第39話 爆弾投下
土星移民の話。
宇宙戦艦 百万。
全部、ハリボテらしい。
宇宙を放浪していた時に学んだのだという。
戦えば、終わらない。
叩かれたら、叩き返すまで追う。
被害は、際限なく増える。
だから、戦わない。
逃げるだけ。
相手は、自分のテリトリーが守れれば満足する。
逃げるためには、ワープするまでの防御だけが必要。
戦艦は、防衛特化。
コロニーは、3秒でワープ可能。
「ちょっと待った」
今日も、ルイと雑談中。
「戦艦、どうするんだ?
カイパーベルトに置いたままだよな?」
と聞いたのが始まり。
3秒も異常だが、
問題はワープだ。
ワープだぞ。
普通、できない。
こいつらは、とんでもないことを、
当たり前みたいに話す。
「100億年、漂流していますから。
ワープの 道 は、わかっていますよ」
……あちゃー。
俺たちが、やりたくてもできなかった懸案が、
こうもあっさり開示されるとは。
「そのワープ地図、
貴方たちだけが知っているのか?」
「いえ。
各地域の銀河は、自分のテリトリーは理解しています。
それ以外は、知りません」
「逃げるだけの私たちは、
宇宙の隅々まで知らないと、逃げられないでしょう?」
宇宙経済モデルで語られていた、
あのワープ航路が、現実になった。
もはや、太陽系経済圏などと言っている場合ではない。
……また、爆弾投下だ。
(殿下。
すみません。
こいつ、手に負えません)
「あの――。
この銀河のワープ地図も、
お持ちだったり……するのでしょうか?」
俺は、無意識に手を擦っていた。
金の匂いを嗅ぎつけた悪徳商人そのものだ。
「もちろん。
全部、ありますよ」
(ぐへ)
言葉にならない。
開いた口が、塞がらなかった。
――この瞬間、
俺の中で宇宙経済という概念が音を立てて崩れた。
クラン
「壊れたみたいね」
チャッピ
「いつものことでしょ」
ルミナス
「そうですね。
残念なキムです」
……やめろ。
俺はまだ、現実に帰還できていない。
後日談
……まだ、あった。
宇宙地図がある、と。
銀河の、ではない。
この宇宙そのものの地図だ。
アンドロメダ銀河。
そこは――機械文明が占めている。
支配者は「帝王」。
民主でも合議でもない。
ただ、最も強いものが帝王になる。
彼らが欲するのは、武器。
そして、強固な金属。
それは身体そのものの材料でもある。
思考体系は、AIだが知識継承型ではない。
学習はするが、歴史は持たない。
四本の腕、四本の脚。
頭部は異様に小さい。
理性よりも、演算と反射に最適化された形。
特産は、鉄と鋼。
エネルギー源は――どうやら、単純な電池。
技術水準と思想が、致命的にアンバランスだ。
かつて存在した古い人型文明は、排除された。
彼らの言い分では、
「虐げられていた人民を解放した聖戦」らしい。
……よくある話だ。
つまり。
銀河の重要情報は、すべて彼らが握っている。
放浪していた、という話。
逃げていただけ、という説明。
――本当か?
あれは、方便じゃないのか。
逃げていたのではない。
宇宙を把握するために、漂っていただけ。
結論は一つ。
宇宙の覇者は、
もう決まっている。
銀河の皆さん。
……騙されてまっせ。




