26.聞いてもいいの?
覚悟を決めた私に何を感じたのか。メイベルはべったり離れなくなった。並んで一緒に座り、眠くなったら同じベッドに入る。まるで本当の姉妹みたい。まだ五歳の私はメイベルの腕に包まれて、柔らかな胸に頬をすり寄せた。
「おやすみ、グロリア」
微笑むメイベルの表情は柔らかく、不安を感じなかった。こんな細やかな触れ合いで、満足してくれるなら。寄り添ってあげたいと思った。この場所、将来的にはにぃにの指定席になるけどね。今だけは私の独占席だよ。
「メイベル、大好きだよ」
お休みの代わりに、彼女を好きだと伝えた。嬉しそうに「私も」と返してくれたメイベルより早く、私は寝息を立てる。明日はメイベルの部屋を作るのだ。忙しくなる予感がした。
起きてすぐ、ママに呼ばれた。大急ぎで着替えて、髪をリボンで結ぶ。編んでいる時間はないみたい。メイベルもくるくると丸めて、髪飾りで留めた。食堂へ駆け込めば、すでに朝食を食べているパパとママ。私達の前にも、料理が並んだ。朝はシンプルめに卵料理とスープ、サラダにパン。
食べ始めたところへ、にぃにが飛び込んだ。髪が跳ねてるよ。笑いながら指さすと、ぺたぺたと押さえつける。でもすぐに飛び上がった。メイベルが席を立ち、にぃにの寝癖を直す。こうしてみると、本当にお似合いかも。あの頃は想像もしなかったな。
「キース。メイベルのお部屋を整えるから、付き合いなさい」
ママはすでに呼び捨てだった。この家で暮らすなら、もう義娘として扱うと笑う。私の部屋を直した時と同じ、壁紙から絨毯や家具に至るまで。あれこれと入れ替えの手筈が整えられた。
「元からあるお部屋ではダメなの?」
ママに尋ねれば、あっさりと「だめよ」と返される。スープを口に運ぶスプーンが傾いて、後ろから乳母のエイミーが手を差し伸べた。お陰で膝に溢さなくて済んだわ。お礼を言う間に、侍女ローナが別の食器を用意する。さっきより小さめのスプーンだった。
こっちの方が持ちやすい。再び食事を始めた私は、終わるなり小脇に抱っこされた。ママは私を荷物扱いしてるのかしら。食べた直後に傾けたら危ないのよ。
壁紙屋さんに呼ばれたにぃにとメイベルは、大急ぎで二階へ戻る。にぃにの部屋の隣をメイベルの部屋にするんですって。夫婦で一緒に過ごす居間になる予定なので、一緒に家具も選ぶのだとか。そんな二人を見送った私に、ママが微笑みかける。
「聞きたいこと、あるんでしょう?」
「……聞いてもいいの?」
「もちろんよ」
メイベルのことがあって、後回しにしたけど。ママやパパ、お祖父様が行った復讐の中身が知りたいの。詳しく、何が起きてどう処断したのか。前国王夫妻のその後、貴族達の動向……私は何も知らないから。
「お膝にいらっしゃい」
エイミーは私を抱えて、ママの膝まで運んだ。その後はお出かけするらしく、一礼して出て行く。パパは書類を抱えて戻ってきた。
「一緒にいていいか」
「お好きになさって」
パパは大量の書類を食堂の机に積み上げ、後ろから執事に運ばせた文房具を広げた。寂しがり屋なところ、変わってないなぁ。




