第17話 銀河交易 勉強会
司会AI
「では、勉強会を行います。」
商人Aさん、A銀河へ商品を売りにいきます。
途中は、固定ルートのワープ航路ですね。
護衛艦1隻(ランク中 3名)
商船(通訳1人、水先案内人1人 商人A1人。荷物 千個)
「ワープを抜けたら、海賊がいました。」
「どうします?」
「護衛に撃退していただきます。」
「では、撃退できたけど、1人が死亡 2人が重症 となりました。」
「どうします?」
「.......契約でしょ。その、死亡とか重症なら、使えないから、ここで契約終了です。」
「なるほど」
「で、あなたは、荷物を積んで 目的地へと。 」
「では、目的地の前に、また海賊です。 どうします?」
「にげます。」
「できますか? 荷物満載、ワープできない。 速度が遅いでしょ。」
「荷物を交渉して、渡します。」
「はい、 条件はとても不利ですね。
あいて100%見込みある。 あなた0%」
「交渉できません。 荷物すべて海賊ですね。」
「質問はありますか?」
「2度も海賊に出くわすことなんかないだろ?」
「なぜ? 1:2の利益ですよ。
1なら2倍の戦力でなら総取り。」
「最初の戦闘で、護衛が弱すぎたから」
「なら、クラス上なら負けなかったと?」
「いや、その、 .....」
「クラス上なら金額も跳ね上がるけど?」
「そもそも、戦わせたのが間違い。」
「1:1なら 50%だから
戦わない、逃げるしかない。
逃げるための船ですから。」
「はい、正解。」
会場が、静まり返った。
司会AIは一拍置いて、淡々と告げる。
「本件は、初級中の初級です。」
ざわっ。
空気が凍る音がした。
物理的じゃない。
信用が凍る音だ。
「護衛とは、戦力ではありません。
保険です。
撃退とは、相手を倒すことではなく、
被害率を下げることを意味します。」
ホログラムが展開される。
・戦闘=期待値マイナス
・逃走=期待値ゼロ
・交渉=相手が有利な時点で成立しない
「商人Aは、最初の選択で破綻しています。」
商人A、顔が青い。
「戦わせた時点で、
あなたは護衛を消耗品として扱った
この瞬間、銀河商人の資格を失いました。」
俺は、思わず椅子から半分ずり落ちた。
(……いや、マジで?
ここ、そんなレベルなの?)
護衛Aが腕を組んで、ため息交じりに続ける。
「俺たちは、弾よけじゃない。
生きて帰るのが仕事だ。
死ぬ前提の契約なら、最初からサインしない。」
重症者の補填額が表示される。
・生涯逸失利益
・治療期間中の全収入補填
・精神補償
・家族扶養義務の肩代わり
商人A、完全に固まる。
「……そ、それは、想定していませんでした」
司会AI、即答。
「想定しない商人は、
銀河では存在しないものとして扱われます。」
俺の脳内で、何かが音を立てて崩れた。
(地球の自己責任文化、
ここだと商人テロ扱いじゃねえか……)
皇女殿下が、ゆっくり立ち上がる。
声は低い。
静かで、逃げ場がない。
「いい?
商売とはね、生き残った者だけが次を語れるの」
視線が、商人Aを貫く。
「死体の上に立つ商人は、銀河では海賊と同列よ」
会場の温度が、さらに下がる。
「商人ギルド長。
このレベルで銀河に出すつもりだったの?」
ギルド長、即座に起立。
「責任を持って是正いたします」
「点数制にしなさい」
皇女殿下、容赦がない。
「八十点未満は即時停止。
再教育三年。
再試験に落ちたら永久追放。」
ドスの効いた沈黙。
「……わかってるわよね?」
ギルド長、満面の笑み。
「はい、喜んで!」
一瞬、全員が思った。
(使い方、絶対ちがう……)
俺は、頭を抱えた。
(これ、勉強会じゃない。
文明矯正ギロチンだ……)
司会AIが、何事もなかったかのように締める。
「では次の問題です。」
画面が切り替わる。
――
Q2:
護衛が 戦わずに逃げ切った 場合、
商人が支払うべき報酬の倍率はいくつか。
――
俺は天を仰いだ。
「……地球人、
マジで銀河に出る準備できてねえ……」
皇女殿下が、ぼそっと一言。
「だからこそ、連邦と銀行が必要なのよ」
その目は、未来を見ていた。
銀河に出るレベルではなかった。
無知動く
傍迷惑な
銀河かな
(お粗末)(涙の俳句)
後日談
試験合格者 7人 / 1000人
100〜90点 1
89〜80 6
79〜70 3
69〜60 21
59〜50 403
49〜40 302
39〜30 123
29〜20 41
19〜10 2
9〜 0 98
ギル長 頭を抱えていた。
三年修行してね。
再試験で落ちたら追放だよ。
こんな奴しかいないの?
地球人
利益ばかりに目が入って、
対等な関係が築けない。
勝つか負けるか 上か下か 点数制の弊害だよ。
教育が間違ってる。




