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第8話 包囲拘束戦

「拘束?」「セシルって、あの小さい方だよな」「あの二人、何したのかしら」



「エリス先生、どういうことですか!?


レイブンたちを拘束なんて!」


「こうなった以上、君にも話す必要があるだろうね。


事が済んだら話そう」



俺の周囲に魔力で作られた鎖が現れた。


鎖による拘束魔法だ。


だが、俺を魔法で拘束しようなんてのは無理な話だ。


【魔力操作】で魔法の鎖を破壊し、魔力を掌中に収める。



「セシル!」


「!《召喚》レイブン!」



セシルに呼び掛け、召喚を促した。


召喚士クラスにのみ与えられた唯一無二のスキル【召喚術】。


そしてその基本スキルたる《召喚》。


《契約》により予め定めた条件が満たされている場合に即座に対象を召喚することができるスキルだ。



セシルの間近に召喚され、セシルを縛ろうとする鎖をすぐさま破壊する。



「大丈夫か、セシル」


「うん、ありがとう。


どうしようか、この状況」



エリスの呼びかけに応じた教師たちに周囲を囲まれている。


走って逃げようにも俺のステータスでは逃げ切れないだろう。


俺が囮になってセシルを逃がす手もあるが、人数が多すぎて囮の効果は疑問が残る。



「……やっぱり倒すしかねぇかな」


「威勢がいいなぁ、結構だ」



大柄で渋めのおっさんが現れた。


放つ圧力は天霧と遜色ない。


が、あまり教師らしいとは言えない雰囲気がある。



「よろしいんですな、エリス殿」


「ああ。


だがあまり手荒なことはしてくれるなよ、ダグラス」


「保証できかねますが、努力はいたしましょう。



そういうわけだ。


セシル少年、レイブン少年。


おとなしく捕まってくれるなら、あまり手荒なことはしないと約束しよう」


「さっきの今で『手荒なことはしない』って?


信用できるか」


「『まだ』手荒なことはしていないつもりだが?」



こんなもんじゃ済まねぇ、そういうことか。


俺たちの周囲は完全に包囲されていて、鼠一匹逃がす気はないという意思を感じる。



「まずは理由を話せ。


拘束した後に俺たちに何をするつもりなのかかもな。


内容によっちゃ大人しくついていってやってもいい」


「ほう、そうか。


思ったよりも話が通じそうだな。



エリス殿、少年たちもああ言っていることだし、理由くらい話してやってはどうだろう。


言わなければ絶対についてこないだろうが、言えばもしかしたらついてきてくれるかもしれませんぞ」


「理由はここでは話せん」


「やれやれ、あなたも嘘のつけない人ですな。



まあ、そういうわけだが、投降してくれるかね?」


「今の話の流れのどこに俺たちが投降する要素があったんだ?」


「念のための確認だ。


気にしてくれるな」



ダグラスは俺たちに聞こえないよう小声で何かを話し始めた。


周囲に指示を出しているのかもしれない。



「セシル、あいつを頼む」


「わかった」



「では始めようか――」



ダグラスが号令をかけるその直前、俺の背後にいたセシルが反転してダグラスに飛びかかった。


ダグラスはナイフを抜き、セシルの斬撃を受け止める。



「私の相手は君かね!」


「いいえ、違いますよ!」



セシルがダグラスの注意を引いた一瞬、俺は包囲の対角へと走る。


同時にセシルの周囲に魔力が渦巻く。


それにダグラスも気づいたようだ。



「まずい、総員――!」


「遅い!《スタン・ブリッツ》!」



フィールドにいた敵全員に足元からの電撃が駆け抜けた。


セシルの魔法は器用にも俺や天霧を避けて敵にだけ届いていた。


この好機を逃さない。



「吹き飛べ!《シャドー・バースト》!」



両手に集めた魔力を解き放った。


掌中から消滅した魔力は正面の男の眼前に収束。


十字の煌めきを放って炸裂した。



男は声を上げることもなく吹き飛び、そのまま気を失って地面に転がった。



『レベルが2に上がりました』



再び無機質なシステムの声が脳裏に響いた。


これで条件は揃った。



「全員動くな!」



俺は声を強めて言った。


セシルはダグラスとの鍔迫り合いをやめ、俺の下に戻った。



「ダグラス。


今この瞬間に、俺とセシルの勝利条件が整った。


大人しく投降して理由を話せ」


「立場が逆転したとでも言いたげだな。


先の君の言葉を借りるなら、どこに我々が投降する要素があったのかね?」


「それは言わない」


「やれやれ、君も嘘の下手な人だな。


レイブン少年、セシル少年。


君たちを問答無用で拘束するのは俺としても本意ではない。


しかしこれも仕事でな。


申し訳ないが投降するに足る要素がない。



レイブン少年がレベル2ながら相当な実力者であることは、先の戦いで知っている。


そこの彼女、天霧君を下したのも見ていた。


大したものだ。



だが、所詮はただそれだけのこと。


我々は天霧君と同等以上の実力者だ。


更にその数は二十名を降らない。


すまないが、君が勝つビジョンは存在しない」


「じゃあしょうがねぇな。


だったら悪いけど、全員転がってもらうぜ。


セシル、離れるなよ」


「うん」



「行くぞ、少年たち。


総員、かかれ!」



俺たちを包囲した教師たちが一斉に襲いかかってきた。


それを見届けて、俺はカードを切る。



(スキル発動、《魔王再臨》!)

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