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眠り病

作者: 月樹

このお話に出てくる病気は完全に架空のお話です。

なので、あまり深く考えずにお読みください。


 私は生まれたばかりの時、全然寝ない赤ちゃんだった。


 あまりにも寝ずに、ずっと起きているので、母が育児ノイローゼになったほど…。


 何かおかしな病気なのではないかと、母は様々な病院に私を連れて行った。


 あまりにも病院にばかり行くので、近所の人に虐待を疑われたほど…。


 母の心配は見事当たっていた。


 私は世にも珍しい『眠り病』という病だった。


 生まれた時は全然眠らずに、どんどん年齢と共に睡眠時間が増えていく。


 40代に入ると普通の人と一緒になり、それから逆にどんどん眠りの時間が長くなって言って、70を超える頃には、1時間くらいしか起きられなくなる病気だ。


 でも、若いうちは逆に普通の人よりも起きている時間が長いので、特に困らなかった。

 小さい頃は寝なくて母を困らせはしたけれど…。


 普通に結婚して、普通に子供も生まれた。


 今は50代に入り、起きていられる時間が6時間程になった。

 仕事ももう短時間しか出来ないので、家で内職をしている。


 そのために若くて起きている時間が長いうちに夜勤もしたので、貯金はある。


 子供達も、もう就職しているので、金銭面は問題ないだろう。


 ただ、旦那さんとゆっくり楽しむ時間が持てなかった。

 若いうちは、働き詰めで、やっと子供達が巣立ったと思ったら、今度は私が寝てばかりで一緒に旅行に行くことも出来ない…。


 そう思っていたら、旦那さんが早期退職をして、キャンピングカーを買った。


「君との時間はまだ十分にある。これからはこの車で日本全国を周ろう。なに、キャンピングカーだから君は眠たくなったら寝ればいい。その間に僕が運転して、君が見たい場所に連れて行ってあげるから」


 それからは色んな所に出掛けた。

 北海道で流氷も見た。仙台で牛タンを食べた。日光で見ざる言わざる聞かざるを見た。

 草津温泉につかり、東京スカイツリーにも登った。

 名古屋で味噌カツを食べた後、あなたが「何だか、胃もたれする。食べ過ぎたかな〜?」と言った。

 念の為に、胃薬をもらうかと病院に言ったら、そのまま入院になった。


 こんな時でも私は、あなたの看病をしてあげられない。

 気がつけば、隣のベッドで寝てしまっている。

 初めて本当に、こんな病気嫌だと思った。


 その後、旦那さんは手術して無事退院した。

 またこんな事が起こると不安だし、もう十分旅は満喫したので我が家に帰宅した。


「「やっぱり家はいい」」


 二人して顔を見合わせて笑った。



 70を過ぎ、もう起きていられる時間は1時間を切った。

 私が起きた時、必ず旦那さんは私の側にいて手を握っていてくれる。


 私が「どうして?」と聞くと、


「君は優しいから、起きる前に必ず合図を送ってくれるんだ」と言った。



 最近、夢の中で旦那さんとお話することが増えた。


 出会った頃のこと。私が病気の話をして別れを切り出した時のこと。それでもプロポーズしてくれた時のこと。長男が生まれ、2人して嬉しくて大泣きした時のこと。長女が生まれ、何て名前にするかでケンカした時のこと…。


 もうすぐ目が覚めそうだ…。


『あなた、もうすぐ目が覚めそうよ』


『分かった。そろそろ準備するね』



 今日も私は、あなたの手の温もりで目を覚ます。

お読みいただきありがとうございます。


誤字脱字報告ありがとうございます。





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