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若き野原に華は舞う。  作者: しっちぃ
1.若き野原に華は舞う。
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第0話:荒れた大地を華は彩る。

 春の空気は、苦手だ。花粉症気味だからなのもあるけど、それは理由のほんの一つ。本当の理由は、もっとつまらない、けど、あたしには何にも代えられないようなもの。

 ……とにかく、忙しい。中学までは、なんとなく過ごしてれば何とかなった。学区でどこの学校に行くかなんて最初から決まってたし、勉強も必死こいてしなくても何とかなった。先生からはもっと上のとこも目指せるって言われたけど、星花にした。理由なんて、学校に寮があるなんて、多分自分しかいないような理由。それなら、制服がかわいいからとかのほうが、まだマシなのかなってくらい。親も先生も呆れてたけど、受けさせてもらえて、普通に受かったのがつい一か月くらい前。


 ……引っ越しがあるの、すっかり忘れてた。荷物を選びながら、ユーウツが溜まっていく。説明された資料だと、調度は最低限のものくらいって話だし、いろいろ必要なのかな。いくら重くなっても業者の人がやってくれるけど、それはそれで寮に着いてから忙しくなるし。

 期待よりも不安よりも、めんどくささのほうが強くのしかかる新しい未来。このままの日々が続けばいいのに、そしたら、いつも通りの日々が過ぎてくだけ。なんて言っても、時間も、季節も、体も、容赦なくその先に向かって進んでいく。

 

「はぁ……、だるいっての……」


 一通りの衣類と本で一箱埋まって、ベッドに飛び込む。制服も体操着も上履きも買って、今日はもう一生分くらい動いた気がする。それなのに、いつもなら待ってましたとばかりに来る眠気がやって来ない。

 あたしも、……それなりには、緊張とか、……してるのかな。そんなわけないか、なんて納得させるには、ちょっと違和感が大きすぎる。

 眠って忘れたいのに、おめめはぱっちり開いたまま。布団をごろごろ何度も転がったまま、もやもやとまとまらない頭の中を適当に手に取る。

 ルームメイト、どんな人になるんだろう。ちょっと問題集を見た程度じゃ、さすがに一人部屋の菊花寮に入れるほどの点は取れなかったから、二人部屋の桜花寮になったけど、……口うるさい人じゃなきゃいいな。できるなら、あたしと同じくらいめんどくさがりか、……いないとは思うけど、すっごく甘やかしてくれる人だったりとか。……なんて、夢見過ぎか。愛想もないし、かわいいとか、きれいとかでも無いし、……星花だと、現役でアイドルやってる人だっているってのに、そんなんで勝負とかできるわけない。『一華』なんて、大層な名前貰っちゃって。華というよりは、むしろ雑草のほうが近いんじゃないの。

 ……ままならないな。足音を消して、じわじわと迫ってきた眠気が、ようやく顔を出してくれる。迷いなく、それに飛び込む。そこにいれば、考え事だってしなくていいんだから。

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