第53話 管理者クラス緊急集合
― 皇女招集/土星会議 ―
場所は土星。
管理者クラス、全員集合。
皇女からの緊急招集。
議題は、二つ。
議題1
「神のお告げ」の正体
皇女は、銀河帝国が滅びた原因を探る中で、
管理者の存在に辿り着いた。
この宇宙には、かつて管理者がいた。
今は、いない。
彼らが残した命令は、ひとつ。
「銀河を、一定の状態に保て」
基準は
一〇〇億年前に作られた宇宙の姿。
銀河帝国は、目立ちすぎただけだった。
管理者の命令は、ただ実行された。
それは、バグ命令だった。
命令は銀河を探知し、
条件に合わない文明を
異物として排除する。
掃除。
それだけ。
あまりにもずさんな命令で、
数多の銀河文明が消えた。
そして
皇女は、その命令を書き換えた。
「見守り続けよ」
それだけ。
未来を、自分たちで選ばせるために。
俺
(……涙が出てきた)
怒り狂ってもおかしくない状況で、
それでも未来を残す命令。
停滞していた宇宙の時間が、
皇女によって再び流れ始めた。
間違いを正すという行為が、
これほどの責任を背負うものだとは。
それでも、立つ。
間違いなく、女神だ。
知っている顔。
驚愕。
視線を宙に漂わせる者。
中でも、ルイは違った。
神と崇めてきた存在が、
ただの誤作動命令だったと知った瞬間。
温厚な彼の精神は、
一〇〇億年分の記憶連鎖を失った。
ルイ(絞り出す声)
「……私たちは
間違った命令で
一〇〇億年、漂流していたのですね」
「罪を償うためにした行為が……
意味を持たない……」
「……神はいない……」
皇女
「私も同じだ」
「無辜の命が、二〇〇〇億以上」
「……お前も、同じだろう」
「心の整理には、時間がかかる」
「……休憩しよう」
「ルイ、いいか?」
ルイ
「ありがとうございます」
「一八分二三秒で、
記憶を再構築し、土星人に伝達します」
「土星人は、私ほど強くありません」
「二四時間、全作業停止。
記憶の再構築を行います」
皇女
「了解した。
当然、秘匿情報だ」
「ジェームス。
地球側へ通達を」
「土星人に
ウイルス性伝染の蔓延による
渡航・作業禁止。
隔離二四時間」
「その他も、よろしく」
全員
(了解)
通信は瞬時に広がる。
この日、
太陽系は二四時間、停止した。
議題2
お告げ
二〇分後。
非情にならねばならない。
皇女
「お姉様、私から話します」
巫女の夢
同じ夢を、視点を変えて見ている。
夥しい戦艦。
裂ける空間。
放たれる兵器。
飲み込まれる星々。
過去か、未来か、現在か。
わからない。
そして、皇女も見た。
鏡の向こうの風景。
ひとつの銀河が浮かび、
早送りの映像のように、
光に飲まれた。
光が消えたあと
残骸だけが、あった。
たった一度。
だが、あまりにもリアルな夢。
俺
(女神が、変人に見える)
敵が、わからない。
架空の相手とは戦えない。
だが、
「自分の言葉で話す」と言った理由はわかる。
姉様を守るためだ。
ルイ
「お願いがあります」
「その頭脳を、私に預けてくれませんか?」
俺
「お前、何をする気だ」
ルイ
「危害は加えません。
脳の書庫インデックスを照合し、
欠落を補えば、精度が上がるかと」
ジェームス
「ダメだ。やるならキムで実験しろ」
「戦闘力の出所も、ちょうどいい」
「な、キム少佐?」(ニャリ)
俺
「仕事が増えて根に持って、
ここぞとばかり反撃する。
せこいですよ」
巫女
「あ・な・た」
(ジョンを睨む)
ジェームス
「……これくらいしか反撃できん」
ジョン(小声)
「奥様には勝てん」
大佐
「キム少佐、
五段が待ってるわよ」
俺
「……はい。すみませんでした」
皇女
「シリアスな場面で、これだから男は」
「くだらないプライドとメンツで、
いらん戦争を起こす」
「何か異変があれば、即時通達」
「些細でも、勘でもいい」
「以上、解散」
俺
(女も冷たい戦争(嫉妬)してるじゃん)
全員
(黙っとけ。
油を注ぐな)




