DIVE51「思わぬ進展」
俺たちは人間陣営とモンスター陣営の中立地帯であるクドマ平野に来ている。これから没入者たちの居所について調査に向かうためだ。
お互いに戦争しているという設定だけあって、崩れたがれきや放置されたボロボロの兵舎、そして塹壕など、戦火の痛々しい痕跡が至る所に見受けられる。
荒れ地ということもあってか、幸いなことに出現する魔物は少なく、出現箇所もまばらなため、戦闘を避けて歩くことができている。
気になった場所をくまなく調査するにはうってつけの状態だ。
「アイも連れてきて良かったのか?」
「『調査しに行く』とだけ伝えてあるから大丈夫だろ」
「そういうもんかねぇ。まあ、いいけどさ」
02は肩をすくめた。
どうせ調べるなら、人数は多い方がいい。それに、不思議な経歴を持つアイなら、俺たちが気づかない何かに気づいてくれるかもしれない。
そんな思いで俺はアイを連れてきたのだった。
俺と02が落ち着いた雰囲気で歩を進める一方、俺たちの後ろではリリーが元気よくアイと会話している。
「あ、アイちゃん!!」
「なに。」
「好きな食べ物はなんですか!?」
「クッキー。」
「分かりました!!」
さっきからずっとこの調子だ。質問攻めにされるアイの身にもなってやれと思うのだが、アイの方は特に気にしていなさそうなので、そのままにしている。
それにしてもリリーのやつ、アイがいるとどうにも調子が狂うらしい。もしかしてアイのことが苦手なのか? 調査が終わったら後で聞いてみようか。
そんな疑問を抱きながら、俺は指定された座標の近くまで向かっていった。
「この辺みたいだな」
俺たちは四十万の言っていた場所に到着すると、立ち止まった。
ちょうどこの頭上に没入者たちが存在することになっているらしい。
「何もないな……」
02と俺は周囲を見渡したが、特に変わったところは見受けられなかった。
俺は思考をまとめながら口を開く。
「『RISK』にやられてそこに飛んだんだとすると、やっぱりそいつらが関係している可能性が高いよな」
「じゃあさ、いったんわざとやられてみるか?」
「いや、リスクが高すぎる。やられた後、どうなるか分からないんだぞ」
「そうだよなぁ……」
俺たちが真剣に議論を交わしていたそのとき、横に立っていたアイがふと歩き出した。
「どこに行くんですか、アイちゃん!?」
アイはしばらく歩いた後、ある地点でぴたりと立ち止まった。
「ここに何かあるんですか?」
リリーが顔をのぞき込んで呼びかけるも、アイはじっと虚空を見つめたまま動かない。
それに気がついた俺と02がアイの下へ歩み寄ると、やがて彼女は右腕を斜め上にすっと挙げた。
「あった。」
「あったって、何が?」
「入口。」
刹那、アイの手から放たれたノイズが飛散し、何もないはずの空間にひびが入った。
そうして出来た裂け目が広がり、大きな穴を形作ると、その中に白黒の渦が巻いているのが露わになった。
「アイ、お前いったい……」
「マップ外、入れるよ。」
アイは腕を下ろすと、相変わらずの無表情で俺たちの顔を見回した。まるで、俺たちがこの空間を目指しているのが最初から分かっていたかのように。
仕組みはともかくとして、アイの主張が正しければ、この穴からマップ外エリアに行くことができるということらしい。
「こんなところ、入って大丈夫なんでしょうか……」
「でも、もしこの穴が没入者たちのいるエリアにつながっているとしたら、大きな手がかりになると思わないか?」
「俺もそれには同意だな。普通に探してたんじゃ、たぶん一生かかってもたどり着けないと思う」
「うう……分かりましたよ。二人が行くって言うなら私も行きますよ!」
リリーは半ばやけくそ気味にそう言うと、ぐっと唇を結んだ。
そして穴を開けた張本人のアイはというと、言わずもがな、穴の前で待機している。いつでもオーケーといった様子だ。
「中では何が起こるか分からない。気を引き締めていくぞ」
「はい!」
「おう!」
俺たち四人は互いにうなずきあうと、俺を先頭にして渦の中に飛び込んだ。
その途端、脳みそがぐわんぐわんと揺れるような不快感と、独特の浮遊感が俺を襲う。テレポートのときと似ているが少し違う、嫌な感覚だった。




