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第18話 かわいさ総合評価100

「レイブン君……お客さんだよ」



メロウに呼ばれてエントランスへ行くと、天霧が待っていた。



「おはよう、レイブン……ってもう昼だけどね」


「おう、おはよう」



天霧が着ていたのはセシルが着ていたのと同じ高等部の制服だ。


ということは、前に会った時のは中等部の制服だったわけだ。



「……どうかした?」


「よく似合ってると思ってな」


「え、ほんと?


うれしい、ありがとう……」


「ところで、何か用か?」


「ああそう、まずこれ。


上着、この間はありがとう。


返しておくわね」



最終試験の時、天霧の服を斬ってしまったので貸していた上着だ。


洗濯され、綺麗に畳まれている。



「わざわざ悪いな」


「いいの、助けてもらったのは私なんだから。


それからレイブン、あなた能力鑑定にはもう行ったの?」


「能力鑑定……ってなんだっけ?」


「ちょっと、しっかりしてよ。


制服と一緒に入ってた資料にあったでしょ、今日新入生は全員能力鑑定を受けろって」


「昨日はその、いろいろあってな」



正確には昨日も、だが。



「まあいいわ。


その様子だとまだ行ってないのね。


じゃあ一緒に行きましょう、私もこれからだから」


「ただいま。


あ、レイブン。と、天霧さんも。


いらっしゃい、何か用事?」


「あれ、セシル……さん?」


「ああ……うん……。


僕男なんだけど……もうなんかそれでいいや……」


「え!?


あ、やっぱりそう……よね。


ごめんなさい、でも……。


何なのこれ、悔しい……」



セシルが遠い目になった。


仕方ないよな、どう見ても美少女だから。


天霧は天霧で悶々としている。



「で、これから天霧と能力鑑定に行くんだけど、セシルも行くか?」


「うん。


でもせっかくだから、五星以上の時間に行こうと思ってたんだ。


お昼すぎでちょうどいいと思うし、天霧さんはどうかな?」


「あなた達、わざわざ上の時間帯に行くつもりなの?


自分の鑑定結果が周りにも見えるのに、物好きね」


「上位の人がどれくらいすごいのか気になるからね。


鑑定してからまた行ってもいいけど、二度手間になっちゃうし」



能力鑑定は星の数に応じて受けられる時間帯が決まっているそうだ。


星が少ない者は朝早くから受けられるが、星が多い者は遅い時間からしか受けられない。


星が少ない者は実力も劣るため、あまり多くの目に触れないようにする配慮だそうだ。


もっとも、俺達のように特に気にせず星が多い者の時間帯で受ける者も少数いるようだが。



結局天霧と一緒に昼食をとって、五星以上の学生の時間帯に能力鑑定を受けることになった。


昼食は五寮の食堂で食べたのだが、よほど美味しかったのか、天霧は二度おかわりをしていた。



「いや、その、いつもおかわりしてるわけじゃないのよ?


ここの食事、とても美味しかったから」


「別にいいんじゃないか?


やっぱり美味しいものをたくさん食べてるのを見るのは、なんていうか幸せになれるよな」



昼食も終わり一息ついたあと、能力鑑定の会場に三人で向かった。


会場には既にたくさんの人がいた。


会場前方には謎の祭壇があり、そこに鎮座する石版には鑑定結果と思しき情報が一人ごとに投影されていた。



「あれは、神器か?」


「あら、よく知ってるわね。


そのとおり、あれは神器『鑑定の祭壇』。


鑑定スキル《神眼》を宿した神器よ」



神器とは、統制神『システム』の力の一端を宿したアイテムのことである。


噂によれば『なんでも斬れる剣』や『触ると魂を破壊される宝玉』なんて物騒な物やこの『鑑定の祭壇』のような穏当なものまで、種類は非常に多岐にわたる。


その出自は謎が多く、いつどこで誰が作ったのかが全くわかっていない。


時折ダンジョンの奥地から発見されるが、その希少性から市場に出回ることが殆どなく、こんな機会でもなければ普通の人間は早々お目にかかることもない。



「なるほど、誰かの鑑定スキルじゃなく神器の鑑定スキルを使うわけか。


これなら公平公正に能力の鑑定が行えるな」


「あれ、見たことない鑑定項目があるね」



鑑定の祭壇の石版に表示されている項目は……名前、レベル、クラス、ネイティブスキル、総合評価。


そこそこ鍛えた鑑定スキルでもわかる項目ばかりだが、総合評価だけは初めて見た。



「総合評価は、システムが評価対象の能力を総合的に判断した結果を数値化したものよ。


ただ、表示される他の項目の内容がほとんど同じなのに総合評価が全く違うこともあるから、どういう基準で評価されてるのかがいまいち謎なのよね」


「そのへんは神器だから許容されてるってところか」



しばらく後方から能力鑑定の様子を眺めていた。


祭壇の前に立ち、手をかざすと鑑定結果が投影される仕組みのようだ。


何人かの総合評価を見ていると概ね平均して4程度の評価値が出ている。



「もしかして、総合評価の値って星の数とも関係しているのか?」



今は四星以下の学生が鑑定を受けられる時間だが、三星以下の学生はすでにほとんど鑑定を終えているため、今鑑定を受けているのはほとんどが四星だ。



「鋭いわね。


星章のランクは学園側でいろんな活動をもとに総合的に判断される。


その中でも能力鑑定の総合評価は星章ランクの判断基準の中でも相当な割合で換算されてるらしいわ」



なるほど、だとすれば今の時間帯に総合評価4程度の学生が多いのはそのせいか。


ということは、この先五星の時間帯には総合評価5程度の学生がゴロゴロしているわけだな。



「時間になりました。


五星以上の学生の受付を開始します」



アナウンスを受け、会場にいた五星以上の学生が鑑定を受け始めた。


会場には結構人がいるのだが、その殆どは特に動かず石版を見守っている。



「五星はあれだけか?」


「学園最上位の学生だからね。


そもそもそんなに人数がいないのよ。


会場に残っているのはほとんどがただの野次馬ね」



私達みたいな、ね。と天霧が付け加えた。


俺たちはまだ鑑定を受けるから「ただの」野次馬ではないが。



「僕たちもそろそろ行こうか。


並びながらでも鑑定結果見られるし」


「そうね。


まさか五星に混ざって能力鑑定を受けることになるとは思わなかったわ。


ちょっと緊張するわね……」



列の最後尾に並びながら、鑑定結果に目を通していく。


何人か総合評価が5を超える者がおり、石版に表示されるたびに会場内はどよめいた。


しばらくして天霧の順番になった。


「なああれ、天霧玲花じゃないか?」「うわ、マジだ。まだ高等部上がったばっかりだよな?」「五星の時間に来るとか、すげぇ自信」さすが有名人。


天霧は祭壇の前に立ち、手を触れた。


3秒ほどで鑑定が終了し、石版に評価が投影された。



名前:天霧玲花

レベル:44

クラス:『剣豪』

ネイティブスキル:【剣術】【魔力放出】【限界突破】

総合評価:5.0



会場に衝撃が走った。


「一年でレベル44!?」「総合評価5.0!?」「ヤバい、ガチの天才か!」


流石、中等部で序列第七位は伊達じゃないな。


天霧は祭壇から降りるときにこちらを見て、自慢げな顔をしていた。



「すごいね、天霧さん」


「ああ、さすがだな。


でもまだまだ、俺たちも驚かせてやろうぜ」


「うん、じゃあ行ってくるね」



セシルの番になった。


だが、そこでセシルが与えた衝撃は天霧の比ではなかった。


「なにあの娘、めっちゃかわいい……」「ヤバい、天使だ……」「かわいさ総合評価100だ……」


セシルにも聞こえていたのか、不服そうな、でも諦めたような顔をしていた。

ですよね。


だが会場の雰囲気も、セシルの鑑定結果が投影されると一変した。



名前:セシル

レベル:21

クラス:『召喚士』

ネイティブスキル:

総合評価:6.3



「「「はぁ!?」」」


会場に激震が走った。


「総合評価6超え!?レベル21で!?一年だろ!?」「ネイティブスキルなし!?なにそれ!?」「しかもクラスは召喚士って……何?」


具体的なことはわからないが、観衆の反応を見るだけでこの鑑定結果がどうやら異常なものであることは十分に伝わってきた。


当のセシルはというと、こちらもまた自慢げにこちらを見て、可愛らしくピースサインを向けてきた。


かわいい。



残すは俺だけ、どんな結果が出るか楽しみだ。


祭壇の前に立ち、手を触れた。


その時、会場の誰も、俺ですら全く予想しなかった出来事が起きた。



『こちらはシステム。


これより初期化シークエンスを開始します。』



……何だこれ?

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