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DIVE31「熔解尖峰ヴァンバジナ その2」

 山中に開いた横穴を引き続き進むことしばらく、俺たちは白いモヤの前にたどり着いた。1ボスの登場だ。

 血気にはやって腰の剣を抜いた俺を、02は両手でなだめた。


「ああ、まだ武器は取り出さなくていい」


「なんでだ?」


「先にイベントシーンが挟まるんだよ。それが終わったら戦闘が始まるから」


 そういうことか。俺は剣を鞘に納めると、白いモヤをくぐった。いきなり戦闘にならないと分かったおかげで、安心してくぐることができた。


 モヤの向こう側にある大部屋に一歩入ると、その全景が見て取れた。

 足元には平たい地面が広がっており、外縁部をぐるりと囲むようにしてマグマが溜まっている。部屋の中央には、怪しいフードの男がこちらに背を向けて立っている。


 俺たちが室内に足を踏み入れたのを察知したのか、その男はこちらを振り返った。彼は値踏みするように俺たちをじろじろと眺めた後、合点したというように手を叩いた。


「ああ、お前たちか! 各地の魔物を倒して回ってるというのは」


「何者だ、あんた?」


「シャドウ、とでも名乗っておこうか」


 俺の問いかけに答えるように、そのシャドウと名乗る男は両腕を開いた。


「これ以上、私の仕事(・・)の邪魔をされては困るのでね。君たちにはここで一つ死んでもらうよ」


 彼が右手の指をぱちんと鳴らすと、背後の岩が崩れて部屋の入口を塞いだ。ここまで来たらもう後戻りはできないということだろう。


 そして、マグマの中から人型の精霊であるジーニーがぴょんと足場に飛び乗ってきた。プレイアブルキャラクターであるホーリージーニーとは異なり、赤く発光しているファイアジーニーという種族のようだ。


「それでは、ごゆっくり……」


 男は慇懃にお辞儀をすると、奥のモヤの中へと消え失せていった。彼の謎めいた雰囲気を深める、いい演出だ。


 ファイアジーニーのHPバーが表示され、戦闘の始まりを告げた。俺たちも武器を抜いて戦闘態勢に入る。


「行くぞ!」


 俺はいつも通りダイビングスラッシュから攻撃を開始した。ファイアジーニーはこちらを向いて火炎魔法「カグファ」で攻撃してくる。


「こいつ、魔法使いか!」


「相手の攻撃が物理だろうが魔法だろうが、タンクの戦略は大きく変わらない! いつも通り対処してけ!」


「了解!」


 俺はラウンドシールドでカグファの火炎弾を受け止めつつ、様子を伺う。

 しかししばらくすると、ファイアジーニーはマグマの中へと飛び込んでしまった。


「あれ、どこいった?」


「カヲルくん! 上!」


 周囲を警戒している俺たちの頭上に、マグマの玉が降り注ぐ。今日はよく物が落ちてくる日だと思いながら、俺はその熱い飛沫をひらりとかわした。着弾地点がジューと音を立て、ドロドロと赤熱する。


 あれは踏んだらなんかヤバそうだ。俺はその熱せられた床部分を避けながら、再び外に飛び出してきたファイアジーニーと対峙した。

 すると、なぜかやつのHPバーが回復していく。


「あれ?」


「足元にマグマがあると回復しちゃうから引き離して!」


「あっ、なるほど」


 あろゑの指示に従って俺は後ずさり、ファイアジーニーを手前に引き寄せた。これでもう回復はしなくなったはずだ。


 それ以降、俺たちは降りかかるマグマを避けながら地道にHPを削っていき、あと半分というところまできた。


 その瞬間、ファイアジーニーは近くのマグマにいきなり頭を突っ込んで思い切り吸い込むと、それを足場の外縁部にドーナツ状にまき散らした。安置の半径が半分程度になり、俺たちは中央に寄り集まった。


「うわ、狭っ!」


「外にはみ出ると回復しちゃうから、位置気をつけて!」


「オッケー!」


 俺はファイアジーニーをうまく誘導して、なんとか足場の中央まで連れてきた。ここなら回復される心配はないだろう。


 あとはもう新しいギミックはないようだ。そのまま全員でタコ殴りにすると、ファイアジーニーはぐったりと地面に倒れ込んだ。

 俺はそれを見て思わずガッツポーズを決めた。レベルアップのファンファーレが鳴り響き、俺はLv.19になった。


「よっしゃ!」


「何とかなったみたいですね!」


「ふぅん。二人とも初めてにしてはなかなかやるじゃん」


 あろゑは俺とリリーの肩を肘で軽く突いた。彼女なりの労いのつもりなのだろう。俺はそれに満面の笑みで返した。

 そんな和やかな雰囲気に、02が割って入る。


「あのー、爽やかなエンディングみたいになってるところ悪いんだけど、まだ2ボスが残ってるからな?」


「「あっ、そうだった……!」」


 俺はリリーと顔を見合わせてくすりと笑った。こいつはあくまで中ボス。乗り越えなければならない壁がもう一つあると思うと、楽しそうだという期待と、倒せるのかという不安が半分ずつ湧いてきた。


 モヤが晴れた先には、さらに上へと向かう、でこぼこした坂道が続いている。俺たちは周囲に溜まっているマグマに足を滑らせて落っこちないよう注意しながら、そちらへと進んでいった。

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