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0-・  作者: 小城
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 この物語は、フィクションであり、実在の人物、団体、事件等とは、一切、関係ありません。

反体制危険指定A組織天地会傘下

反体制危険指定B組織般若組

知恵(Bestia )ある獣(sapiens)自治区域は無法地帯とは異なる。そこには秩序がある。特異点以前の社会制度をなぞり、それに準じた政治制度と法秩序が敷かれている。が、その正規的実効機関は脆弱性を露呈しており、張りぼての如く揺らぐ屋台骨を支えているのが、民間実力組織であり、それらは武力を把持する武力集団と同義であり、大抵が反体制危険指定組織となっている。既存の秩序が社会の変化により社会変革を起こし、その過程で争いが起こる。それには武力を伴う。旧体制に座する者と新体制に立つ者と。その軋轢の中で伸長したのが彼らたち。と簡単に評論することはできない。特異点以前以後の社会変化においては、魔法の力を得、新たな体制を敷こうと考えた変革者たちが、実は、特異点以前の社会をこそ理願とする理想的保守勢力であり、特異点以前の旧体制社会にあぐらをかく現実的保守主義者たちこそが、社会変革を柔軟に受け容れた進歩主義集団として君臨していると言えるのが知恵(Bestia )ある獣(sapiens)たちの現状である。

【至心愚直 岩徹砕心】

「小僧どもが皆、逝かされおったわ。」

「阿呆めが、いらんことするからや。」

「向こう岸の奴ら、えらい顔して攻めてきとったで。」

「ほとぼり冷めるまで、しばらく鳴りを鎮めいってのが会長のお達しじゃ。」

「静観や。動かざること山の如しというやろ。」

「呑気なもんじゃな。わしらかてカチコミかましたればええんや。」

「ど阿呆、組潰す気かいな。」

「わしらの業界は、なめられたら終わりじゃ。」

「向こう岸の奴らは人間とちゃう、化け物よ。犬畜生と同じや。いちいち相手にすな。せやかて、犬畜生なだけに、ぺろぺろ舐められたら、それこそドタマかち割るくらいせんとなあ。はっは。どうや、おもろいやろ。」

「しょーもな。醒めたわ。興醒めや。」

「せな。頭冷えたんなら、さっさと仕事しにいかんかい。」

「静観やないんですかい?」

「馬鹿たれ、それはそれ、これはこれや。日々のしのぎはせい。」

「ほな。大人しく、行ってきますわ。」

……

ドっぱああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!

般若組の事務所がある三階建ての雑居ビルが粉微塵に吹き飛ばされたのはミナズマ襲撃から一週間後の一昨日の昼だった。

「恐ろしい力だ……。」

雑居ビルの崩壊に火薬を使われた形跡はない。目撃者によると、突然、崩落したという。内部からの衝撃があったのか、建物はその自重により、勝手に崩落したらしい。

地の魔導師エレナ。彼女が魔力を以て建物に干渉し、崩落を招いたのだった。

「般若組の組長は裏で治安部隊とつながっている。ミナズマの情報を流したのも彼。だから、つぶした。」

エレナは天地会所属の用心棒のようなことをしている。

「あなたたちのことは兄に紹介してあげてもいい。だけど、兄は、あなたたちを信用しない。……と思う。」

天地会会長天風フウマ。弱冠16歳にしてこの世界の裏社会を牛耳る存在にして、風の魔導師の継承者。頭の回転の速さは凄まじく、いわゆる天才児というやつなのだろう。フウマとエレナは双子の兄妹で、それぞれ、フウマが風の魔導師ターナーから、エレナが地の魔導師エリスから魔力結晶を継承されている。二人とも生後7カ月の時、魔力に目覚めたという。早熟な覚醒だ。しかも、二人とも、自分たちが古の賢者の末裔であり、その魔力を受け継ぐ、特別な存在であるということを薄々、感付いていたらしい。

「そんなことだろうと思った。」

エレナの仲介で僕とトウヤがフウマに会って、それらの話を説明した後に彼が放った言葉だった。

「お前たちに協力はしない。ただお前たちが俺たちに協力するというのならば、俺はそれを止めはしない。」

フウマとエレナは両親を治安部隊に殺されている。二人の両親はもともと管理区域といわれる化け物たちに管理されている人間たちが住む地区で魔力の研究をしていた。その過程でフウマとエレナの二人の体内にとてつもない魔力が秘められていることに気が付いた。両親の勤めている研究所は、そもそも化け物たちが対人類用に魔力の研究をする研究機関であって、もし二人に秘められた魔力のことが化け物たちに知れられたら、子供たちは実験台にされるか、処分されるかのどちらかなのは明らかだった。そこで、両親は、二人を自分たちの手元から離し、管理区域外に住む知人の所へ預ける計画を企てた。二人は荷物に紛れて、無事、管理区域を脱出することができた。しかし、後々、自分たちも密かに脱出して子供たちと落ち合う予定であったが、その途中、脱出計画がばれて、処刑されたということだった。

「裏社会を牛耳ったのも復讐の一環だ。俺にはその力があり、エレナにも、それが与えられている。天下を獲る。それが俺の使命なんだ。その邪魔をするやつは消えてもらう。単純な話だろう。」

天下を獲る。ということが、何を意味しているのかは分からない。化け物どもを滅ぼすのか、人間の社会を取り戻すのか。しかし、フウマの頭の中には、そこに至るまでの道筋と過程が、すでに細部に渡るまですべて網羅されている様子に見えた。

「手っ取り早いのは、僕たちが君の傘下に入るか部下になることだね。」

「話が早いな。」

「いや、君の話を聞く所、君の目的と僕たちの目的は一致しているからね。そもそも、君も継承者の一人である以上、僕たち継承者の大本の使命というのは一致しているはずなんだ。それぞれの世界の救済。そして最終的には魔王の討伐。」

「そんなことは俺は知らない。」

「それは君がまだ完全に覚醒していないからだよ。風の魔導師ターナーの願い。君はまだ天風フウマというひとつの存在に縛られている。真に覚醒すれば、それも君という存在の一部になる。」

「……。」

ごぁあああ!!!

「きゃあ。」

「げっ!!」

ああ……っュン。

突然の魔力行使。風刃。豪風。それを時の魔導師ケイオスから継承された力の一部を使って、瞬時に消滅させた。

「ターナーの魔力はそんなものじゃなかったね。」

「お前の言っていることもあながち嘘ではないようだ。」

フウマに殴りかかりそうになるトウヤを制止しつつ、向こうでは、フウマの前にエレナが立ちはだかっていた。

「ところでフウマ。君の計画では、君が天下を獲れるのにはどのくらいかかる予定なんだい?」

「さっきまでは三年だった。が、今は修正を加えて一年だな。」

「うん。分かった。」

「おい。いつまで突っ立ている。」

「いいの?お兄ちゃん。」

「お前も分かるだろう。」

「うん。」

話はまとまった。僕とトウヤはフウマの傘下。エレナの直属の部下として活動することになった。





……





「依然として黒い男の行方は追えていない。そのようなことを言うと、まるで私たちが無能であるかのような印象を与えてしまうかもしれない。しかし、それが事実なのだ。」

先輩。

なに?

なにかおかしくないですか?

なにが?

いや、なにかが……。

「桜沢が変なのは相変わらずだった。当てもなく自治区域を彷徨う私たちがたどり着いたのは一カ所の御堂。のような所。」

なんですか?ここ?

昔の遺構かな?

え?なんでここに来たんです?

いや、さあ?知らない。

は?

「彷徨い歩いていると、気になる所が目に付いた。という気分だった。幼い頃から、私はそういうところがあった。通学路の途中に出会う。塀と塀の奥。電柱と建物との間。唐突に道路に落ちている金属製のワッシャーなど。本筋とは関係のない細部に目が留まる。そして、それらが頭から離れない。この御堂も、そのような細部のひとつだった。特異点以前。より前。もっと前。いや。そうではない。昔……?の記憶……?私の過去を振り返っても存在しない。記憶。の世界。あれ……?なんだ、これ?うん?えっ?なに?これ?だれ?だれの記憶……?どこの世界……?ちょっと待って?待って?待て!誰だよ?おまえ?え?なに?」

先輩?大丈夫ですか?

ああ。なにが?

なんでもないならいいです。

「その御堂は平屋の一軒家。その町の公民館のような場所。」

こうみんかんってなに?

え?なんですか?

「その中に厨子棚があり、扉を開ける。その中にそれはあった。黄金色の像。大きさは3cm程度。」

なにもないですね~。

空っぽだな。

「道路上に落ちている金属製のワッシャーを拾い上げる感覚だった。私はその像をつまみ。」

ぱくっと。食べた。

は?

うん?

え?

なに?

やっぱり、なんかおかしいですよ。

出ようか。

そうしましょう。





……。




我々の人口の99.8%が人類教を信仰している。では残りの0.2%は何か?ちなみにこの統計の中に知恵(Bestia )ある獣(sapiens)たちは入っていない。我々とはhomo sapiensのことだ。その0.2%のホモ・サピエンスの信仰する対象。それは悪霊崇拝だ。daemon、ダイモン。の類。それらは本来、知恵(Bestia )ある獣(sapiens)たちの崇拝対象だったのだろう。しかし、今ではなぜか、我々のわずかな人数によって護られている。

女神の木乃伊

と呼ばれる遺物。

それが人類博物館に展示されている。干からびた亡骸。古の王国の姫。悪霊に生贄として捧げられた彼女は血を抜かれ防腐処理を施されて、古代の花嫁衣装を着させられている。

1500年前にいた悪霊の花嫁。

狂姫サキュトス。



……



近づいて来る。

災いが。

それぞれが。

ひとところに。



……




水香奪還

「これをこう。」

エレナが掌をすぼめると、辺り一帯の建物は砂丘に沈んだ。

「そしてこう。」

エレナが掌を広げると砂丘は岩となり建物を固定した。それらの現象は学園内の警備隊たちにも適応された。警備隊員らは一様に姿を消した。皆、砂岩の中で窒息死していることだろう。

「さあ、いってらっしゃい。」

「お前は来ないのか?」

以前、作戦に失敗したことのあるトウヤも驚愕の様子だった。

「あなたたちだけでもできるでしょう?」

「行こう。トウヤ。」

「ふん。」

僕とトウヤは半ば地面に沈んでいる塀をまたいで内へと入った。辺りは静かだ。月明かりもない。今夜は新月なのだろう。

「待って。」

「ああ。」

「やっぱり、先に行ってくれないか。」

「大丈夫なのか?オレが代わってやってもいいんだぜ。」

「いや。トウヤだと。周りに被害が出る。」

「あっそ。」

「敵性魔法使い視認。排除開始。」

一目で危険な相手だと理解した。姿は普通の警備隊員らしいが、なんと言うか……。危ないやつ的な空気を体中全体からばんばん放っているようだ。魔力を持たない頃ならば、避けて通った相手だろう。だが、今はそれが許されない。

どっ。どっ。どっ。どっ。どっ。どっ。

相手は正確に心臓に向けて拳銃を発砲してきた。しかし、そのすべてが時空の彼方へ消えていく。

「遠距離攻撃無効化。近接戦闘開始。」

とっ。とっ。とっ。とっ。とっ。とっ。

ステップ音が正確無比に響いた。僕はすかさず距離を取るが、そんなことはお構いなしに相手は距離を詰めて来る。

ドッ。ドッ。ドッ。ドッ。ドッ。ドッ。

炎光が輝いた。トウヤ。戻って来たのか?

「はっはー。やっぱりこっちの方がおもしろいわ。」

「おい。」

「増援確認。焔による魔法攻撃を受ける。被害なし。」

「どこに行けばいいか、わかんねーし。」

「バカ。」

「こいつ、二人相手に勝つつもりなのか?」

どっ。どっ。どっ。とっ。とっ。とっ。

トウヤに発砲しつつ、僕への牽制も欠かさない。よほど戦闘に慣れている。

とっ。どっ。ドッ。ドスッ。

「!」

「!」

「!」

「なにしてるの。早く逃げるわよ。」

「いや、まだ…、」

「目的はもう達成したわ。」

「は?」

視界から相手の姿が消えた。と思うと、エレナの声が聞こえた。そして、辺りに砂塵が舞い上がった。

「退くぞ。」

「ちっ。」

とっ。ぱっ。

「早く走って。」

「おい、あいつは?」

「魔法で埋めた。けど、死んではいない。」

エレナとトウヤと僕は素早く駆けて、その場から逃走を始めた。

「水香は?」

「あなたたちが遅いから部下に任せた。」

どうやら僕たちは最初から当てにされていなかったようだった。それもフウマの指示なのだろう。もしかしたら、もともと陽動の囮としての役割がなされていたのかもしれない。

「あいつは何者だ?ただの警備員じゃねえな。」

魔力を込めて速く駆ける。その状況下でトウヤは、先ほどの相手のことが興味津々らしく、ことさら、エレナに尋ねていた。

「あれは私たちの敵。」

「そんなことは分かってるよ。」

「違う。あなたたちじゃない。フウマと私。お母さんとお父さんを殺した仇。」

「名前は?」

「鬼人のクラムラ。治安部隊の(トップ)。戦闘の専門家(エキスパート)。たぶん、あなたたちでは勝てない。」

「おまえでもか?」

「そう。フウマなら勝てる。かもしれない。恐ろしく強い。今まで、うちの者も1000人以上殺されてる。たぶん。」

「……。」

「その強さに秘密はあるのかい?」

「秘密?」

「魔法が効かないとか?」

「あー。別に。魔法が効かないわけではない。ただ、なんていうのかな。戦い方に慣れてる。っていう感じ。かな。」

「戦闘の専門家。」

「そう。」

素早く駆けた。相手は追って来なかった。エレナが言うには、今回遭遇したのは向こうにとっても偶然だったのだと言う。計画的であるならば、もっと用意周到に準備されていたはずだと。それ故、追っては来ない。待ち伏せもされていない。僕たちを撃退するのが目的だったのではないかと言うことだった。


特定機密第三号速報文書208

みやま市凪城国立管理教育センター青葉学園における事項。某日、知恵(Bestia )ある獣(sapiens)反体制派勢力によると思われる襲撃事案発生。敵性魔法使いによる魔法攻撃により同日同所任務中第七警備課員ら三十名死亡。全死因、地面下埋没による窒息死。同時刻、同所対策本部視察中、倉村治安課長異変感知システム作動により臨場、敵性魔法使い三名と遭遇戦闘後三名は逃走。同名等、宮中駐屯地小隊襲撃犯と同一性確認。倉村治安課長より戦闘時データ記録を人類研究所に転送解析。後日結果追報告予定。以上。


特定機密第三号追加報告文書209

先件208速報追加。某所襲撃検証結果。同所にて管理保護下知恵(Bestia )ある獣(sapiens)少女個体。一名。失踪確認。同犯等の仕業と目される。現在、失踪少女個体の身元他検査データ等照会中。同犯等襲撃の目的探る。以上。


人類研究所

研究調査局

エーテル研究班A

斎藤主席研究員 他 送る

過日、こちらへ転送された記録データに関しての調査結果が出そろいましたのでお知らせ申し上げます。また、科学捜査研究班:旧特殊技術捜査研究所の見解も含めてのご報告となります。

1.みやま市凪城国立管理教育センター青葉学園敷地内におけるエーテル残滓量測定結果(別紙1)を踏まえて有意なるエーテル変化量を観測いたしました。

2.みやま市凪城国立管理教育センター青葉学園敷地内における戦闘時データ解析結果(別紙2)及び防護服被損解析結果(別紙3)を踏まえて宮中駐屯地所属第三師団保安大隊内一個小隊壊滅事案における被害データとの有意なる一致率(別紙4)を観測いたしました。

3.ご指摘いただいた未知の魔力に関して、現時点においては十分なデータがございませんので推測になりますが、記録データ分析上、発砲された弾丸の質量の逸失を確認いたしましたことから、空間内の座標の移転:ずらし等に関わる現象の応用である可能性が考えられました。なお、こちらに関しましては、更なる精細な研究調査を予定しております。

4.失踪個体に関して、こちらは主に科学捜査研究班の見解となります。来歴(別紙5)保護管理データ(別紙6)は管理局由来のデータとなります。保護時検査結果(別紙7)は人類研究所由来のデータとなります。これらを踏まえての結論。特記事項なし。一般のエーテル因子保持者とデータ上の特異点は判別され得ない。よって、失踪個体と襲撃犯との関連点は、私情による点:肉親友人由来等。に帰結されるのではないかと推測される。

以上

特殊警備局治安課 様 宛


最後の推測はいらんな。それはこちらのすることだ。

特技研の連中ですか?

旧だ。

(……倉村課長、不機嫌そうにしてるな……)

(……ああ、あの人、すぐ口調にでるからな……)

特殊捜査局の連中は当てにならん。

旧ですね。

今もだよ。

はあ。

協力関係にはあるが、信頼はしていない。当てにもならないし、役にも立たない。

そうですか。

そうだ。

……。

当麻。

はい?

お前、調べて来い。

何をでしょう?

失踪個体だよ。

はあ?

分からないのか?あいつらが、たかが身内一人の事で、あそこまで大々的な攻勢を仕掛けて来るはずがない。こっちは三十人殺られてるんだよ。隠密的奪還の手段もあったはずだ。これだけ殺ったら殺られる。向こうも分かっている事だ。戦争だよ。

戦争ですか?

そうだよ。それだけの事をした。それだけの事をしても補填できる鍵である可能性を失踪個体は持っていると考えるのが普通だろう。

課長の考え過ぎなんじゃないですか?それに……。

それに?

身内の情に冷たいのは課長だからでは?

どういう意味だ?

どういう意味とは?

そのままの意味だ。

どういう意味……。というか、そもそも、身内一人の奪還に大規模な攻勢は掛けるはずがないという前提は倉村課長の価値基準からの判断であって、それは課長の性質が身内の情に冷たいからであって、それを相手にも一般化するのはどうかという意味です。もしかしたら、相手はどんな犠牲を負っても身内を助けたいという価値観を持った人物かもしれないし。ですよね?

(……。)

(……。)

当麻。課員が三十名も殉職して怒りに震えている私は身内の情に冷たいというのか?

あ~。いや~。

助け出した相手諸共、自らも皆が壊滅的犠牲を負う事になるかもしれない危険性を孕んでまで実行する程の作戦なのか?それを実行する理由は?

あ~。

もしそんな事をするやつがいるとしたら馬鹿だな。そいつは。当麻課長補佐。

はは。

(……課長補佐。大丈夫かよ。……いつものことだけど。)

(倉村課長にあんな態度とれるの、当麻さんだけだよ……。)

(あれで、本人は悪気ないんだよな~。)

(本人は自分の考えを言ってるつもりなんだろね……。案外、倉村さんと、いい相手なのかもしれないけど……。)

(周りの事も考えてよ……。いつもの事だけど。)

そういう人もいるかもしれないですよねー。

(……。)

(あんたの事だよ……。)

これは業務上の指示だ。分かったな。

分かりました。


特殊捜査局と特殊警備局は仲が悪い。訳ではない。のだが。お互いに不満はあるようだ。まあ、円満な組織など、世間にはないのかもしれないが……。両局とも警察庁内の同じ建物の内にあるから行き来に不便はないのだが必要がなければお互い誰も行き交うこともなかった。その中でも特殊警備局課長補佐の当麻頼人氏はよく見かけた。話したことはほとんどない。挨拶程度だ。

「おはようございます。」

「あ、ども。」

「……。」

「あっ。捜査課長。います?」

「え、はい。いますけど、あそこに。」

「あ、どうも。」

噂では当麻氏は変わり者らしい。

「捜査課長。みやま市の襲撃事件、担当している人って、誰ですかね?」

「当麻課長補佐か。相変わらず突然ですな。」

「そうですか?すみません。」

「青葉学園のですか?」

「そうですね。」

「これで何度目か分かりませんが、捜査情報なら捜査課ではなくて、総合対策課の方に聞いてもらいませんとな。はい。これ、捜査情報開示申請書。」

「また、ですか?」

「また?」

「いや、前、言ったと思いますけど、そういうの面倒くさいんで。省略してくれると助かるんですが。」

「はあ、勘弁して下さい。」

課長。私が。

「ああ。頼むよ。」

「当麻課長補佐。私がご案内します。総合対策課の方に話してみましょう。」

「あ~。助かります。」

三田村雪絵総合捜査課長補佐。彼女が当麻氏の扱いに長けている。

「当麻さんはここで待っていて下さい。先に私が話して来ます。」

……。

「話できました。これに聞きたいことを書いて下さい。今、ここで。お願いします。」

「はい。」

……。

「では。また、ここでお待ち下さい。」

……。

「こちらへどうぞ。」

……。

「当麻課長補佐の知りたい捜査情報はこのファイルにアップされています。今、情報端末を起動させますね。」

「ああ~。助かります。」

「これです。」

……。

「では、これで。」

「うん。」

……。

「三田村君。どうだった?」

「はい。問題ありませんでした。彼が知りたがっていたのは青葉学園の失踪個体のことのようでした。」

「それか……。捜査はうちがするんだけれどなあ……。」

「多分、管理局か研究所に、がせネタでもつかまされたと思ってるんでしょうね。」

「警備局の連中は疑り深いからねえ。いろいろ探られると、うっとうしいんだよなあ。」

「どこも、あんなのにまともな情報なんて渡しませんよ。対策課の人も、またかよって言ってましたし。」

「適当にあしらわされてるのに気づいてるのかねえ?」

「気付いてないんじゃないですか?彼、頭悪そうですし。」

「所謂、脳筋たちだよ。警備局は。」






……






生ける屍

「所々、皮膚の接着が剥がれている。剥がれてはくっつき、動くとまた剥がれている。それが身体全体に至っている。人間のような体付き。黄金色の体色。四足歩行のそれは、元がどのような生物であったのだろうか。崩壊と再生を繰り返し、かろうじて存在が保たれているそれは何の目的で、この世に存在を留めているのだろうか。暗い洞窟の中で、起き上がろうとしては倒れ、また起き上がろうとするそれは、筋と肉と血と臓器と骨を露出させて、うめき声も立てず、腐敗臭もせず、無機質な人工物のような創造性を持っていた。肉と機械との融合体とでも言うのだろうか。生物でも無生物でもなく、人間でも獣でもない。塊。朽ちた英雄。demannumut(デマンヌムトゥス)。」






……






捜査資料A

みやま市凪城国立管理教育センター青葉学園

失踪個体

個体識別番号:SJ103651n

名称:綾音アヤネ 水香ミズカ

性別:女

年齢:14(中等教育課程履修二年次)知能程度2-A+

エーテル個体値:適合有 表現型:T-b 遺伝子型:T-S1-p

居住形態:みやま市凪城管理教育センター保護住居N型B棟380号

血統:父系個体識別番号KF50936a(管理下アクセスコードcQ-5JJ277)母系個体識別番号NY22601v(管理下アクセスコードcQ-5LL182)

来歴:父系血族内に拘束Cランク対象者有り(死亡:個体識別番号KF50927i)。その関係にて招聘。8年前に移住措置。


捜査資料B

個体識別番号KF50927i

XXXX

ミナカタ第二種自治区域内にて、無認可保育所にて保育士として勤務中、特殊捜査局の捜査及び特殊警備局の臨検を受け拘束。人類研究所にて幻惑性自白剤投与による検査後、Cランク者として裁定。3カ月後、検査時の薬剤による副作用型後遺症にて死亡。

個体概要:エーテル適合無 表現型:T-*f 遺伝子型:T-N2-n

「同型接合型……。N2-n」

……。

管理局DBアクセス:コード入力cQ-5JJ277

……

個体識別番号KF50936a

居住地:三舟B地区ばんはく街6-7B

居住形態:夫妻同居

勤務形態:第三種指定労働型

直系親族:祖父母(死亡)父母(死亡)姉(死亡)子(管理教育センター保護)dxl.c124

……

「ぽっ。ぽっ。ぽっ。ぽっ。ぽっ。姪と叔母。TのS1-pとTのN2-n。ふぅん。父親は……。」

……

……

遺伝子型:T-N2-m(-b)

……

「ふむふむふむ。あー。養子か。」

……

「なんで管理センターに記載がないんだ?」

「移住以前のか。」

「管理局指示ではない……。」

……

!!

「姉が無認可保育所の保育士。うんうん。貰い子……、?自白剤の副作用……。あー。対抗性拮抗薬か。ふ~ん。だから、Cランク。ということは……。構成員……か。あー。読めた。」

ガチャン!

「どうしました?」

「帰ります。」

「え……?」

「ども。」



……。



「課長。」

「分かったか。」

「あー。たぶん、なにか特定の力、持ってますよ。あと、意図的に入ってます。こっちに。管理局保護下。黒幕は誰か知らないですけど。多分、誰も気付いてないっすね~。8年間。」

「でかした。相手はその事に承知か……。いや、しかし、それなら何故、意図的に侵入させておいて、再び奪還したんだ?」

「安全……とか?」

「成年。エーテル力の発現か。ならば、特異な魔法行使力を目的とした略取。そうならば敵の攻撃が近いという事だ。」

「戦争……ですか?」

「違う。一方的な蹂躙。これを機に掃討だ。作戦立案を進める。」

「了解っす。」




……




性愛

狂気

暴力



三つの器



仮面

犠牲

あと一つ



……




フウマのもとに水香はいた。水香はすんとしていた。しかし、それは自分の状況の不理解から来たのではなかった。僕たちが到着するまでの間に、フウマから説明があったのか、やけに素直に物分かりが良く、水香は自分が置かれた状況を理解していた。そして、それは彼女の聡明さを物語っていた。

「わかりました。」

水香は一言だけ口にした。それを機に僕たちの前から水香は姿を消した。魔力の覚醒まで、彼女は隔離修行期間に入った。その後の動静を僕とトウヤは知らない。フウマもエレナもそれを機に僕たちの前から姿を消した。今、思えば、フウマもエレナも水香も、こうなることをすべて知っていたのかもしれない。それらを承知で共謀し、僕たちを泳がせ囮として使ったのかもしれない。

「どぅおおおおおおやぁぁぁ!!!!!!」

怒濤怒濤怒濤怒濤怒濤怒濤怒濤怒濤

「だぁららららあああ!!!!!!」

狂瀾狂瀾狂瀾狂瀾狂瀾狂瀾狂瀾狂瀾

トウヤが踏ん張ってくれているが、いつまで保つか。

「すまない。トウヤ。元来、僕の魔力は攻撃には向かないから。」

「知ってらい!!!!おりょよよよ!!!!」

時の魔力は時空を司る。時間と空間。すなわち物質なのだが、僕の魔力はいまだ不完全な状態だった。時の魔導師ケイオスが時空魔法の限界を超えて異世界への扉を開いた反動により、彼の身に有していた時の魔力は、彼の現し身と共に別世界へとばらばらに砕け散ってしまっている。それらを回収していない現在の僕にできることは多くはない。しかし、いざという時は、トウヤと二人、この場を転移することくらいはできる。その魔力を温存しておかなければならない。

「怒怒怒怒怒怒怒!!!!!!!!!」

僕とトウヤが潜伏していた隠れ家には、治安部隊が押し寄せて来ていた。突然の砲撃から始まり、今は中距離から弾幕の嵐が吹き荒れている。

「四方八方。から。攻撃。されてる。ぞ!!!!」

「おそらく、この間に敵は突入する機会を伺っているんだろう。」

「惡惡惡惡惡惡!!!どうする!!!早いとこ、逃げるか!!!!押押押押押!!!」

「それがさっきから試しているんだけど、できないんだ。」

「は?なにが。」

「転移。」

「まぢ?」

「まぢ。」

……。

……。

「じゃあ、オレたちはどうなるんだ?」

「う~ん。詰んだかも。」

嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼!!!!!!!!!

弾幕が止んだ。突入は近い。

「この辺一帯の時空間に障壁のようなものが展開されてるみたいなんだよ。」

「はあ~?結界ってことか……。そんなのできるなんて聞いてないぞ。」

「僕もだよ。」

では死ね。

dadadadadadadada




……




ああああああああ。

黒。暗。眩。

ああああああああ。

闇。蔵。暮。

ああああああああ。

玄。喰。昏。

あともう少し

あともう少し

demannumut(デマンヌムトゥス)

できあがる





……




こん。コン。魂。

「失礼します。」

「久しぶりですね。」

どさっ。

「先生に贈り物(プレゼント)です。」

「あら。できあがったのですか?」

「はい。つい先ほど。」

げしっ。

「汚いですね。」

「汚いですよ。」

「そこが良いですね。」

「はい。本当に。」

「では、行きましょう。付いて来て下さい。」

「はい。」




……




こつ。こつ。ぽつん。




……





「静かですね。」

「はい。」

こつ。こつ。ぽつん。





……





あああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああ





……






どさっ。

「先生。でも、これからどうするんです?」

「あなたはここで見ていて下さいね。」

「はい。」

「いただきます。」

……。

ばくん。

ばり。ばり。

むしゃ。むしゃ。

ばり。ばり。

むしゃ。むしゃ。

あああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああばりばくん。ああああばり。ああああああむしゃ。ああああばくり。ばり。ああああああむしゃ。むしゃ。ごり。ああああああごり。ごり。ばくり。むしゃ。ああむしゃ。むしゃ。ごり。ごり。あごり。

どさ。べちゃ。

ばくり。ばくり。ばくり。

むしゃ。むしゃ。むしゃ。

ごり。ごり。ごり。

ばくり。ばくり。ばくり。

むしゃ。むしゃ。むしゃ。

ごり。ごり。ごり。

「待って。」

「だめですよ。先輩。開けちゃ。てっ、えっ。なに。これ。ぐろ。」

黒い男はいなかった。





……





「課長。生きてますか?」

「死んではいない。」

「あっ。つながった。」

「敵はどこだ?」

「う~ん。課長の近くに新しく一体。で、こっちに二体。交戦中です。」

「お前も闘え。」

ぶつ。

「あっ。切られた。」




……。



「おい。生きてるか。」

「ああ。大丈夫だよ。」

突然起きた地面と建物の崩落。その後の大鉄砲水。どうやら僕たちは九死に一生を得たようだ。

「あいつらの仕業か。」

「たぶん。そうだろうな。」

辺りはぐしゃぐしゃだ。が、相手も死んではいないだろう。

「敵増援確認。だが、なにも変わらぬ。」

「雑魚は引っ込んでいろ。こいつは俺が殺す。必ず。」

「はあ。ふざけんな。お前こそ引っ込んでろや!!」

「カオスだな……。」

僕。トウヤ。フウマ。敵。瓦礫の中で四人が一堂に会する羽目になってしまった。



……




「エレナさん。あの人たち、大丈夫でしょうか?」

「うん。多分、大丈夫。こっちはこっちで、心配した方がいい。」

「敵二名発見。滅殺せよ!!」

「うん?女の子……?」




……




「先輩。ここやばいですって。」

「桜沢は引き返せ。」

「先生。あれは……。どうします?」

「あっ…、。だめっ。もう少し、なのぉ…。」

ばり。ばり。ばり。ごくん。

その日、私たちは吉澤さんの住むマンションに向かった。そこで目にしたもの。それはおそらく死体の入っているだろう収納袋をカートで運ぶ女性だった。私と桜沢は密かに後を追った。

「嫌な予感はしていた。やはり、その女性は吉澤さんの部屋を訪ねて扉を開けた。私たちは様子を窺いながら尾行した。」

部屋の奥はエレベーターで地下へとつながっていた。その先には長いらせん階段が降りていた。

「こつ。こつ。足音。ぽつん。水滴の垂れる音。」

私たちは先へと進んだ。

「嫌な予感は続いていた。」

ああああああああああああああああああああああ。

「どこかで聞いたような叫び声。」

怨霊のような。

「それは」公園で「襲われた」時の「呪い」の「叫び声」だった。

ミイラ。「女神の木乃伊。」狂姫サキュトス。

「収納袋の中身」それは「腐乱死体」ではない。「かつての」英雄の「なれの果て」そう「それは」

demannumut(デマンヌムトゥス)

三つめの鍵は「絶望」。

ぶり。ぶり。はあ~。ごちそうさま。





……






川の氾濫による水たまりがあちらこちらにある。その水が少量の砥粒を含み水刃となって敵を襲う。

「皆さん。適性魔法使いは地盤に変化をもたらすようですから、足場の上に立って戦って下さい。あと、水の刃ですが基本無視でいいです。新式特殊防護衣と強化装甲を破壊できる強度はありません。ただ柔い部分は各自、身体強化及び回帰能力で補って下さい。」

びゅっ。

「おっと。」

「あなたは戦わないんですか?」

「君、女の子でしょ。」

「子どもだからって侮ると痛い目見ますよ。」

びゅっ。

「うん。それブラフ。本当の狙いはこっちでしょ。」

「はあっ!!!」

どぐわぐしゃぐしゃぐしゃぐしゃ。

「霧……。厄介だねぇ。」

「粉骨砕身。私の拳はこっち。」

「う~ん。霧の中で反響を利用している。」

びゅっん。

「よっと。」

どぐわしやしゃ!!

「霧で視界を塞ぎ、反響で攪乱。近距離と遠距離の攻撃。あと……。」

がらがらがらがら。

「足場も置かせない。良くできた連携だな。これはちょっと勝てないかも。」





……





「おらおらおらおらおらあああ!!!」

「ぬるい。」

どかっあ。

「邪魔だ!!どけっ!!」

「遅い。」

どごっ!!

「お前は戦わないのか。」

「うん。今の僕じゃあ勝てないから。」

それに魔力も使えない。トウヤとフウマは魔力を用いて戦っている。魔力切れでもない。なぜ……。

がらがらがらがら。

「死ね!!」

「おらあ!!!」

トウヤとフウマ。二人とも魔力による身体強化をしている。

「拙いな。」

どかっ。ばきっ。

純粋な戦闘術では相手の方が遥かに高い。

「邪魔をするなあ!!」

「おい!待て!」

ギュオオオオオオ!!!!!!!

「仲間割れか。」

広範囲魔力攻撃。風の魔導師の魔法が瓦礫を巻き込み吹き飛ばしていた。

ドドドドド!!ドドドドド!!ドドドドド!!

「オレも巻き込みやがって!!」

「トウヤ待て!!」

「炎壁!!」

トウヤが残った魔力を振り絞る。それは炎の壁を作った。

「まずい!!」

一方でフウマの魔力が辺りに突風を引き起こしていた。

ごおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!

それらは火炎の上昇気流と横風が合わさり、突然の渦を巻いた。

「火炎旋風だ!!」

炎の竜巻。辺りは火柱が巻き起こり襲う。それは火炎の竜が天へ昇る。そのような光景だった。





……





「だから、だめって言ったじゃないですか。先輩。」

気付いた時には拘束されていた。

「桜沢。おまえ。」

「美華さんもですよ。」

「あら、いいじゃない。気持ち良かったから。」

「なにが起きているんだ……?」

両腕、両脚はイスに拘束されて両手は後ろで縛られている。目の前には桜沢と吉澤さん。そしてもう一人の女性。よく見ると桜沢は拳銃を手にしていた。

「おまえたち、ぐるだったのか。」

「正解~。ぴんぽんぴんぽ~ん。実は最初から全部知ってました~。サプラ~イズ。」

「ふざけるな!!ちゃんと説明しろよ。」

「説明って、なんのですかぁ?」

「ふざけるな!!」

「あはっ。せんぱいって語彙なさすぎ。」

桜沢さん。

「は?なに。」

あまりふざけるのもどうかと思いますよ。

「は?なら、あんたがやれば。」

そうおっしゃるのなら。先生?

「う~ん。いいんじゃない。どうでも。っていうか、わたし、気持ち良すぎてどうでもいいのよぉ。はぁ。もう何回もイってるんだからぁ。まだ、止まらなくてぇ。あっ、また、いくっ。」

では。

「個体間装置機構(デバイスシステム)限定解除。」

同期試行。

……

……

「同期完了。」

仮想間保存機構接続開始。

……

……

「接続完了。」

アップロード開始します。

……

……

……





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