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鬼女のあやかし殺し  作者: 大和煮の甘辛炒め
3/4

色街へ

 「ところで色街ってなんなんだ?」

伊織が隣を歩く艶狐に尋ねる。

「はい、『桃源郷』の外れにある行楽施設、もとい男衆の憩いの場、らしいですなぁ」

「それって……」

「別に危ないとこや無いですから、安心してくださいね」

艶狐が伊織の腕に自分の腕を絡ませて笑いかける。

「そうなんだ……」

「まーた男を取っ替え引っ替えしてんのか?艶狐」

先頭を歩く澪鬼が振り返って艶狐を煽る。

艶狐がムッとして言い返す。

「人聞きの悪いこと言わんでください。幸の薄い女やと思っといてくださいね」

また伊織に笑いかける。

「ああ、ははは……」

『なんか気まずいなぁ。決着つけるとか言ってたし血で血を洗う抗争とかあったのか?仲介なんか絶対無理だろうし』

伊織はだんだん心配になってきた。


⭐⭐⭐

「……決着って」

色街の中央にある広場のベンチに座った伊織が苦笑いする。

目の前では澪鬼と艶狐が杯をぐびぐび呷っている。

「酒飲み対決?」

「プハーっ!人間さまもやります?」

艶狐が酒を持って近づいてくる。

「いえ、結構です!」

伊織が慌てて遠慮する。

「じゃあ女の子に何か持ってこさせますわね。(さい)!」

艶狐が呼ぶと恐らく猫又であろう女の子が走ってきた。

「はいはーい、艶狐姐さん!この方に?」

「そう、失礼の無いようにね」

「もっちろーん!少々お待ちくださーい」

蔡が何処かへ走り去る。

「おい艶狐!勝負はまだ終わって無いぞ!それとももう限界なのか?」

澪鬼がまた一つ杯をあける。

艶狐のしっぽがピクピク動く。

「言わせておけば……!」

艶狐が負けじと酒を呷る。

野次馬が続々と集まってくる。

「あんだけ飲んで大丈夫かよ……」

伊織がなりふり構わず酒をのみ続ける二人を心配そうに眺める。

「お待たせしました人間さま」

蔡が皿を持って隣に座る。

「ありがとう……って、これ唐揚げだよな!?」

皿の上で琥珀色に輝く揚げ物に伊織は思わず取り乱す。

「焼き鳥以外に唐揚げも存在しているなんて……はっ、君レモンをかけていないだろうな」

「レモン?私たちは普段柚子山椒で食べていますけど……」

蔡が首を傾げながら唐揚げを食べる。

「んー、美味しいー!」

『客に出すもの食うのはどうかと思うが……いやそんなことはどうでも良い!今はこの唐揚げを食らうことだけを考えろ!』

伊織が唐揚げを口に放り込む。

「ウマーッ!」

伊織の喜びの絶叫が色街に響き渡る。

衆目が伊織に注がれる。

「いきなりなんだ、勝負の邪魔ムグゥ!」

「お口に合ったようでハムゥ!」

澪鬼と艶狐の口に唐揚げが押し込まれる。

「酒なんか飲んでる場合か!」

伊織が蔡のほうを向く。

「この唐揚げを作ったのは?」

「え、えーと艶狐姐さんの店の子達です」

「いずれ伺わせていただきます」

伊織が艶狐に伝える。

「そ、そう。お待ちしとります」

艶狐がうろたえる。

「そんなに唐揚げ好きなのか?」

澪鬼が唐揚げをつまみながら尋ねる。

「いや、普通。これがあんまり美味しいから興奮したんだ」

伊織も唐揚げを口に放りながら答える。

「あんた達、ずいぶん探したんだよ。色街にいたのかい」

ヒメ婆さんがこちらに歩いてくる。

「あら!ヒメ婆さまのお連れさんでしたの?」

艶狐が驚く。

「艶狐、酒はほどほどにね、澪鬼もね。伊織、あの方がお呼びだ」

ヒメ婆さんがいつになく真剣な表情になる。

「あの方?」

伊織が尋ねる。

澪鬼と艶狐が驚愕している。

野次馬がざわつき、蔡も唖然としている。

「ぬ、濡羅吏(ぬらり)様が?」

澪鬼の尋ねにヒメ婆さんか頷く。

「すぐに行くよ」

「わ、分かりました」

伊織がヒメ婆さんの後ろにつく。

澪鬼もついていこうとするが、ヒメ婆さんに制止される。

「では、飲み比べの続きを始めましょか」

艶狐が杯を持ち上げる。

「臨むところだ!」

澪鬼も杯を持ち上げる。


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