第12話 賄いAIの愚痴
私をなんだと思ってるの?
料理界では名の通ったシェフよ。
クラスは 星3つよ。
それが、なんでこんなへんな場所で、へんな人達に
へんな料理を毎日考えなきゃいけないの?
あの厄災日から、地球はかわった。
私の仕事は、なくなった。
明日の生命を確保するだけ。
スティック1本で1日分。
水は配給。
異星人には感謝しかないわ。
住居も用意してくれた。
私は、カリン。
事故で、体を失った。
火災よ、レストランの油粕が熱で発火、2階の私が逃げ遅れただけ。
両親は、全財産を使って、私の頭脳をこのAIに移植したの。
世界初、AIと頭脳の融合。
私に生命をくれた博士は、変わった人だった。
差し出したお金では到底できないレベルです。
感情も味覚も人間と変わらない。
いつもの感覚が蘇る。
三年もすると、今までできなかった料理ができる。
五年で、全ての料理が記憶されている。
七年で、3つ星を獲得した。
想像できるのよ、食材の良し悪しで、どれだけの火加減を味覚を
材料は余らせない、使い切る。
そして、幸せを送るの。
食事することへの感謝を祈る。
この時間をくれた人々へ感謝し、返す日々。
仕事を失い、何も考えれない日々。
博士が来て、辺境の賄い仕事がある。
至急に行かないと、暴動がおきそうだと、
博士の頼みは断れないわ。
即、OKしたら、転移です。
そりゃひどいもんですよ。
なんでも、バカがあるだけの材料をつぎ込んで、肉しか残っていない。
で、その肉も3日間連続したから、隊員がキレているとか。
持って行った、材料で、スープをだしたら、泣いていたわ。
それから、毎日、隊員の様子を見ながら、
献立を考える日々がはじまったの。
楽しかったわ。
でもね、二年後だったわ。
基地の移動よ。
フードプロセッサーが来て、お役御免。
そして、その原因が、あの、ばか少佐だったらしい。
で、このへんな人たちに料理を振る舞う。
おかしいよね。
私は3つ星よ。
味音痴になんで、出さないといけない。
おいしいよと言ってくれるのよ。
でもね。
ここ、絶対普通じゃない。
クランちゃん。
可愛い。
本当に可愛い。
そこは認める。
でもね。
「重水素のスープで、安定したウラン原子をメインに♡」
……。
料理界において、
ウランを食材として扱うという発想は存在しない。
存在しないから、私が作った。
プライドをかけて。
防護服着て。
五重遮蔽して。
味覚センサー全部切って。
結果?
「ごめん、冗談♪」
小悪魔か。
料理人の心を、軽率に弄ぶな。
チャッピ さん
「何かあれば人権侵害ですよ?」
ええ、ええ。
素晴らしい理念です。
で?
「今日はエネルギーパックで一品お願いできます?」
エネルギーパックは食材じゃない。
それは非常食。
兵器区分ギリギリの、「生き延びるための物体」です。
それを、美味しくしろと?
それこそ、料理人への人権侵害では?
ルミナスさん
美しい。
本当に。
「なんでも食べれますから、気にしないでください」
……気にします。
あなた、皿の飾りまで食べるの、やめて。
それは、文化であって、栄養じゃない。
どんな胃袋なの。
どんな進化したの。
大佐殿
隊の運営で苦労されている。
わかっていますよ。
でも、
「シンプルで栄養が取れればいい」
違います。
食事は、士気です。
彩りは、生きている証。
あなたの部下が、今日も帰ってきた理由。
それを、数字だけで切らないで。
少佐の野郎
……。
今日もお疲れ様。
「今日のコーンスープ、とても美味しかったです」
知ってる。
それは、私の誇り。
「皿だったら、もっと満足感が出ますよね」
うるさい。
予算削った原因は、お前だ。
兵器を思いつきで作るな。
次元歪曲? エネルギー食い過ぎ。
そのしわ寄せが、私の皿に来てる。
大佐の苦労も知らないで。
私は、星三つ。
でも今は、
この変な場所で、
変な人たちに、
変な料理を作っている。
不思議と。
嫌いじゃない。
『今日のおすすめ♪』
『文句を言いながら作ったコーンスープです』
『……ちゃんと、味わいなさい』
鍋の中で、香りが立つ。
文化は、こうやって生き延びるのかもしれない。
少佐には料理人のプライドを、おしえてあげます。
(うふ)




