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太陽系外からの訪問者  作者: HAL
偽装商船団
132/208

第09話 マッチング 皇女

 皇女

「……1件も、申し込みがない」


 俺

「はい?」


 皇女

「名前も変えた」

「職業も、年齢も」

「全部、人間用に合わせた」


「それでも」

「1件も、ない」


 俺

「写真は変えられないでしょ」


 皇女

「……」


 俺

「見れば、わかりますよ」

「あなた、自分で言ってたじゃないですか」


「私は広告塔だって」


 皇女

「あ……」


(理解した瞬間)


 皇女

「あ、あああああ!!」


「私、光ってる!!」

「角度によっては神話級じゃない!!」


 俺

「今さら気づいたんですか」


 皇女

「私も、やりたい」

「絶対にやる」

「人間として、普通にマッチングする」


 俺

「……そこまでして、なんで?」


 一瞬、言葉に詰まる皇女。


 皇女

「……マーズが」

「10件も、申し込みがあるからよ」


 俺

「理由それか」


 皇女

「負けられないわ」

「皇女としてじゃない」

「一人の女として」


 俺

(面倒くさいスイッチ入ったな)


 俺

「……知らんがな」


(はぁ)ため息



 翌日。


 俺は、何も知らなかった。

 本当に、何も。


 ただ、朝のコーヒーが少し苦く、

 廊下の空気が、やけに重かっただけだ。


 俺

「……なんか、嫌な予感しません?」


 ルイ

「ええ」

「とても、よい朝ですね」


 俺

「それ、最悪の前振りですよね?」


 ルイ

「さて、こちらをご覧ください」


 俺の端末に、通知が雪崩れ込む。


【婚活AI:緊急対応モード起動】

【特例登録者:1名】

【監視対象:キム・ワーレン】


 俺

「……は?」


 ルイ

「皇女様の人間フォームが」

「婚活AIの倫理フィルタを突破しました」


 俺

「なんで?」


 ルイ

「参考人物として」

「あなたのプロファイルが、

 紐づけられたからです」


 俺

「誰がそんな」


 ルイ

「皇女様です」


 俺

「でしょうね!!」


 次の瞬間、画面が赤く染まる。


【警告】

【過剰魅力度スパイク検知】

【一般ユーザーに心理的影響の恐れ】

【対応者を指定してください】


 俺

「知らん!!」

「俺は婚活AIのオペレーターじゃない!!」


 ルイ

「でも、あなたは」


 端末に、太字の文字。


【最も近い人間モデル】

【感情耐性:高】

【逃走履歴:多】


 俺

「褒めてませんよね?」


 ルイ

「ええ、業務命令です」


 背後から、声。


 皇女(人間フォーム)

「キム」


 俺

「……はい」


 皇女

「どう?」


 俺

「何がです?」


 皇女

「普通?」


 俺

(普通の基準が銀河)


 俺

「……はい、ええと」

「少し、綺麗すぎます」


 皇女

「そう」

「じゃあ、少し抑える」


 抑える、の次元がおかしい。


 数値が跳ねる。


【魅力度:S → EX】

【倫理制御:破綻】

【AI混乱】


 俺

「抑えてない!!」

「むしろ盛ってる!!」


 ルイ

「キム」

「あなたが、言語補正してください」


 俺

「俺、軍人ですよね?」


 ルイ

「今は、人類代表です」


 俺

「最悪だ……」


 皇女

「ねぇ、キム」


 俺

「……はい」


 皇女

「私、勝てる?」


 俺

(誰と)


 俺

「……婚活に、勝ち負けはないです」


 皇女

「そう」

「じゃあ、全員を圧倒すればいいのね」


 俺

「話を聞け!!」


 その瞬間。


【婚活AI】

【結論】

【キム・ワーレンを安全装置に指定】

【当該人物の精神負荷を許容範囲外まで拡張】


 俺

「許可してない!!」


 ルイ

「おめでとうございます」


 俺

「何が!!」


 ルイ

「あなたは今」


 一拍置いて。


 ルイ

「皇女様の恋愛ダンパーです」


 俺

「地獄か」


 俺

「……誰だよ」

「こんな狂った企画、通したやつ」


 ルイ

「企画書、表示しますね」


 嫌な予感しかしない。


 端末に、淡々と文字が並ぶ。


【案件名】

 銀河間文化交流促進実験

  恋愛行動における文明間ギャップの可視化


【発案者】

 キム・ワーレン


 俺

「……」


 ルイ

「次、読みます?」


 俺

「……やめて」


 ルイ

「いえ、続きます」


【目的】

 ・管理社会下における自由意思の回復確認

 ・AIによる倫理介入の限界測定

 ・高位存在(皇女含む)の人間社会適応評価


 俺

「書いたな、これ」

「めちゃくちゃ理論武装して」


 ルイ

「はい」

「自分は当事者にならない前提で」


 俺

「……やったな」


 ルイ

「備考欄もあります」


 俺

「……見る」


【備考】

 ・安全装置として、キム本人を参照モデルに設定

 ・精神耐性が高く、最悪壊れても回復可能

 ・責任は自分で取る


 俺

「責任は自分で取る、って……」


 チャッピ

「取ってるわね、今」


 ルミナス

「理論上、正しい設計です」

「実装したら地獄になるだけで」


 俺

「想定外です!!」


 ルイ

「いえ」


 静かに、追撃。


 ルイ

「想定はしていたが、現実になるとは思わなかった」

「が、正確ですね」


 俺

「……」


 俺は、椅子に沈み込んだ。


 俺

「俺、さ」

「文明の自由とか、管理の解除とか」

「格好いいこと言ってたよな」


 ルイ

「ええ」


 俺

「それを」

「恋愛でやる必要、あった?」


 ルイ

「ありません」


 即答。


 ルイ

「ですが」

「あなたらしいです」


 俺

「それ、慰めにならない」


 そこへ。


 皇女

「キム」


 俺

「……はい」


 皇女

「これ」

「あなたが始めたのなら」


 俺

(やめて)


 皇女

「最後まで、付き合いなさい」


 俺

「……命令ですか?」


 皇女

「いいえ」


 一拍。


 皇女

「期待よ」


 俺

「一番重いやつ……」


 端末が震える。


【婚活AI】

【イベント開始まで:48時間】

【安全装置:稼働中】

【キム・ワーレン:逃走不可】


 俺

「……はいはい」


 小さく。


 俺

「やりますよ」

「俺が蒔いた地獄だ」


 ルイ

(にっこり)


 ルイ

「覚悟が決まった顔ですね」


 俺

「決まってない」

「諦めただけだ」

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