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DIVE56「次なる目標」

 後日改めてギルドハウスに集まった俺たちは、先日の出来事について話し合うことにした。


 俺たちはアイの不可思議な能力、マップ外エリアの詳細、そして巨大スライムたちとの戦いについて四十万に伝えた。

 四十万はうーんと唸ったあと、人差し指を立てた。


「じゃあ、一つずつ整理していこうか。まずアイくんだ。マップ外エリアがあること、アイくんは分かるのかい?」


 四十万にうかがわれ、アイはこくりとうなずいた。


「なぜかは、分からない。」


「理屈は分からないけど存在は分かる、って感じか」


「うん。」


 アイの謎めいた出自からすれば、マップ外エリアという規格外のものに対して、干渉する能力を持っていてもおかしくはないだろう。


「どうやらアイくんはバグと深い関係にあるようだね。その辺りについて、なにか自分で知っていることはないかい?」


「何も、分からない……。ごめんなさい。」


「いや、いいんだ。気にしないでくれ。試しに聞いただけだからね」


 申し訳なさそうにしているアイの肩に手を置くと、四十万は笑顔で軽く叩いた。


 アイが何者なのかは相変わらず分からないままだが、俺たちの大切な仲間であることに変わりはない。

 それにバグの出所を追っていけば、アイのその能力についても追い追い分かってくることがあるだろう。


「では次に、没入者(シンカー)についてだ。我々の調査の結果、巨大スライムに襲われた全員が未進化種族のLv.1に退化していることが判明した」


「やっぱりそうだったか」


「みんなスライムとかゴブリンばっかりでしたもんね」


 もしあの巨大スライムにやられていたら、俺もスライムに逆戻りしていたということになる。ぞっとしない話だった。


「その上で、没入者(シンカー)たちがひとところに集められていたというのは妙な話だね」


「妙?」


「だって、HPが0になったら普通はホームタウンにリスポーンするだろう? しかし『RISK』によってリスポーン先が変更され、マップ外エリアに飛ばされたわけだ」


「うん」


「ただ彼らを退化させたいだけなら、倒したあと一か所に留めておく必要はないんじゃないか?」


 確かに、事が済んだなら、マップ外エリアにプレイヤーを居座らせておく必要はない。どこぞのマップに放り出したっていいわけだ。

 ところが今回の事件では、わざわざ巨大スライムを巡回警備させるという手間をかけてまで、あのエリアにプレイヤーを留めようとしていた。


「それともう一つ。魔物は通常、遭遇した敵を倒せという目的だけがインプットされている。『プレイヤーを一か所に集めろ』なんてプログラムは入っていないはずなんだ」


「ただバグったにしては、ずいぶん手の込んだことしやがるな」


「各地に無作為に出現する『RISK』たちの挙動や目的が一致しているのは、おかしいと思わないかい?」


 マップ外エリアに集められたプレイヤーたち。

 自然にバグったにしては統率が取れ過ぎている「RISK」の動き。


 それらの要素をつなぎ合わせて想像するのは、そう難しいことではない。


「まるで、誰かが『RISK』を使って、プレイヤーを集めようとしてるみたいですね……?」


「まさか、この一連の事件に黒幕がいるっていうのかよ?」


「ああ。私はそうにらんでいる」


 仮にそれが本当のことだとすれば、一気に事態が進展するだろう。闇雲にバグや「RISK」を探すフェーズから、元凶を探るフェーズにステップアップできる。


「ただ正直、現状ではこれ以上のことは分からない。そこで、もっと『RISK』のデータが欲しい。君たちは各地に出向いて、『RISK』を狩ってくれないか」


「『RISK』を退治すれば、被害の防止にもなりますもんね!」


「そういうことだ。頼めるかな?」


「任せてください! ね、カヲルくん! 02くん!」


「ああ、もちろんだ」


「おう」


 チルルたち兄妹を助けて以来、リリーはやる気に満ちあふれている。彼らの出会いに相当感激したと見える。

 そのやる気に感化されて、俺もなんだかエネルギーが湧いてくるようだった。

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