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若き野原に華は舞う。  作者: しっちぃ
1.若き野原に華は舞う。
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第6話

 段ボールの中身も空っぽになって、何も無かった勉強机やベッドも、ちょっと、いつもの部屋っぽくなった。先輩も、本当に優しくて、コードの配線だったり、ちょっと入れるのが大変そうなときに手伝ってくれたり、配置とか、一緒に考えてくれたり。それでも、片づけ終わるのは、おやつの時間よりはちょっと遅い時間帯。


「一華ちゃん、お引越しお疲れ様、乾杯っ」

「あ、かんぱーい……」


 それぞれで買ったペットボトルを、こつんとぶつけ合う。あたしは自販機で見つけた炭酸入りのリンゴジュースで、先輩はロイヤルミルクティーを買ってた。そういうのが好きなのかな。そんな気が起きないけれど、まだ、出会って数時間。知らないことのほうがずっと多い。

 ノリよくなんてできなくて、普段のあたしなら、めんどくさくなりそうなのに、……それも、先輩とだと和らぐ。おせんべいからチョコレートまで、全然統一感のないずらりと並んだお菓子は、あたしがどんなのが好きかわからないからなんだろうな。戸惑うくらい、優しい。

 

「お菓子何が好きかわかんなかったから、いろいろ買ってきちゃった。何か好きなのある?」

「あ、あたし、割とお菓子なら食べるから。……でも、チョコ系はよく食べるかな」

「ほんと?わたしも好きなんだよねぇ~」


 二人だけの歓迎会、ちょっと多めのお菓子は、案外すぐ無くなっていく。甘いのとしょっぱいのを交互に食べると、あっという間になくなるっていうけど、まさか自分の体で試すことになるとは思わなかった。いくら好きだって言っても、チョコレート菓子だけじゃ飽きるし、先輩の心遣いは、思わなかったとこで働いてくれる。


「そういえば、部活って決めた?」

「……まだ考え中かな、写真部は、ちょっと気になってるけど」

「写真、好きなの?」

「まあ、それなりに、……どっか行くとかはないけど、撮るのは好きだし」


 と言っても、美味しそうなスイーツとか、街中とか。いいものを見つけるために遠出するのはめんどくさいけど、見掛けて、ちょっと惹かれたのを録るのは、好きかも。何か入らないといけないとかだったら、そこにしようかなくらいのイメージ。


「そうなんだ~」

「先輩は、何か入ってたり……?」


 見せるのはちょっと恥ずかしいから、あたしのほうから話を振る。何か、乱される。一瞬で心の中に入って来て、それが当たり前みたいで。今みたいに、違和感があって普通なんだ。それすらも、忘れるくらいに。


「わたしは茶道部だよ、面白い子が多くて楽しいよ?」

「へー……、どうしてです?」

「おばあちゃんがやってて面白そうって始めたのが最初かな、でも、茶道部入ってからって子もいっぱいいるよ?」

「そうなんだ、じゃあ、一回くらいは見てみよっかな」


 でも、めんどくさいな。どうしてもお堅いイメージがあるし、作法とか覚えるのも大変そうだし。でも、一回くらいならって言ったのは、出まかせでも何でもない、……なぜか。

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