第09章 太陽バースト
この物語は、我々の世界とよく似た、別の世界の話である。
一年半後。
太陽は、誰も予測していなかった異常なバーストを起こした。
後に判明したことだがこれは、
彼らが地球に対して警告として齎した現象だった。
地球文明は過去にも何度も太陽活動の急変により崩壊してきた。
だが、今回の規模は桁が違った。
大規模な磁気嵐が地球全域を襲い、通信衛星は沈黙し、
PCや電源システムはほぼ全滅。
大都市では金融システムが止まり、データセンターは焼き切れ、
人々の不安は瞬時に暴動と略奪へと変わった。
無政府状態、そして、食料供給の崩壊。
もしこのまま続けば、地球人類は「飢餓」という、
最も古く最も残酷な形で死を迎えるだろう。
さらに悪いことに磁場が部分的に吹き飛ばされ、
大気は強烈なイオン化エネルギーに晒された。
酸素そのものが化学的に破壊されていく可能性さえあった。
彼らの故郷の星も、かつて同じ運命を辿ったという。
太陽の異常活動により惑星の半分が焼け、
残る半分はゆっくりと死んでいった
その記録は痛々しいほど克明だった。
届いた膨大なデータを、国際連盟は100台の独立AIに解析させた。
その結論は重く、しかし一致していた。
「論理に破綻はなし。この事象が再発する確率は90%。」
ただし問題が一つある。
災害の規模だけは予測できない。
衛星通信の喪失レベルで済む。
あるいは文明全体が消える。
どちらの未来も排除できなかった。
彼らはデータと同時に、
地球のこれからの未来シミュレーションまで提示してきた。
それは、あまりに精密で人類の気象学も天文学も凌駕していた。
そして、理解できる範囲を超えていた。
知識のレベルが違い過ぎるために、
双方にとって悲しい現実(会話が成り立たない)が表面化する。
会議室。
国際連盟科学委員長は、固い声で問う。
「……データが正しいと、本当に判断できるのですか?」
壁面スクリーンには、
彼らが渡してきた太陽活動モデルが映し出されていた。
人類の持つどのモデルとも一致しない、桁外れの精度を持つ予測。
回答を求められたAI技術者は、低く答えた。
「判断というより……認めざるを得ません。」
「我々の持ち得る技術と知識を動員しても、理解できないと。」
「猿がスマホを理解することができますか?」




