女の子とブリキと案山子と臆病なライオン
最初考えていた物語とかけ離れた物になってしまった。何でこうなった?
『これは真実の愛だ』
ブリキ男がそう言った。
『私たちは出会うのが遅かっただけ』
案山子女がそう言って喚く。
私はテーブルに置かれた紅茶を手に取り優雅に飲む。
「三文芝居はいいから、あなた達よそでやって下さらない?」
私は再び刺繍の針を動かす。
ブリキ男と案山子女が私を睨む。
「私はお母様のプレゼントを今日中に仕上げなければならないの。あなた達邪魔するなら出てって‼」
私はヤギの家令に頷く。
家令はドアを開ける。
ブリキと案山子がギクシャクと退場する。
私は呪われている。
物心ついた時に人が人に見えなかった。
鏡に映った自分と、肖像画などの絵は人に見えるのだが。
生きた人間はさっきの二人のようにブリキや案山子に見える。
さっきの二人は私の婚約者と彼の恋人だ。
昔読んだ物語のブリキは心を持たなかった。
案山子は脳を持たない。
何故そんなものに見えるんだろう?
そうそう、あのお話は女の子と一緒に旅をして魔女に心と頭脳を貰うのだったわね。
あの物語は好きではないわ。
魔女が与えるのは偽りだからだ。
本当はブリキも案山子も欲しい物を持っている。
それに気付かないだけだ。
女の子の望みは何だったろう。
家族の元に帰りたいという事だったが。
彼女の両親は洪水で村ごと滅びた。
彼女は一人生き延びて。
母親が誕生日に縫ってくれたぬいぐるみの犬を連れて魔女を尋ねる旅に出る。
旅の途中でブリキと案山子と……
あと何だったかしら?
まあ。何かと魔女の住む館にたどり着いて魔女に頼むのよね。
代償は何だったかしら?
人魚姫は声だった。
魔女との取引には何かの代償が必要だった。
ブリキは持っている心と引き換えにブリキのハートを手に入れて。
案山子は考える事を放棄して泥の脳を手に入れた。
女の子は……
女の子は両親の記憶と引き換えに、魔女と家族になってずっと一緒に暮らす。
全ては偽りだ。
バタンとドアが開き。
バロンが入って来た。
「ワンワン」
「バロンお帰りなさい。お散歩は楽しかった?」
私はバロンの頭を撫でる。
「バロンはいい子だったよ」
ライオンがやって来る。
ああ、そうそう女の子はライオンとも一緒に旅をするんだわ。
「ん……? どうしたんだい」
ライオンが首を傾げる。
「昔読んだおとぎ話を思い出していたの」
「おとぎ話?」
「そう……誰に呼んでもらったのかな? 忘れちゃったけど……確か……」
___ 女の子が住む村が洪水に襲われて、女の子だけが生き延びた ___
___ 女の子は母親に縫ってもらった犬のぬいぐるみを連れて旅に出る ___
___ 旅の途中で女の子は、心を持たないブリキと頭脳を持たない案山子と出会う ___
___ 更に女の子は勇気を持たないライオンとも出会い ___
___ 皆で魔女に願いをかなえてもらうために魔女を尋ねる ___
___ 魔女は願いをかなえるために代価を望んだ ___
___ ブリキには心を抜き取ってブリキのハートをその胸に押し込んだ ___
___ 案山子には考える力を奪って藁の頭に泥を埋め込んだ ___
___ 女の子には本当の家族の記憶を消して魔女が母親だと思い込ませた ___
___ ライオンは…… ___
「ライオンは【真実】を封印して女の子の側にいる事を選んだ」
ライオンは私の代わりに答える。
「あの話は好きでは無いわ。だって皆少しづつ不幸なんだもの」
「そうだね。一番不幸なのは誰だと思う」
「ん~~~ライオンかな?」
「どうして?」
「だって、ライオンは【愛】を封印して女の子の側にいるから」
「そうかな? ライオンは幸せかも知れないよ。大好きな女の子に愛を告げれなくても。側に居られるだけで幸せなんだと思う」
「そうなのかな?」
「そうだよ」
「貴方は幸せ?」
「とっても幸せだよ」
銀の髪の従者は女の子の髪をなでた。
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昔々、ある所にそれは可愛いお姫様がおりました。
ある日お姫様は婚約者と愛人(案山子)がキスを交わしているのを見てしまいました。
それを見たお姫様の魔力は暴走して大洪水が起こり。
この国の全てを洗い流してしまいました。
王(父)も王妃(母)も婚約者も彼の愛人(案山子)も国民も全て死んでしまいました。
生き残ったのはお姫様(女の子)と従者だけ。
狂ったお姫様(女の子)はぬいぐるみの犬を抱きしめて旅に出ます。
乳母(魔女)に会うために。
乳母(魔女)はいつだってお姫様(女の子)の我儘を聞いてくれたのだから。
今度もきっと助けてくれる。
旅の途中で婚約者のゾンビ(ブリキ)と彼の愛人のゾンビ(案山子)と出会い。
皆で乳母(魔女)に会いに行きました。
乳母(魔女)は優しくお姫様(女の子)を抱きしめると優しく囁きました。
大丈夫、大丈夫貴方は何も悪くない。
怖い夢は忘れて眠れ。
お姫様(女の子)は夢の中、己の罪を忘れて眠る。
いつもお姫様(女の子)を愛している従者と乳母(魔女)が側にいてくれる。
彼女の安らかな眠りの代償は、従者がお姫様(女の子)に愛を告げぬこと。
お姫様(女の子)の代償は愛する従者の記憶を消すこと。
偽りの幸せの中お姫様(女の子)は幸せな夢を見る。
眠るお姫様と従者(孫)をただ魔女は痛ましげに見つめるだけだ。
~ Fin ~
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2020/10/2 『小説家になろう』 どんC
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