表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
若き野原に華は舞う。  作者: しっちぃ
1.若き野原に華は舞う。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/23

第3話

 閉まりかけの食堂には、これから部屋に戻る人はいても、これから食べにくる人はあたし達くらいみたいだ。

 券売機の前で、さりげなく繋がれてた手が離れる。どことなく自然だったから、離れた後に、ほんのり違和感が残る。手を繋がれるなんて、最後はいつだっけ。そんなことを考えるくらいに、人と触れ合うなんてないのに。


「一華ちゃんは、何にする?」

「んー……、今、お腹空いてないからなぁ……」

「えー?ちゃんと食べないと体に悪いよ?」


 春休みに好きなように寝てたら、普通に昼に起きるなんてことも珍しくなかった。昨日も、起きたのは昼過ぎくらい。今日も、朝ごはんは食べたけど、ほとんど押し込むようなものだったし。今も、普通のセットメニューとかは食べれそうにない。あとは、

 軽めにパスタにしようかな。一人前の量だと意外と少ないし、……うどんって意外に重いし、そばはあんまり好きじゃないし。今日のパスタってとこには、春野菜とベーコンのジェノベーゼってあるけど

 

「じゃあ、パスタにしよっかな」

「一華ちゃんもパスタにするだぁ、なんか嬉しいね」

「……そうですか」


 同じものを自然に選ぶのは相性がいいとか嬉しいとか、いきなり言われるとびっくりする。まだ、出会って初めてだし、どういう人かだって、あんまり良く分かってないし。

 でも、確かに、親近感はちょっと沸く、……かも。嫌な人じゃないって感じは、出会って数時間なのに伝わってくる。このままでいるのも、嫌じゃない、かな。今の感覚が、そのまま続くなら。


「わたし、パスタは結構好きなんだー」

「そうなんですか」

「一華ちゃんは、なんか好きなのあるの?」

「うーん……サンドイッチとかですかね、お腹空いたときとか気軽に食べれるし」


 なんて言って、本当は余りにも動きたくなくても、寝転がったままで食べれちゃうからとか言ったら、さすがに引くだろうな。そんなことを言えるほど、仲良くなれたと思う人なんていなかったけど。


「楽だもんねぇ、考えすぎて、時間忘れちゃう感じ?」

「あー……、そうかもですね」


 一人で過ごしてたら、多分部屋に籠ってたかも。いや、……コンビニもスーパーも遠いし、やっぱりここに来ることになってたのかも。それでも、混む時間は避けてそうかな。今みたいに、閉まるギリギリの時にばっかり行ってそう。

 そんな事考えながら、先輩の動きを真似して席までついていく。何となく、隣の席に座って、二人で手を合わせる。


「ごめん、わたしばっかり話しちゃったね」

「いいですよ、……別にあたし、できる話あんまりないんで」

「そんな事言わないでよ、二年間一緒なんだから、ちょっとは一華ちゃんのこと知りたいな」


 趣味があるとかもなくて、先輩みたく話上手でもない。正直、話すのはそんなに好きになれない。自分のことを晒すのも。

 ……そのはずなのに、ちょっとくらいはいいかなって思わされる。何か、むず痒いな。よく食べるのか、スパゲッティをくるくるとフォークに巻き付ける手さばきは綺麗で。それを眺めながら、何から話そうか、ぐるぐる頭の中をかき回してる。 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ