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DIVE4「初めてのクエスト受注」

 アムナックに着くまでにそう時間はかからなかった。

 しっかりとした城壁に囲まれたその街は、多種多様なモンスターでごった返していた。


「さて、何をしようかな……」


 アムナックに入った途端、ミッションが更新されたという通知が入った。

 メニュー画面を開いてチェックすると、初心者向けの様々なミッションが追加されているのが分かった。


 中でも特に強調されているのは、メインストーリーを進めるミッションだ。これをやれと言わんばかりに枠が光っている。


「とりあえずストーリーを進めてみるか」


 俺がそう呟きながら、目的地である酒場に向かおうとしたとき、背後からちょんちょんと背中を叩かれた。


「あの、すいません。ちょっとお尋ねしたいんですけど」


 可愛らしい女性の声がして、俺は後ろを振り返る。そこにはピンク色のスライムが一匹立っていた。


「冒険者協会ってどこにあるか分かりますか?」


 おずおずと尋ねてきたそのスライムに、俺は微笑みかけた。俺と同じLv.2だし、困っているこの様子だと、初心者だろうと思ったからだ。


「ああ、俺もこれから向かうところなんですよ。一緒に行きますか?」


「はい、ぜひ! ありがとうございます!」


 ピンク色のスライム――リリーは笑顔になると、俺の隣に並び立った。


「私、こういうゲームって初めてなので、よく分からなくって。フレもいないし、心細かったので助かりました」


「いえいえ、こちらこそ。それじゃ行きましょうか」


「はい」


 二匹組になった俺たちは、街の通路をのんびりと進んでいく。

 先ほどの戦火はここまで届いていないらしく、活気のある街並みが耳にちょっぴり騒がしい。


 三本の爪跡のマークがついた看板を見つけると、俺は立ち止まった。

 そこには周りの建物よりも一回り大きな、がっしりとした石造りの建物が建っていた。


「着きましたよ、ここです」


「ありがとうございます! おかげでストーリーを進められます」


 想像していた通り、協会に来た目的は同じだったようだ。


「ちょうど同じくらいの進行度ですね。お互い頑張りましょう」


「はい! 私、リリーって言います。どこかでまたご一緒したら、そのときはよろしくお願いします」


「俺の名はカヲル。こちらこそ、よろしく」


 リリーはスライムの体で器用にお辞儀すると、協会へと入っていった。俺もその後に続いて、建物に足を踏み入れる。


 協会の中では、プレイヤーたちが思い思いの時間を過ごしていた。

 クエストカウンターなどの主要施設が設置されているからか、グループで固まっているプレイヤーがちらほらと見受けられる。


 自分もゆくゆくはパーティを組めるだろうかと思いながら、俺はカウンターに立っているウサギの魔族に話しかけた。


 それはメイド服のような緑色の制服を身にまとった、一本角の生えたウサギで、二つの足で立っている。いわゆる獣人というやつだ。


「すいません。村が人間に襲われて、逃げてきました」


 なんと言い出せばいいか分からず、曖昧な表現で事情を説明すると、ウサギはうんうんと何度かうなずいた。


「話は聞いてるわよ。大変だったでしょう。しばらくの間、上の階にある部屋で過ごすといいわ。それと、落ち着いたら隣のカウンターでクエストを受けるといいわよ。自力で日銭を稼ぐのは大変だろうから」


「ありがとうございます」


「あたしの名前はエリザ。いつでも声をかけてちょうだい」


 エリザはにこりと笑うと、こちらに手を振った。NPCとはいえ、ここまでリアルだとなんだか本当の生き物のように思えてくる。


 俺はミッションが更新されたことを確認すると、続いて隣のカウンターへと移った。メインストーリーを進めるために、クエストを受注する必要があるようだからだ。


 そこには、茶色いチュニックを着た大柄なゴブリンが立っていた。

 彼はこちらを見とめると、ダンディなハスキーボイスで声をかけてきた。


「何か用か?」


「エリザさんから紹介を受けました。クエストを受注したいんですが」


「おお、お前さんがライム村から逃げてきたっていうスライムのあんちゃんか。俺はヒギンズ。今後ともよろしくな」


 丸っこい触手を伸ばして握手を交わした後、ヒギンズは俺に一枚の紙を差し出してきた。


「いま、丁度いいクエストがあるぜ」


 俺は浮かび上がったクエストウィンドウを覗き込んだ。

 依頼内容は風鳴り草の採集。難易度☆1で、達成報酬は300ジラ。序盤にしてはなかなかいい報酬額だ。


 俺は下の方に浮かんでいる二つの半透明のボタンのうち「受注」と書かれた方をタッチした。

 すると、どうやらクエスト受注が完了したらしく、盛大なファンファーレとともにヒギンズが大きくうなずいた。


「頑張れよ、あんちゃん」


 ミッションも無事に更新され、メインストーリーがこれでまた一つ進んだ。順調な滑り出しと言えるだろう。


 この街で出来ることは色々あるようだが、まずは先立つものがほしい。

 俺は報酬目当てに、クエストの目的地である沈黙の森へと歩を進めることにした。

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