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DIVE47「祝祭大洞レスティバ その1」

 再び目を開いたとき、そこにあったのは予想とはだいぶ異なる光景だった。


「な、なんだこれ!?」


 洞窟内全体が祭りにちなんだアイテムで彩られた、独特の空間がそこにはあった。


 壁一面に色とりどりのちょうちんが飾られ、通路の入口と出口には白いしめ縄が垂れ下がっている。

 通路を通り抜けて小部屋に入ると、一際大きな赤いちょうちんが天井から室内を照らしているのが見えた。


「うわぁ、きれいですね! スクショ取っちゃおうかな」


「これ、全部ゴブリンたちが飾り付けたって設定なのか?」


「そうなんじゃないか?」


「マジかよ。センス良すぎだろ」


 そのきらびやかな風景に驚きながら、俺たちは洞窟内を進んでいく。お祭りムードのダンジョンっていうのは、数あるゲームの中でもずいぶん珍しいんじゃないだろうか。


 すると、早速ゴブリンたちが現れた。青い法被を着ており、頭にはねじりハチマキをつけている。その手には、棍棒の代わりに太鼓のバチが握られている。

 レベルは8とそれほど高くない。おそらく、「The Fang」初心者でもイベントを楽しめるように、という運営の粋な配慮だろう。


 リリーはそのゴブリンの群れを見ると、両手を合わせながら喜んだ。


「うわぁ、可愛い!」


「可愛いか……?」


「みんなお揃いで可愛いじゃないですか~」


 リリーは「可愛い」を連呼しながら、矢を射ってゴブリンたちをぶっ倒していく。それを見ているとちょっとサイコパスな感じがして、俺はぶるっと体を震わせた。


 道中、出てくるのは弱い敵ばかりで、取り立てて言うようなことはなかった。

 強いて言えば、みんなお祭り用の衣装に着替えていたということくらいか。スライムのハチマキ姿は結構可愛かった。


 鮮やかに飾り付けられた洞窟をスムーズに進んでいくと、やがて俺たちは白いモヤの前にたどり着いた。


「もしかして、ボスもお祭り仕様だったりするのか?」


「多分そうなんだろうな」


「手が込んでますねぇ。いいイベントです」


 俺たちはそんな会話を交わしながら、白いモヤをくぐり抜けた。


 そこにいたのは、なんと大きなお神輿を担いだゴブリンたちだった。


「ワッショイ! ワッショイ!」


 ゴブリンたちは掛け声を出しながらこちらに向かってゆっくりと近づいてくる。02はこの空気感に耐えきれなくなったようで、ついに吹き出した。


「ぷっ! あはは! マジか!」


「えっ、これと戦うんですか??」


「俺、お神輿と戦うの初めてかもしれない」


「俺もだわ! というかみんなそうだろ! あっはっは!」


 俺は奇妙な雰囲気に若干のやりづらさを感じながら、ダイビングスラッシュでお神輿に攻撃を始めた。次いで、リリーがミールストームを設置する。

 するとゴブリンたちはお神輿を上手く使って体当たりしてきた。俺はそれを盾で受け止めながら、攻撃を入れていく。


「重量感ある攻撃だなぁ」


「全く、罰当たりですね」


「罰当たりとかいうレベルはとっくに超えてるだろ……」


 そんな風に会話していたとき、ゴブリンたちは急にその動きを早めた。何か来ると思った俺は、〈粘着〉で地面に張り付いた。

 刹那、突進してきたお神輿が俺に正面衝突する。


「ぐぅっ……!」


 俺は強い衝撃を食らってよろけた。大打撃というほどではないが、思っていたよりはダメージが大きかった。さすがジャパニーズオミコシ、その攻撃力は侮れない。


「突進攻撃、少し痛いから、いちおう気をつけとけ」


「完全にお神輿の使い方を間違えてるんだよなぁ」


 02のツッコミも入りつつ、俺たちは攻撃を継続していく。

 やがてHPバーを削り切ると、持ち手のゴブリンたちは力尽きて消滅した。後に残ったのは、彼らが担いでいたお神輿だけだった。


「これは残るのかよ!」


「『取り返してください』って言ってたんだから、壊しちゃダメだろ」


「あ、そっか。そういうことね」


 02は合点がいったようで、うんうんとうなずいた。

 一方、リリーはお神輿が気になるらしく、その周りをぐるぐると回りながら観察している。


「それにしても、よく出来てますねぇこのお神輿」


「もしかして、プレイヤーも担げたりは……あ、無理だった」


「運営に言えば実装してくれるかもな」


 俺たちはお神輿の周りで少し談笑した後、次のエリアに向かった。

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