第15話
分かんないな、相変わらず。流されるままの日常の中に、もやもやが固まってできた何かが頭にこびりついてくる感じ。こんな感情、あたしには似合わないのに。
嫌いか好きかで言えば、好きだけど。……もちろん、特別な意味なんてなくて、一緒にいると、落ち着くってだけ。一個年上のはずだけど、そういうことも、思い出さなきゃ忘れちゃってる。ルームメイトになって、そろそろ一か月。まだ、それしか経ってないんだ。もうちょっと、一緒にいたような気がするくらい、自然に入り込んでくる感じ。
……まだ帰りの会なのに、なんで帰った後のこと考えてんだろ。早く終わってほしいとは正直思ってるけど、いつも以上の何かがあるような、……ないはずだけど。
ぼうっとしたまま、みんなの後を追って昇降口に。階段を下りてくと、よく知った顔に出くわす。クラスメイトですらろくに顔を覚えられてないけど、先輩のことは、もう覚えちゃってる。……それもただ、おんなじ部屋で過ごしてるからってだけ、のはず。
「いたいた、一華ちゃん、一緒に帰ろ?」
「ん、……まあ、いいけど」
「えっへへ、じゃあ行こ?」
「あ、うん、わかった」
先輩の部活がない日は、ちょっとだけ、心が上に向いてるのがわかる。先輩も、今はけっこう浮かれ気分になっちゃってる。その理由も、なんとなくだけど、思い浮かばないわけじゃない。こんなんでそうなるかってくらい、単純な理由だけど。
いつの間に、腕を組んでくる。その手をどうにかするってとこまで、頭の考えが追いついていかない。でも、どうしてそうなるのかは、わからないや。分かろうとする気も、今のとこは無いし。……まだ、どうしようもないわけじゃない。そこに、何かがあるってくらいで。もうちょっと、……ほかのこと、何にも手につかないくらいになったら、さすがにあたしでも分かろうとするだろうけど、……そこまで行っちゃったら、考えなくても答えなんてわかっちゃうか。
「一華ちゃん、なんか元気ないね?」
「んー、そっかな。いっつもこんくらいだと思うんだけど」
「それはそうかもだけどさぁ、なんかふわってしてるっていうか」
そういうの、気づいちゃうくら一緒にいたかな。あたしがあんまり顔覚えられないから、そういう感覚もよくわからない。あたしも、声とかで多少はわかるけど、あんまりそういうのは出してないはずなんだけどな。
「あー、うん、ちょっと考え事はあるかな」
「そう?悩み事なら聞くから言ってね?」
「ん、その気になったらね」
ほんのりした優しさに、うまく答えられない。慣れないな、こういう風に扱われるの。頭にくっついたもやもやは、また大きくなる。