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若き野原に華は舞う。  作者: しっちぃ
1.若き野原に華は舞う。
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第16話

 ルームメイトってだけじゃ、言い表せない距離感。仲はいいはず、むしろ、良すぎるくらい。でも、それだけで、フツーは添い寝とかやらないような。あたしが月のもので辛かったときは助かったけど、先輩がちょっとしんどかったときも、あたしのベッドに潜りこんできて、……嫌じゃないけど、むしろ、ちょっとだけ、落ち着くけど。

 茶道部の活動で、先輩のいない部屋。あの謎のノートも、覗いてみると、絵が増えてるような。……ページをめくってくごとに、その世界はあたしの知らないものになっていく。手を繋いだり抱き合ったりとかのよくある触れ合いから、添い寝してたり、いわゆる壁ドンっていうのしてたり。盗み見なんて良くないのは分かってても、なんか、引力みたいなのがある。


「先輩、こういうの好きなのかな」


 人の趣味にどうこう言うのはあまり良いものじゃないけど、そもそも、他人がどうこうしようが、あたしに関わりがなきゃどうだっていいで済ますのに。……なぜか、先輩にだけは、それだけで済まなくなる。ルームメイトだからってだけじゃ、説明がつかないくらい。

 ……考え事は、性にあわないや。先輩が戻ってくる前に、軽く寝て忘れよう。いつものあたしに戻って、そしたら、何もなくなるはず。寝ようと思えばすぐ寝れる体には感謝かな。ちゃんとノートも元の場所に戻したし、先輩が戻ってくるのは大体一時間くらい。それなら、その前に起きれるはず。

 部屋着のまま、ベッドに転がり込む。力を抜いてしまえば、もう眠気にゆっくりと身を任せられる。


「……かちゃん?……いちかちゃん、寝ちゃってるの?」

「ん、んぁ……?あれ、せんぱい?」


 かお、ぼやけて見えない。……ていうか、近すぎ。……ていうか、なんでいるの。あたし、そんな寝てた?


「おそよ、いつも私が戻ってきたときは起きてるのに」

「あれ……もうそんな時間だっけ」


 スマホの電源ボタンを手探りで押してみると、思ったより眩しい。……起きたら目の前に先輩がいるのと、どっちが刺激強いかな。……そんなことより、もう五時半過ぎてる。それなら、もう帰ってきてもおかしくないか。


「なんか、疲れてた?体育とかあった?」

「……かもね、柄にもなく考え事してたし」

「えー?何なに?」

「内緒かな、……誰かに言うのは、ちょっと気恥ずかしいかも」

「そっか、困ったら、頼っていいからね?」

「ん、……ありがと」


 顔、急に離れる。寝すぎると眠くなるけど、頑張って身を起こす。いろいろ、やることもあるもんな。

 他の人に言うのは無理だし、先輩には持ってのほか。秘密にしてそうなノートを盗み見してるってことバラしちゃうことになるし、……何か、おかしくなりそうな気がする。それが何なのかわからないけど、この心地よいような不思議な関係が、乱れていきそうな。

 こうやって、また考え事。どっちにしろ、おかしくなっちゃうかな、あたし。机には向かったけど、ペンは回るだけで一向にノートには向かわない。

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