第一章 Merry X'mas 第一話 出会い
「ねぇ愛葉?明日のイヴさ。ヒマ?」
「ヒマだよ!なに?パーティーでもやんの?」
「んー。兄貴たちがね。あたしだけじゃ疲れるよ」
「ははは。わかった。じゃあ行くよ!」
私は井上愛葉。16歳。高校1年生。この子は友達の神山蒼。タメ。蒼のお兄ちゃんは悠真さん。25歳。塾の先生をしている。
「明日は蒼ん家でしょ?」
「そりゃね。兄貴の友達もいるからね?」
この日は毎年お祭り騒ぎなんだとか。
「はいよ。時間は?遅くなるかな?」
「んー。お昼頃からやると思うんだけど。帰りは……多分遅くなるんじゃないかな?」
っとすると、帰れない可能性もあるかな?
「そっか。じゃあ、蒼ん家に泊まるって言っとこ」
「その方がいいかも」
ほぼ確実に帰れないかも。
「じゃあ、また明日ね!」
「うん。早めに来てよ?」
「はいはーい」
ピンポーン…――
「はぃ?」
蒼が出た。後ろでがやがや聞こえるから予測はつくけど。
「私、井上です」
「愛葉?ちょっとまってて」
少し待っていると、ドアが開いて蒼が出てきた。
「愛葉遅いよ。もう疲れた……私ギブアップ」
話によると、もう中はお祭り騒ぎで、大変なことになっているらしい。
大体見当はついてたけど。
「まぢで?しょうがない。行きますか」
私はリビングに入り、ひとまず全員の顔を見渡す。悠真さんを含めて3人確認できた。一人は、悠真さんと一緒にいるところを見たことがある人。もう一人は、見たことがなかった。
「あ!愛葉ちゃん!おそいよぉ」
ろれつがうまく回ってない。
……酔ってる?
「悠真さん酔ってます?」
「そんなこt「あるでしょうが!この酔っ払い!」」
蒼が悠真さんに向かって怒鳴る。
やっぱり……って問題じゃないな。そうとうご立腹だよ。蒼が。
「えっと。自己紹介しておきますね。私は井上愛葉、蒼とタメです。よろしく」
一人がこっちを向いて軽く会釈をした。
「俺は、長瀬陸。見たことあったかな?」
「何度か」
「じゃあわかるよね?」
見たことある=分かる。はおかしい気が……
そこに悠馬さんが口をはさんだ。
「一応中学の教師だぜ?英語科」
「へぇ……」
そして、もう一人が立って会釈をし、話し始めた。
「次、俺ですよね。俺は佐藤和希。先輩方の一つ下で、数学科の教師やってます」
これが。この出会いが、運命のいたずらだったんだ。
そんなこと、今の私は知らないけれど。
「よろしくお願いします」
「さっ!愛葉ちゃんも飲む?」
悠真さんがお酒をこっちに勧めてくる。
「未成年です」
ふてくされた顔をして、また飲み始める。
そして、和希さんがおもむろにしゃべりだす。
「愛葉ちゃん?チョコレート、持ってる?」
……なんでチョコレート?
「持ってないですけど。買ってきましょうか?」
「俺も行く……」
悠真さんほど飲んでないが、多少酔いがきてるみたいだ。うまくしゃべれてない
「蒼?じゃあ行ってくるけど。何かほかにある?」
「うーん。じゃあ適当におつまみ買ってきて?なくなりそうだから」
テーブルの上を見る。たしかに、もう少なくなってきていた。そして悠真さんが一言、
「いってらっさーい」
と叫んだ。
「やれやれ……」