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若き野原に華は舞う。  作者: しっちぃ
1.若き野原に華は舞う。
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第18話

 本当に、知らない。他人にあんまり興味無いからとかじゃなくて、先輩に嫌なことされた記憶が全然見当たらない。抱いてる手、あたしがしんどいときにされたみたいに、包むようにしてみる。もっと、体も近くに寄せて、……先輩の髪から漂う、ミントみたいなのが混ざったような甘いにおい。

 

「……別に言わないでいいよ、辛くしたいわけじゃないから」

「……うん、ありがと。優しすぎだよ、一華ちゃんは」


 優しいからじゃなくて、面倒になりそうなのが嫌なだけ。そんな形容詞で表せるような人じゃないよ、あたしは。それに、そんな事言い出したら、あたしだって、先輩が部活に行ってるときは、毎回のように秘密にしてるノートを盗み見してるんだ。


「そんなことないよ、あたしも、先輩に、……言えないこと、しちゃってるから」

「……そうなの?」


 声、さっきよりも切ない、かも。逆に、こわばってた体は落ち着いたような。それでもまだ、謎は解けないまま。 言うのをためらうような『ひどいこと』なんて何だろう。


「うん、……いっつもあたしの方が優しくしてくれてるのに、あたしは何も返せてないし」

「そんなことないって、……一緒にいてくれるだけで、お返ししてもらってるよ」

「そんなんで、いいわけ?」

「うん、……だって、……一華ちゃんのこと、……好きだし」


 ……どう返せばいいか、わかんない。好きって、あたしを?それも、どういう意味で?一人で考え事してた以上に、頭の中がぐるぐる回る。


「それって、どういうわけ?」

「考えると、頭ふわふわして、熱くなって……、なんていうか、ドキドキする感じ、……分かる、かなぁ」

「そっか、……あたしも、似たようなものかもね。先輩のこと、考えると柄にもなくいろんなこと考えちゃう」


 先輩の気持ちの名前、あたしでもなんとなく知ってる。あたしには、縁遠いもの。思うにしても、想われるにしても。似たようなものって言っちゃったけど、本当にそうなのかな。ちょっと、自信無くなってくる。……あるわけないっしょ、あたしが、誰かに恋するなんて。


「……そっか、それだったら、いいんだけど……」

「あのさ、……そうだったとして、だけど、……先輩って、どうしてあたしのことそういう風に思うようになったの?」

「……ここに来た日、一華ちゃんが疲れて寝ちゃってたでしょ?……たぶん、その時かな、寝顔、すっごくかわいいなって思ったのが最初だったかな」


 うっとりしたような声、……そんなに、あたしって想われてたんだ。先輩が抱えた気持ちに、あたしまで揺さぶられる。

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