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若き野原に華は舞う。  作者: しっちぃ
1.若き野原に華は舞う。
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第17話

 気のせい、なんてものじゃない。感じる熱、少しずつ濃くなってく。先輩の秘密のノートに描かれてるのよりはマイルドだけど、それでも最初のときより、ずっと。

 背中合わせに並んで勉強して、それが一通り済んだら並んでご飯を食べて、洗濯して、お風呂に入って、……いつもと同じような感じ。なんだけど、なんとなく、違いに気づいちゃう。毎日ちょっとずつバス停をずらして家の前まで動かす、なんてネタがあったっけ。多分、それとおんなじ感じ。


「じゃあ、おやすみ、一華ちゃん」

「ん、……おやすみ」


 いつもと同じ時間、あたしが電気を消してベッドに潜る。……けど、あんまり寝れそうにないや。昼寝で寝すぎると、いつもこうなる。眠気が来るまで、のんびり待とう。寝ようとしても上手く寝れないものだし、むしろ、寝ちゃだめって時に寝たくなるから。

 ……それにしても、今日は上手く寝れないや。柄にもなく考え事して疲れてるはずなのに。

 

「……いちかちゃん」


 知ってるけど、知らない声。先輩の声、こんなに触れたら壊れそうな感じだったっけ。優しいけど、柔らかかったのに。


「もう、寝てる……よね」


 聞いてるだけで、胸の奥がちりちりする。なに、これ。なんか、寂しそうっていうか、痛そうっていうか。


「せんぱい、どうかしたの?」

「っ……、起きてたんだ、珍しいね」

「うん、だね。……それよりさ、今日は、そっち行っていい?」

 

 どうしてかは、分かんないや。あたしが、こうしたいの。でも、気まぐれなんてものじゃない。


「いいけど、どうかしたの?」

「なんとなく、そういう気分だっただけだよ」

「そっか」


 ベッドの上、ごそごそ動く音がしてる。あたしが入れるように、場所作ってるのかな。そういうとこは、いつもの先輩だ。めくったお布団に転がり込むと、あたしに背中を向けて寝てる。そこに、そのまま体をくっつけて、お腹のあたりに手を回す。あたしが月のものでしんどかったとき、してくれたみたいに。先輩の声も、ようやくいつもの調子に戻ってくる。


「先輩の声、ちょっと辛そうだったけど、大丈夫?」

「……優しいね、一華ちゃんは」

「……先輩のほうが、ずっと優しくしてくれてるって、あたしとかより何倍も」

「そうかな……、わたし、一華ちゃんにひどいことしちゃってるのに」


 そんなこと、された覚えないのに。また、切ないような痛いような声になってく。抱きとめる手、少しきつくなる。


「そんなこと、された覚えないよ、……なんかあるの?」


 ……これしか言えないけど、多分そうじゃない、そうじゃないのに。こういう時、どうすればいいか、わかんない。これだから、人付き合いは苦手なのに、今はこの手を離せないや。


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