第4話
「一華ちゃんって、ここは高校からだよね?」
「そう、ですね……、先輩もですか?」
「まあね、わたしとちょうどいいとこで、一番雰囲気よさそうだなって、一華ちゃんは?」
「あー、……寮があったからですかね、ほかの所も勧められたんですけど、どこも遠くて」
嘘じゃないけど、本当でもない言葉で逸らす。学校見学に行った時も、雰囲気はなんとなくおっとりとした感じがして、悪いようには感じなかったけど。ほんのりうっとりしたように見えたけど、それほどかな。
「この辺高校ないからねぇ、わたしの家はそんな遠くないけど、やっぱり朝はのんびりしてたいもんね」
「……もしかして先輩、寮入ったのって」
「うん、……一華ちゃんもそんな感じなんだ」
「まあ、そうですね、朝弱いんで」
こんなとこまで似てるなんて、ちょっと思わなかったな。朝早く起こされることはなさそうだけど、一緒に寝坊したらどうしようかな。……どことなく、気が合いそう。最初に見た時に浮かんだ予感は、ちょっとずつ膨らんでいく。
「一華ちゃんもなんだ、……なんかそっくりだね、わたしたち」
「……そうですね」
言葉は、案外するっと出た。……でも、多分、先輩の方がずっと、世話焼きな人だ。あたしだったら、……多少は仲良くしようとは思うんだろうけど、ここまで話しかけるとは思えない。人嫌いとかじゃなくて、ただ、誰かの為に尽くすとか、そういうことをしてる自分が想像できないだけ。……そうしたいなんて思えた人もいなかったし、どうすればいいのかだって、よくわかんないだけ。
「食べ終わったら、ちょっと休もっか」
「いいですね、……って、まだ全然食べてなかった」
「伸びちゃう前に早く食べちゃお?ちょっと、話しすぎちゃったね」
言葉のテンポがなんとなくゆっくりだからか、いつの間にか時間は経ってしまってた。大分ぬるまってきたパスタは、おいしく食べられるかどうかギリギリって感じ。急いで食べなきゃな、お腹は全然空いてないけど。
……にしても、おいしそうに食べるなぁ、先輩は。どれだけ食べてるのかなって隣の皿を見てると、満足げな顔をして、パスタを口に運んでいく。同じ食べ物なのに、なんか違うもの食べてるみたい。それを横目に食べると、ちょっとだけ、おいしくなったように感じる。
食べ終わったのを横目で見てると、目線が合う。椅子から、ちょっと飛び上がりそうになるのをこらえて、慌てて視線を逸らす。皿の中には、あと数口分。見られるの、ちょっと恥ずかしいな。まだ、視線は離してくれない。
「なんで見てるんですか?」
「一華ちゃんだって、わたしのほう見てたでしょ?」
「それは……、なんか、綺麗に食べるなって」
「……もう、一華ちゃんは」
何故か知らないけど、視線が逸れてくれた。この隙に、食べておこう。……嫌じゃない、何故か。それでも、まだ、先輩のこと、つかめてないのは本当で。
……全部食べきって、思わずため息が漏れる。こんなに誰かのことを気にしたのって、いつぶりだったっけ。