第08話 マッチング 先輩
ルイ
「あなた達は、本気で相手を探していませんよね。」
「そんな方達は、登録できても、マッチングしませんよ。」
「キム、求めすぎでしょ。」
「見てください、これが見本として最優秀です。」
氏名:ヨハン・クランベリー 29歳
178cm 82Kg
職業: 辺境基地 監視部隊240隊 軍曹
趣味:体術
相手: 共に生き、最後の時は、笑ってくれる人。
誠実で、正直な人。
住居は土星のコロニーを考えています。
住宅ローンは必要ですから、共働きになります。
子供は2人程で、楽しい毎日。
通勤は、転移ですので、単身赴任ではありません。
体を使うのは得意ですが、頭脳戦はからっきしダメです。
でも、家族は絶対守りますし。
絶対、生きてかえります。
希望年齢は20〜30歳
「これですよ。」
「申込が、1000人ですよ。」
俺
「...........」
クラン
「素敵 応募したいわ。」
ルミナス
「誠実で優しい、安心できる人」
チャッピ
「 文才 あるわね さすが、あのラブレターだわ。」
(ここで出すとは、まだまだ修行が足らんな。)
大佐
「たしかに、人柄が滲み出る。
家族のイメージが浮かんでくる。」
「ラブレターって何の事?」
俺
「人は見かけによらない。
野蛮人が、よきパパに見える。」
大佐
「ねぇ、ラブレターって何の事よ?」
全員 スルー。
大佐
「キム少佐、命令です。説明しなさい。」
俺(こんな事で権力使わなくても。)
「....... おどろかないでくださいね。」
かくかくしかじか
「 です。 ことの起こりは先輩ですよ。」
「 原因は、大佐です。」
大佐 顔が真っ赤。
「..... いや、 そんな でも どうしたら..... 」
俺
「お二人のことですから、俺は何も言いません。」
「先輩は、本気です」
ルイ
「私に、お任せください。」
「大佐の登録は少し指導し、今日中に登録しますから、
1週間後の婚活の日程に入ります。」
「さあ、大佐、頑張りましょ。」
「誠意ある方には、誠意を見せないといけませんよね。」
俺
(墓穴を掘る なるほど ルイ 役者やのう)
大佐
「……キム少佐」
俺
「はい」
「その……
誠実さというのは……
どの程度、正直に書けばいいの?」
全員
(来た)
ルイ
「逃げ場のない正直さです」
大佐
「……」
ルイ
「たとえば」
タブレットを操作する。
「
・階級を使って威圧したことがある
・でも、本当は孤独が苦手
・強い人間だと思われたい
・だけど、一人で食事をすると味がしない
」
大佐
「待ちなさい!!
なぜそんな個人情報を!」
ルイ
「刺さります」
チャッピ
「刺さるわね」
ルミナス
「これは……応募殺到タイプ」
クラン
「強い人ほど、弱さを許してほしいもの」
大佐
「……」
俺
(完全包囲)
ルイ
「大佐」
「婚活は戦争ではありません」
「勝つものではなく、生き残るものです」
大佐
「……」
「……キム少佐」
俺
「はい」
「……先輩として、一つだけ聞かせて」
「私……
本当に、登録しても……大丈夫かしら」
俺(少し真面目に)
「大丈夫です」
「少なくとも、ヨハン軍曹の文章を読んで、笑える人なら」
「大佐の弱さを、武器だとは思いません」
「人間だと思います」
大佐
「……」
ルイ
「では、登録完了です」
端末が静かに光る。
ルイ
「申込数」
一瞬、間。
「……もう、3件来てます」
大佐
「は?」
全員
「は?」
ルイ
「やはり……
正直な強者は、需要が高いですね」
俺
(宇宙は広い)
(婚活も、銀河規模だ)
俺
(……何で、俺のはダメなんだ?)
(正直だろ?
嘘は一切書いてない)
(危険な任務が多いことも
帰って来れない可能性も
全部、書いた)
(家族を守る覚悟も
約束できない未来も
正直に)
(……なのに)
ルイ
「正直と伝わるは、違います」
俺
(心を読んだな)
ルイ
「あなたの文章は」
「責任感は満点です」
「でも」
画面を指す。
「誰が、あなたと生きるのかが、見えない」
俺
(……)
ルイ
「あなたは」
「守る、耐える、背負う、ばかり書いています」
「笑うがない」
「弱音がない」
「帰ったら、何をするかがない」
俺
(戦場では、そんなこと考えない)
ルイ
「だからです」
「婚活は、戦場じゃない」
「共に倒れる覚悟より」
「共に起きる朝を見せる場所です」
チャッピ
「うわ、刺さる」
クラン
「キムは……
一緒に苦労しそうなのよね」
俺
(フォローになってない)
ルミナス
「でも」
「だから、友達としては最高」
俺
(追い打ち)
ルイ
「書き直しましょう」
「一文だけでいい」
「無事に帰れた日は、何をしたいですか?」
俺
(……)
(……考えたこと、なかった)




