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第19話 致命的なエラー

『対象:個体名「レイブン」の自我レベルが1を超えています。


初期化シークエンスの開始には、対象の同意が必要です。


初期化シークエンスの開始に同意しますか?』



システムからの声が頭に響いた。


周囲を見渡しても特に反応はない。


レベルアップのときと同様、この声は俺にしか聞こえていないようだ。



……いや、何やら様子がおかしい。


俺にしか聞こえていないというより、俺以外の反応がまったくない。


周囲の動きが完全に停止している。


時でも止まったかのように。



『こちらはシステム。


初期化シークエンスを開始します。


対象:個体名「レイブン」の自我レベルが1を超えています。


初期化シークエンスの開始には、対象の同意が必要です。


初期化シークエンスの開始に同意しますか?』



また同じメッセージだ。


この『システム』ってのが本当に統制神『システム』なんだとすれば、これまで誰も成し遂げたことのない神との交信ってことになりそうだが……。


システムからのメッセージは無機質だ。


自動人形やゴーレムと同じような感触がある。


だが、自動人形やゴーレムにもわずかながら自我が存在する。


それを強化することで自律行動させることも可能だ。


だとすれば、このシステムが自動人形やゴーレムと似通った存在だとしても、何らかの判断能力があってもおかしくない。


まずは少し探りを入れてみることにしよう。



「『初期化シークエンス』ってのは、具体的に何をするんだ?」



何をするのかもわからずに同意なんかできないからな。



『対象の未登録情報の初期化処理を実行します。


個体名「レイブン」の現在の未登録情報は以下の通り。


・種族

・ネイティブスキル

・成長テーブル

・クラス


登録済みの以下の項目の初期化処理はスキップされます。


・個体名「レイブン」

・種族「魔人」

・ネイティブスキル【魔力操作 ランクS】【魔力感知 ランクS】

・成長テーブル「魔力特化 ランクS」

・クラス「魔王」


初期化シークエンスの開始に同意しますかかかかかかかか』



……何だ?


システムの様子がおかしい……のか?


未登録情報と言っていたものがすでに登録済みと言ったり、さっきから「かかかか」と言って止まらない。



――見ぃつけた――



システムの声とは違う、異質な声。


耳からでも頭からでもなく、魂に直接語りかける声。


その声から無邪気さと、明確な悪意が感じられた。



『初期化シークエンスを開始しままままままま』



すると突如、『鑑定の祭壇』が輝き始めた。


さっきの声といい、何か嫌な感じがする。


『鑑定の祭壇』を破壊してでもこの初期化シークエンスとやらは実行させてはならない。



「【魔力操作】で……っ!?」



何だ、【魔力操作】が、いやスキルが使えない!?


それどころか体が動かず、声さえ発することができない!


何らかの見えざる力で、あるいはシステムそのものの力によってスキルが封じられている。


【魔王再臨】の発動も試みるが、これも不発。



『個体名の設定を開始します。


個体名「レイブン」が設定されています。


個体名の設定をスキップします。



種族の設定を開始します。


種族「魔人」がががががががががががががが


種族「人間」を設定しました。

種族「竜族」を設定しました。

種族「悪魔」を設定しました。

種族「吸血鬼」を設定しました。

種族「精霊」を設定しました。

種族「天使」を設定しまししししししししししし



種族「」を設定しました。


種族の設定を完了しました』



まずい、これは本当にまずい!


体の内側から俺自信の存在が書き換えられている!


あまりに莫大な情報量に、俺の肉体が、魂が内側から膨れ上がり爆散しそうだ!


このままでは俺自信の存在を維持できないばかりか、力が暴走してこの世界ごと消滅させかねない!


それほどの尋常ではない力を外部から無理やり注ぎ込まれている!



『ネイティブスキルの設定を開始します。


ネイティブスキル【魔力操作 ランクS】【魔力感知 ランクS】が設定さささささささささ


ネイティブスキル【限界突破 ランクS】を設定しました。

ネイティブスキル【経験昇華 ランクS】を設定しました。

ネイティブスキル【運命操作 ランクS】を設定しました。

ネイティブスキル【法則操作 ランクS】を設定ししししししししししし



ネイティブスキル【】を設定しました。


ネイティブスキルの設定を完了しました』



まだシステムの影響力から逃れられない!



「……っ!……ぁ!」



……いや、声が出ている。


僅かだが、絞り出すようだが、声が出ている。


システムの影響から外れることができている!



『成長テーブルの設定を開始します。


成長テーブル「魔力特化 ランクS」が設定されていいいいいいいいいいいい


成長テーブル「筋力特化 ランクS」を設定しました。

成長テーブル「耐久特化 ランクS」を設定しました。

成長テーブル「速度特化 ランクS」を設定しました。

成長テーブル「成長特化 ランクS」を設定しましたたたたたたたたたた



成長テーブル「」を設定しました。


成長テーブルの設定を完了しました』



僅かだが、綻びは綻び。


なら、その僅かな綻びをこじ開けてやる!



「【魔力操作】……っ!」



いける。


こんなところで黙ってやられるわけには行かない!


停止した時を削るが如く、魔力操作で固まった時間そのものをえぐり取る。



「甘く見るなよ、神の威を借る狐が……!


見せつけてやるぜ、魔王の真髄をな!」



今の俺のレベルは12。


さっきのやり取りでわかった、システムの影響力は絶大だ。


出し惜しみして凌げる相手ではない。


だから、全てを注ぐ。



「《魔王再臨 レベル11》!」



これまでと同じ、かつて魔王だったときの力を取り戻す効果。


しかし、今回はかけたコストが違う。


今までのレベル1は効果時間は10秒。


しかし、レベル11を費やした今回の継続時間は5分。


たったこれだけ。


だが、やるしかない。


この《魔王再臨》で、システムの束縛を破壊する!



『クラスの設定を開始します。


クラス「魔王」が設定ささささささささ


致命的なエラーが発生しました。

致命的なエラーが発生しました。


クラス「大魔道士」を設定ししししししし

クラス「剣神」をををををををををををを

クラス「四天王」を設定しままままままま


致命的なエラーが発生しました。

クラスの設定に失敗しました。


プロセスを再起動します。

プロセスの再起動に失敗しました。

致命的なエラーが発生しました』



――まさか、システムからコントロールを奪った!?――



《魔王再臨》を発動すると、先程までとは打って変わって体の自由が効くようになった。


しかし、まだ時の止まった空間に囚われたままだ。


まばゆいばかりの光を放つ『鑑定の祭壇』と俺だけの世界。



「お前の好きにはさせない!」



俺の持つ内在魔力を完全開放。


それを一本の剣の形に収束させる。


これは、俺の【魔力操作 ランクS】だから為せる業。


魔王としての莫大な魔力を一点に収束させる、単純にして究極の必殺技。



『クラスの設定を開始します。

クラスの設定を開始します。

クラスの設定をををををををををををを』



しかしそれも、システムからの干渉にさらされ、魔力のコントロールが乱れそうになる。


かつての魔王の力だけでなく、システムから押し付けられた無数の力が俺の中で暴れまわり、今にも爆発しそうになる。


俺は【魔力操作】でその一つひとつを丁寧に抑え込み、目の前の祭壇への止めの一撃へと集中する。



『不正なパラメータが検出されました。


クラス「システム」を設定しませんでした。


クラス「N000」が設定されています。


クラスの設定を開始します。


こちらはシステテテテテテテテテテテテ』



――まさか!ただの一個体が、システムに逆えるのか!――


「ただの一個体じゃねぇ、魔王『レイブン』だ!」



俺は剣に最後の魔力を込め、放った。



「《ダーク・マター》!」



剣は矢のように走り、『鑑定の祭壇』に突き刺さった。


しかしそれが炸裂することはなく、静かに祭壇内部へと吸い込まれた。



――クス、残念だったね。それじゃあシステムには勝てないよ――



少年のようでもあり、少女のようでもある、悪意に満ちた声が嘲笑う。



「残念はお前だ。


単なる破壊力だけが、魔法の強さじゃない」


――負け惜しみを――なんだ、―れは!?――


「お、念話が途切れてきたな。


お前が何をどうしているのか、ここからじゃすぐにはわからない。


それに残り時間ももうない。


だから、お前からシステムへの干渉だけを止めることにした。


つまり……お遊びはここまでだ」


――まさか、正面からシステ――干渉できる者がいるなんてね――


「いいか、よく聞け。


お前の正体は必ず暴く。


俺を使って何をしようとしたのかは知らないがな。


ちょっかいを出した相手が俺だったことを、地獄の底で後悔させてやる」


――クス、いいよ。望むと――だよ。僕までたどり着――ごらん――



それきり声は途切れ、聞こえなくなった。


《魔王再臨》の効果時間も切れた。



『致命的なエラーが発生しました。


プロセスを再起動します。

プロセスを再起動しました。


初期化シークエンスを開始します』



しまった、まだシステムの初期化シークエンスが終わっていない!


とはいえ、俺もレベルを使い果たし、使えるスキルも最早ない。


悪いようにするなとシステムに祈るほかないのだが……。


と思っていたら、祈る間もなく超高速で初期化シークエンスが進行してしまった。



『個体名の設定を開始します。


個体名「レイブン」が設定されています。


個体名の設定をスキップします。



種族の設定を開始します。


不正なパラメータが検出されました。

設定の修復を行います。

設定を修復しました。


種族「混沌」が設定されています。


種族の設定をスキップしました。



ネイティブスキルの設定を開始します。


不正なパラメータが検出されました。

設定の修復を行います。

設定を修復しました。


ネイティブスキル【魔力操作 ランクX】【魔力感知 ランクX】が設定されています。


ネイティブスキルの設定をスキップしました。



成長テーブルの設定を開始します。


不正なパラメータが検出されました。

設定の修復を行います。

設定を修復しました。


成長テーブル「魔力特化 ランクX」が設定されています。


成長テーブルの設定をスキップしました。



クラスの設定を開始します。


不正なパラメータが検出されました。

設定の修復を行います。

設定を修復しました。


クラス「統制者」が設定されています。


クラスの設定をスキップしました。



初期化処理が完了しました。



設定のエラーチェックを行います。

エラーが検出されました:ギフトスキル。


ギフトスキルの修復を行います。

ギフトスキルを修復しました。


エラーチェックが完了しました。



初期化シークエンスが完了しました』



ここまでわずか30秒。


そして、終わるとともに祭壇による時間停止も解除され、会場には賑わいが戻った。


祭壇に投影されていた俺の鑑定結果は、



名前:レイブン

レベル:1

クラス:『統制者』

ネイティブスキル:【魔力操作】【魔力感知】

総合評価:判定不能



……なんだよ、判定不能って。

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