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太陽系外からの訪問者  作者: HAL
辺境監視基地 
111/208

第45話 既成事実

 

 土星軌道上・非公開会議室


 俺は、深く椅子にもたれた。


「……で?

 誰が止める役なんだ、これ。」


 皇女は、紅茶を一口。


「止める?

 なぜ止めるのかしら。」


「理由を聞くか?」


「聞きたいわ。」


「文明が一段階、横滑りする。」


 ルイは、肩をすくめた。


「横滑りではありません。

 進化の再定義ですよ。」


「言い換えただけだろ。」


 大佐が、真顔で手を挙げる。


「確認ですが、副作用は?」


「ありません。」


「失敗例は?」


「ありません。」


「倫理委員会は?」


「土星には、ありません。」


「……だろうな。」


 殿下が、ゆっくり頷いた。


「問題は、地球よ。」


「そうだな。」


「地球人は、老いを 努力や徳と結びつけてきた。」

「そして、若さを罪か偶然として扱ってきた。」

「それが」

「金で買える、になる。」


 会議室が、静まった。


 クランが、低く唸る。

「女の戦が、始まる。」


 チャッピが、即答する。

「統計上、

 男性より女性の方が

 社会秩序を壊す速度が速いです。」


「言い方。」


「事実です。」


 ルミナスが、指を立てた。

「でもね。止められないよ?」


 全員が、彼女を見る。


「だって、希望だから。」


 皇女が、微笑む。


「正解。」


 俺は、額を押さえた。


「……最悪だ。」



 翌日 ・ 非公式リーク


 土星圏研究機関 発表(予定)


 ・生体細胞活性化技術

 ・10歳相当の若返り

 ・効果は段階的減衰

 ・使用制限あり

 ・倫理安全検証済み


 SNSは、3分で燃えた。


 先輩

「俺さ……」


「ん?」


「金、貸してくれ。」


「……理由は?」


「未来への投資。」


「誰の?」


「嫁候補。」


「……」


 俺は、天井を見た。


(文明は、いつもこうして壊れる。)

(戦争じゃない。)

(女だ。)


 ルイ(小声)

「次は、男性用も出します?」


 俺は、即答した。

「元々、区別してないだろうが!」


 皇女が、楽しそうに笑った。

「もう遅いわ。」



 ルミナス

「地球人 人口統計 70億  40億 女性

 対象 20〜80歳 

 資産状況 全員 の 5割が 来ます。


 つられて、男性も来ます。


 男女合わせて40億が 土星に 

 コロニーがありません。


 地球経済 破綻。 


 貧乏人で溢れる。


 」


 俺 

「土星圏研究機関 で 調整

 月 100万人なら受け入れ可能だろ。

 分割払い。 

 10年で支払い完了。

 どうせ、男が払うさ。


 彼女が綺麗になりたい=男「うん」「俺も綺麗な君が見たい」


 コロニーはまだまだ不足だから、

 男どもを雇えば、需要と供給のバランスがとれるだろ。 


 土星は得た利益をエネルギーの購入費用に充てる。

 俺たちに、金が戻り、地球へ投資して、循環させる。

 どう?

 」



 会議室が、静まり返った。


 ルミナスは、数秒、瞬きをしなかった。

「……合理的です。」


 クランが、低く息を吐く。

「血は流れぬが、世界が組み替わる。」


 チャッピが、即座に補足する。

「計算上、

 地球経済の急激な崩壊は回避可能。

 むしろ、雇用創出による

 再配分モデルとして優秀です。」


 大佐が、眉をひそめる。

「つまり……」

「男は、働く。」

「女は、若返る。」

「土星は、稼ぐ。」

「地球は、生き延びる。」


 俺は、肩をすくめた。

「誰も損しない。」


 皇女が、ゆっくり拍手した。

「……怖いわね。」


「何がです?」


「あなたが、

 善人の顔で悪魔の設計図を描くところ。」


「褒め言葉?」


「最高の。」


 ルイが、端末を操作する。


「受け入れ上限、

 月百万人。

 医療・居住・労働を一体化した

 滞在型コロニー。」


「名称は?」


「――」


 俺は、即答した。


「リ・ジェネシス。

 再生、という意味だ。」


 ルミナスが、微笑む。

「地球人、好きそうですね。」

「希望の名前は、売れる。」


 殿下が、軽く咳払い。


「一点だけ、問題があるわ。」


「何です?」


「誰が、最初に並ぶのか。」


 沈黙。


 俺は、視線を上げた。


「決まってる。」


「誰?」


「女だ。」


 チャッピが、淡々と。


「男性は、支払う準備が整ってから来ます。」


 クランが、頷く。


「それが、雄の習性。」


 皇女は、楽しそうに笑った。


「では、決まりね。」


「土星は」

「美容と労働の星になる。」


 俺は、内心でため息をついた。


(戦争より、よほど厄介だ。)

(でも――)

(これが、救いの形なら。)


 地球 数日後


 速報:土星圏、若返り医療の段階的受け入れ発表


 ・月100万人限定

 ・滞在型労働プログラム

 ・分割払い可

 ・男女同伴可


 世界は、静かに狂い始めた。



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