「つまり?」


 俺

「使ったら、

 クランが一番長くそこにいる。」


 クラン

「……」


 沈黙。


 クラン

「……やめる。」


 俺

「賢明だ。」


 クラン

「ていうか、

 私が兵器になる前提で話進めるのやめて。」


 俺

「お前が考案者だからな。」


 クラン

「反省してるわよ。

 逃げられない兵器なんて、

 美しくない。」


 殿下

「その価値観、

 嫌いじゃないわ。」


 ナレーション(内心)


 銀河で最も強い抑止力は、

「自分も被害者になる」

 という想像力だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ