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DIVE68「努力の成果」

 俺たちはギルドハウスに集まって、それぞれの調査結果を四十万に報告することにした。

 「RISK」のことを知ったあろゑも、もはや部外者とは言えず、やむを得ずに連れてきた。


「そうか。やはりIDにも『RISK』が現れたか」


「よりにもよって大岩山(ダヤンシャン)かよ! 大変だったな」


「あろゑのおかげで助かったんだ。ありがとな」


「そんな、アタシはただセオリー通りに指示を出して戦っただけだから」


 あろゑは照れながら頬をかいた。彼女がいなければパーティが崩壊していたことは間違いない。


「俺たちの報告はこんなところかな。02の方はどうだったんだ?」


「当然のことと言えるかもしれないが、人間陣営側のマップにも『RISK』は現れたよ。スクショと座標は送ってあるよな?」


「ああ、ばっちり受け取っているよ」


 四十万はそう言うと、一枚のウインドウを開いた。そこには、大量のマークが書き込まれたワールドマップの画像が表示されている。


「これを見てほしい。君たちが頑張って調査してくれた『RISK』の出現座標をマッピングしたものだ」


「この○とか×っていうのは?」


「○はネームドモブの出現位置、×は雑魚敵の出現位置を示している」


 全体を俯瞰して見た限り、まんべんなく散らばっているように見える。特にこれといった出現法則は見当たらないかに見えた。

 そのとき、リリーが小さく手を挙げた。


「あれ? ちょっと待ってください」


「どした、リリー?」


「これ、もしかして……」


「リリーくんは気がついたみたいだね」


「焦らさないで、早く教えてくれ」


 四十万はリリーに向かって目配せし、会話の主導権を渡した。

 リリーはこくりとうなずくと、口を開いた。


「このバッテンをよーく見ると、ある地点に向かって進むにつれて密度がだんだん濃くなっていってるんです」


「あっ、本当だ」


 たしかにリリーが言う通りだった。注意して見なければ分からない程度の差だが、北と南で密度が違う。


「そして、マルにも同じようなことが言えます」


 マルはマップの中央から南にかけて多く分布しており、バッテンと同様、ある地点に向かうほど密度が濃くなっている。


「その事実から導き出される結論はこうだ」


 四十万がぱちんと指を鳴らすと、マルが一番密集している地点に黒い点が出現した。


「ここに敵の本拠地がある」


 俺はごくりとつばを飲み込んだ。正体が見えない敵のアジトをついに突き止めたかもしれないと思うと、そわそわが止まらない。


「それじゃ、いますぐここに向かおう!」


「ああ。敵を叩くなら出来るだけ早い方がいい」


 椅子から立ち上がった俺たちを、あろゑは慌てて制止した。


「ちょっと待った!」


「なんだよ?」


「ハブらないで! アタシにも戦わせてよ!」


「あ、そうか。あろゑは〈ブレイク〉を未習得だったっけ」


「なに、その〈ブレイク〉って」


「それは私から説明しよう」


 四十万からバグとその対処法について一通り説明を受けたあろゑは、目を爛々と輝かせた。


「システム外スキル!? めちゃくちゃカッコいいじゃんそれ! 早くインストールさせて!」


「そんなにがっつかなくても、そうするつもりだよ」


 四十万はやれやれと肩をすくめると、インベントリから〈ブレイク〉のディスクを取り出してあろゑに手渡した。

 それを受け取るが早いか、あろゑは即座にディスクを起動した。


「ぐうっ……はぁ……」


 アルミラージのアバターの腹部辺りにディスクが飲み込まれていく。やがてインストールを終えると、あろゑはふふんと胸を張った。


「これでやつらに攻撃が通るようになった、ってわけね」


「ああ。ただし、くれぐれも注意して戦うんだぞ」


「分かってるよ。初っ端にあんなでかい『RISK』を見せられたら嫌でもそうなるって」


 これであろゑも戦力として数えることができる。

 それから俺たちは話し合って、パーティを二つに分けることにした。攻守ともにバランスの良いカヲル・アイ・02チームと、遊撃部隊の役割を果たすリリー・あろゑ・四十万チームだ。


「それじゃ、現地に向かうぞ」


 緊張の面持ちで互いの顔を見合わせると、俺たちはギルドハウスを旅立った。

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