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太陽系外からの訪問者  作者: HAL
偽装商船団
145/208

第22話 落とし穴(臭)

 後日談


 護衛ギルド長 → 皇女殿下


 宇宙クラゲは、滅多に出現しません。

 逃走判定につきましては、せめて艦対艦でお願いいたします。

 宇宙生物相手では、ほとんど合格者が出ません。

 何卒、ご配慮を……。


 文面は、極めて丁寧。

 行間には、完全な泣きが入っていた。


 皇女殿下


「条件、決めてなかったでしょう?

 なら、仕方ないわ。」


 一拍。


「でも 収穫もあった。」


 にやり。


「生物って、匂いに敏感なのね。」

「商品化したら、儲かるかもしれないわ。」


 俺

「やめましょう。」


 即答。


「宇宙が、その……オナラの匂いで満ち溢れます。

 ロマンが壊れます。」


 殿下、口を押さえている。


「それに、使用後に航行した船に匂いが付着したら、

 商品クレーム、賠償問題、確実です。」


「最悪、近隣惑星から

 景観汚染の損害賠償請求が来ますよ。」


 沈黙。


 殿下、真顔。


「……それは、面倒ね。」



 クラン

「臭い太陽系に、商売人は来ないわよ。

 ガスマスク付けるほどの価値がないもの。」


 一拍。


「私も、とっとと退散ね。」


 俺

「……オナラで、宇宙経済モデルが終わる。」


 間。


「なるほど。」


 補足ナレーション(静かな真理)


 戦争でもなく、

 革命でもなく、

 古代兵器でもなく。


 臭い


 それだけで、

 交易は止まり、

 信用は蒸発し、

 文明は避けられる。


 銀河経済とは、

 極めて合理的で、

 とても繊細で、

 そして

 鼻に正直である。



 俺

(なあ、ルイ。地球人って……臭うのか?

 その……臭いのか。)


 ルイ

(……率直に申し上げますね。)

(私たちは宇宙食主体なので、

 体内で分解される匂い成分がほとんどありません。)

(ですが、土着文明 特に発酵文化を持つ惑星は……匂います。)


 俺

(まじか。)


 ルイ

(宇宙基準では、かなり。)

(納豆、チーズ、干物、漬物

 あれは「文化的生物兵器」に分類されかねません。)


 俺

(文化的生物兵器……。)


 ルイ

(宇宙人の中でも、かなり臭う文化ですね。)

(ただし、本人たちは気づいていません。)


 俺

(ああ……自分の匂いは分からない、ってやつか。)


 ルイ

(はい。)

(ですので、外交任務の際は )


 俺

(まさか。)


 ルイ

(消臭薬を服用しています。)

(体内で匂い成分を分解し、

 同時に微弱な好感誘導成分を放出します。)


 俺

(……それって。)


 ルイ

(いえ、媚薬というほど強いものではありません。)

(「なんとなく感じがいい」

「一緒にいて不快じゃない」

 その程度です。)


 俺

(それが一番怖いやつだろ。)


 ルイ

(科学的には、親近感誘導と呼びます。)

(宇宙では一般的です。)


 一拍。


 ルイ

(……要りますか?)


 俺

(……。)


(オナラで宇宙経済が終わる世界で、

 匂い対策しない選択肢はないよな。)


 俺

(……後で詳しく聞く。)


 ルイ

(了解です。)

(まずは、納豆禁止区域の設定からですね。)


 俺

(太陽系、思った以上にハードル高いな。)


 殿下

(太陽系を出るには、匂う=マナー違反……

 消臭薬が常識とは、完全な盲点だったわ。)


(ルイ、さっさと作ってちょうだい。)


 ルイ

(了解しました、殿下。)

(既存の外交用処方を、太陽系生理に合わせて調整します。)

(発酵由来の揮発成分を分解し、体内循環で無臭化。)

(副作用は……ほぼありません。)


 殿下

(ほぼ、という言い方が気になるわ。)


 ルイ

(周囲から「感じがいい」「話しやすい」と思われやすくなります。)

(銀河基準では、最低限の礼儀です。)


 殿下

(……。)


(わたし、臭うの?

 ……気になるわ。)


 一瞬の沈黙。


 ルイ

(率直に申し上げます。)


 殿下

(ええ。)


 ルイ

(現在の殿下は

 銀河基準では「無作法ではないが、文明初期の香り」です。)


 殿下

(……それ、フォローになってる?)


 ルイ

(なっています。)

(「不快」ではありません。)

(ただし、長時間の会議では距離を取られる可能性があります。)


 殿下

(最悪じゃない。)


(知らずに威圧していた可能性があるわね……

 言葉でも、匂いでも。)


 俺

(殿下、安心してください。)

(太陽系は全員アウトです。)


 殿下

(慰めになってないわ。)


 俺

(でも、今気づけたのはデカいです。)

(匂い=マナー=信用。)

(経済モデルの盲点、ここでしたね。)


 殿下

(……ええ。)

(武力でも、理論でもなく、体臭で信用を落とす文明。)

(なんて間抜けなの。)


 ルイ

(ですので、消臭薬は「通行証」扱いになります。)

(服用していない個体は、太陽系外では「未教育」と見なされます。)


 殿下

(決定ね。)


(太陽系出航条件

 言語、倫理、契約理解、そして無臭。)


 俺

(項目に書くとシュールですね。)


 殿下

(でも、これが現実。)

(銀河は、思ったより繊細で、容赦ない。)


(……ルイ、わたし用は、少し早めに。)


 ルイ

(もちろんです、殿下。)

(香りは

「安心感寄り」

 に調整しておきます。)


 殿下

(……それはそれで、少し怖いわね。)


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