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若き野原に華は舞う。  作者: しっちぃ
2.真白に開く藤の花房。

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23/23

ex.1(2)

 勝手に、何か期待してる。いつも通りの時間を過ごしてるだけなのに。それは、……舞も、みたいだけど。テンション上がってるの、隠しきれない感じ。先輩っぽくないどころか、あたしより年下みたいにも感じる。

 二人で部屋から出るとき、何となく繋がってた手も、今は自然に受け入れてる。いつも通りのルーティーンも、そわそわがひたひたと迫る。ただ、ご飯食べに行くだけだっていうのに。握ってくる手も、ちょっと熱っぽいような。


「一華ちゃん、もしかしてドキドキしてる?」

「……そうだね、あたし、……こういうの、全然知らないのに」


 あたしが誰かの『恋人』になるとか、趣味の悪い冗談としか思ってなかったのに、今じゃ、これが日常になってて。……こんなになってても、何であたしが選ばれたのかわかんないけど、……あたしの隣でこうしていてくれるのは、きっと舞しかいない。一人でいるときより、ゆっくりした足取り。こうやって一緒にいる時間も、自然と長くなる。


「……そういうの、女の子ならちょっとくらいは興味持つものじゃない?」

「そういうものかな、……あたしは全然だったな。そういうのめんどそうだし、あたしには関係ないなって」

「わたしのことは、めんどくさい?」

「そうじゃないって。……でも、そういうの全部どうでもよくなるんだね、『好き』って」


 あたしが他の人に何かするのって、だいたい「やらなきゃ」でやってるのに、舞といるときは、そんなのも考えないで、むしろ「やりたい」からで。……その理由で、思いつくのなんて一つだけ。


「……そうだね、わたしも、一華ちゃんといるときと普段ってちょっと違うかも」

「そうじゃなきゃ困るよ、あたし」

「もう……、一華ちゃんしかいないって、『好き』な人は」

「なら、いいんだけど」


 おんなじだ。あたしと舞の気持ちは。何度確かめても、酸っぱくて甘い。それと一緒に、心の中に、何かがチクリと刺さる。ヤキモチ、と言い切るには、ちょっと弱いかもしれないけど。そもそも、他の人に興味なんて無かったあたしが、こんな事考えるくらいには、染まっちゃってるな。舞のこと、いろんなとこに。

 エレベーターの中も、二人きり。でも、最初から二人きりみたいなものか。


「言葉だけじゃ、足りない?」

「そうじゃなくてさ、……するなら、帰ってからね。恥ずかしいし」

「それじゃあしょうがないなぁ、早く食べに行こ?」


 ああ、もう。そんなのもめんどくさいや。最初から、全部くれるから。頭の中、しゅわしゅわ溶かされそう。あたしの知らなかった、どんなお菓子より甘いもの。もっとちょうだいとか言えそうにないから、いいよ、だけで伝えて。それで欲しいだけくれるから、好き。その二文字も、あまり上手く言えないや。

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