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みっつ、透かす力の行方

あれから、私の日常はどうなっていったのか皆様知っている?


彼女と過ごす日々のこと。




***


「..ねえ」 


「此処にきて楽しいかしら?」

彼女が当然という様な眼差しでこちらを見てくる。


「..楽しいというより落ち着くわ。」

 

「嘘の欠片もないこの世界に不都合などないもの。」

鏡を見て私は微笑む。


此処は私と彼女だけの世界。誰にも干渉されない唯一の場所。


好きなように行動して好きなように日々を過ごせる。それも、彼女と。


小さな日差しがさす庭園の下で。彼女と雑談をする。


その日はひんやりとした風が吹いていた。ちょっぴり肌寒く、思わず白く細い腕に手を添える。こちらをまじまじと見つめてくる彼女。明らかに寒そうな私を見て、それだけでも充分な暖かい言葉をかけてくれた。

「.....あんた紅茶でも飲む?」


「ええ」


「どの紅茶が良いのよ。」


「じゃあハーブティーをいただくわ。」


「作ってくるから少し我慢しなさいね。」

彼女が椅子をひいて立ち上がる。肌を凍らすような風に吹かれて彼女は庭園の入口まで足を運んでいった。

彼女が居なくなり寒気と孤独感が鮮明に伝わってくる。隣に目をやるとぽつんと椅子がひかれたままで、さっきまでそこに居た痕跡を感じる。空気の冷たさはより増していて、急に吹かれた風に私は身を寄せた。此処に来たときは日差しがさして暖かかったのにどうしてかしら。


「........はーー、、」

赤く縮こまった手を擦り合わせて懸命に暖をとる。私が息を吐くと、キラキラとした白い吐息が空気中に舞っていく。庭園になんか出なきゃ良かったわね。ひらひらと揺れるレーススカートが目に入った。朝はこんなにも肌寒くなかったから、薄着で来てしまった事に私は少し反省する。


「持ってきたわよ。」


「お望みのハーブティー。」

さっきまで凍てついた息が舞っていたガーデンテーブルに、暖かくしんみりとした甘い湯気と共にティーカップが提供される。私は悴んだ手のひらをそっと添えて暖をとった。すると、すぐさま紅茶の優しい温もりが体中に伝わって私は思わず「あったかい」と声を零した。


「こうやって飲むのも悪くはないわね、」


「私は早くロビーに入りたいわ。」

彼女と何気ない会話を風に任せて、私はハーブティーを口に流し込んだ。落ち着いた風味が口の中に残り彼女とのティータイムに、飾りを着せる。なんだか満ち足りた気分になって、無自覚に口角が上がってしまう。妙ににんまりと笑みを溢す私を見て、彼女は「何笑ってんのよ」と此方へ視線を向けた。

「ちょっと思い出に浸ってるの。」

少しばかりこけにして微笑んでくる彼女。貴方との思い出。それは私にとっての宝物。

きっと彼女もそう想っているだろう。

「ほら、さっさと飲まないと冷めちゃうわ。」

「分かってますって。」

少なからずとも、私は彼女にとって。彼女は私にとって、誰よりも大切なものとなっていたはずだわ。


今日も、明日も明後日も。彼女と生きていく。

闘っていく。前に進んでいく。

今まで一人でぽつんと歩いていた道も、普段は怖くて通れない闇くらい路地裏も、彼女が居れば怖くない。


御守りみたいに、私を不器用ながら守ってくれる。


特別な武器を持っていたり、強力な戦力を持っている訳でも、削られた体力を回復してくれる訳でもない。


そこに居るだけ。そこに居るだけで、私にとっての貴重な戦力となり、最凶で最強な特効薬となるの。居ても何か物理的に変化することも無い。かといって、無かったら困る掛け替えのない存在。

彼女と共に生きていく日常。


冗談(ジョーク)を言って笑い合う日々。


凛々しい表情をして見つめてくる彼女の瞳。


悪戯心と抑えきれない好奇心をかかえ輝いた表情。


その姿さえ、もう私にとって充分であった。



彼女の名前はバイオレット・エマリスター。



私の大切な友達であり、親友でもあり家族でもあり

そして、自分自身でもある彼女。


彼女と同じように、私の瞳にも力強い信念と想いが詰まっていた。


ずっとこの世界でね。










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