第8話
昨日寝るのが早かったからか、いつもなら、まだ寝てるような時間に目が覚める。それでも、学校がある日なら遅刻寸前だし、いい感じに寝れた、……かも。マットレスがいいのか、体にも違和感ないし、先輩も、寝てる間は起こされることもなかったし。それでも、二度寝したい気分なのは変わらないけど、今日はもう寝れないって感覚。休みの日の、朝早くの時間の過ごし方なんて全然知らないし。……食堂、まだ空いてたっけ。
部屋の反対側をぼうっと見ると、先輩、まだ寝てるみたい。朝にそんな強くないって言ってたけど、……これなら、朝早くから起こされなくても済むかな、少なくとも休みの日は。まだ出会ってすぐだけど、先輩がルームメイトなのは『当たり』なんだろうな。
いつもだったら、そのままベッドでごろごろして、いつの間にか二度寝してるんだけど、何となく起き上がる。多少はまだ緊張してるってことにして、部屋の中をちょっと探検。あたしの事で昨日は精一杯だったから、先輩のはどうなってるのか、あんまり見てないし。
クローゼットを覗いてみると、あたしと違っておしゃれな服装が並ぶ。洗うの、めんどくさそうだな、なんて思わず頭に浮かんじゃうのが、何とも、あたしらしくて嫌になる。見るだけで、めまいがする。多分、あたしがまだ寝不足だから。
「はぁ……なんかなぁ……」
先輩って、すっごく『女の子』って感じして、……とっくのとうに諦めてるけど、羨ましいって気持ちも、ちょっとはある。
机とか、どうなってるのかな。今はあたしのもそこそこ整ってるけど、一か月くらいしたらごっちゃごちゃになってそうだな。じゃあ、先輩は。……やっぱり、キレイに整ってるし、あたしが来るから片付けてるって感じでもない。かといって、何も物がないってわけじゃなく、ノーパソとか、宿題をやってたっぽいノートとかの他にも、ちょっとした小物とかも置かれてる。それで、椅子のすぐ目の前に置かれてるのは、ちょっとおしゃれなノート。隣にあるのとは違って教科も書かれてないし、日記とか、そういうのなのかな。そういうのをきっちりつけるだけでも、律儀だな。あたしなんて、試しにそういうのつけてみたら、一週間もたたずに存在を忘れてたし。
……なんか、あたしより、よっぽどしっかりしてそうだな。それなのに、朝は弱いっていうのが、ちょっと不思議、かも。
「さて、食堂開いてたかなー……」
寮に入るときの資料だと、この時間でも開いてるみたいだし、とりあえず行ってみるかな。とりあえず書置きだけして、寝間着にしてるシャツのまま食堂へ。
……今朝のことは、全部夢。だって、この時間にあたしが起きてるわけないんだから。